反省会
「それで? 君の申し開きを聞いてみようか」
魔大陸の入口、イトの街の高級宿の一室。
明らかに高そうな大理石のテーブルに、某人気アニメの指令の様に両ヒジをつけ、俺を見つめているワタル。
そして、両膝をついて、俯いている俺。
俺は分かっている、ワタルはかなり怒っている。だから、俺は顔を上げれずにいるのだ。
普段なら俺が何かやらかすと、やれやれといった呆れた表情を浮かべるのだが……今日は何かが違う。
「いえ……特に何も……」
ここで言い訳なんてとんでもない。
火に油を注ぐ様なものだ。
俺は知っている、何かやらかした時は素直に謝るのが一番だと。
「そう。下手な言い訳などせずに、自分の非を素直に認める。僕は君のそういう所を気に入っている……」
「そ、それは、どうも……」
良かった、説教タイムは直ぐに終わりそうだ。
そう安心したのも束の間、ワタルの口が再び開かれる。
「でも、今回の事はいただけない。君の事だから、荒れ狂う海を遊園地のアトラクションか何かと勘違いし、自分の身体能力にたかをくくってはしゃぎ、海に落ちてそのまま流されたのだろうけど」
こいつはエスパーかッ! と堪らず突っ込んでしまいそうになる。
「その表情を見ると、図星のようだね……はぁぁぁぁ~~」
ワタルの深い溜め息が、余計にプレッシャーを感じさせる。
「いいかい? 君はあっちの世界を助ける為に良い思い出のないこの世界に戻ってきたんだよね?」
「はい……」
「祖父の故郷である日本を守るために、僕も文人に無理を通してこっちにきているんだ。君は、魔王と話をつける気がないのかい? 早く終わらせて、君の家族や紗奈ちゃんの元へと戻りたいと思わないのかい? そもそも、君は―――――――――」
それから小一時間、ワタルの説教に黙って耳を傾ける。
全て、正論であるため、何も言い返せないからだ。
「無事だと思っていたら、お金もないのに食堂で皿を積み上げているし、開口一番が、お金かしてくれ? 君は僕を舐めているのかい?」
「ごめん、軽率だった……次からは気を付けるよ」
「サクタさんもこうして反省しているようですし、許して上げましょう! ほら、無事だったんですから!」
レウィが必死に俺のフォローをしてくれている。いい子過ぎて泣きそうだ。
「はぁ~、僕もレウィもララも本気で心配したんだよ? だから余計に君の軽率な行動に怒っているんだ」
「ごめん……」
「もう二度と無いようにしてくれ、前から言っているが、君を倒すのは僕だからね。つまらない事で消えないでくれ」
ワタルは、そう言って未だに床に両膝をついている俺を起こし上げる。
どうやら許して貰えたようだ。
俺は、今一度ワタルとレウィに向けて深く頭を下げて謝罪した。
さて、俺達がいるこの高級宿は、ララが手配してくれたものだ。
イトの町で一番高級な宿らしく、ハーヴェストでの右京達の部屋と遜色ないくらい豪華で広い。
折角だからと言って、ララが押さえてくれたのだ。ていうか、この宿はララの商会の傘下にある宿らしい。
ミーミー言ってるくせに、結構凄いやつなのかも知れない。
因みにララは、この町にある自分の商会に顔を出すと行って、今は席を外している。
ララにもちゃんと謝らないと……。
「それで、今まで君は何をしていたんだい?」
俺は、ワタルの想像通り海に落ちてから、雪兎族の里を経てイトに到着するまでの経緯を説明すると、「君はたった一日でなんという濃い経験をしているんだい」と呆れられた。
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