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潮騒の街から ~特殊能力で町おこし!?~  作者: 南野 雪花
第10章 ~謎の転校生とか求めてないから~
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謎の転校生とか求めてないから 5

「第三勢力だと?」

 暁貴の右眉が跳ね上がる。

 それは、日本国とバンパイアロードの関係に一枚噛むということだ。

 第一と第二がなくては、第三はありえないのだから。

「巻き込まれるのは御免被りたいところだが?」

 やや不機嫌な鉄心の言葉。

 応えたのは首相ではなく信二だった。

「もう充分に巻き込まれてますがね」

 勇者が澪を訪れた時点で。

 あるいは、彼らを殺せなかった時点で、局外中立ではなくなった。

 まして御前の陣営と一戦交えた今、どう取り繕ったところで敵対勢力である。

「だから俺は、首相閣下が共闘なり同盟を申し出るものと思っていたんですがね」

 肩をすくめてみせる。

 予測などそんなものだ。

 十通りの予想を立てれば、たいてい十一番目の行動を取るのが他人なのである。

 結局、他人は自分ではないという良い証左だろう。

「我々が同盟すれば御前は追いつめられる。それは避けたいのでな」

 新山の認識は苦い。

 追いつめられ、現在に絶望した者は未来を想定しない。

 短兵急な行動を取ってしまうかもしれないのだ。

 そしてその場合、最初の犠牲者となるのは日本政府の中枢だろう。

 だが、澪が単体で佇立しているなら話は変わってくる。

 澪が脅威である限り、バンパイアロードは日本政府と戦うことはできない。必要以上に追いつめることもできない。

 それは、名詞を変えればどの陣営にも言えることだ。

「天下三分の計ですか。諸葛亮もびっくりですね」

 中国は三国時代の高名な軍師になぞらえ、魚顔軍師が笑った。

「そこまでたいしたものではないさ。ただの三竦みだよ」

 薄い笑いを浮かべる首相。

「だが、三国鼎立でも三竦みでも良いが、永遠に続く策じゃねえぞ? そのへんはどうすんだ?」

 疑問を呈したのは暁貴だ。

 趣味は偏ってはいるが、読書家の彼である。

 三国志がどのような結末を迎えたかは、当然知っている。

「澪の王よ。私は永遠など求めてはいない。求めているのは、たかだか十年やそこらの平和で豊かな時代さ」

「で、その間、あんたは総理としてこの国に君臨し続けるって寸法かい?」

「ああ」

 暁貴の皮肉に新山は悪びれない。

「あと十年も経てば、私は政界を引退するだろう。その後のことまでは責任は持てんよ」

「まあそりゃそうだな」

 相好を崩す澪の魔王。

 首相の率直な言い分が気に入ったようである。

 政治家としては正直すぎるが、空虚な美辞麗句を並べ立てる輩より余程好感が持てる。

 もちろん好意だけで受け入れることができないのが政治だ。

 鉄心と信二に視線を送る。

 盟友と軍師が頷きを返す。

 澪が求める立場としては、中立あるいは棲み分けというのが理想だ。

 天下三分の計は、理想からそう遠いわけではない。

 落としどころとしては充分だろう。

「良いだろう。話にのるぜ」

 右手を差し出す。

「感謝する。王よ」

 総理大臣が握り返した。






「まったく。ちゃんと反省しろよな。実剛はか弱いんだから」

 光則が説教をたれる。

「退きません。媚びへつらいません。反省はします」

 教室の隅で正座をさせられている佐緒里。

 まさかツッコミで吹き飛ぶとは思わなかった。

 力加減を誤ったという自覚はないのだが。

「いててて……」

 実剛が目を醒ます。

 どうやら大事はないようだ。

「大丈夫か? 准吾を呼ぶか?」

「死ぬかと思ったけど平気だよ。なにがあったんだっけ?」

 記憶層を探る。

 光則を売ったら突っ込まれました。

 OK。

 了解した。

「久保さんだっけ。残念ながら光則は渡せないよ。僕も命は惜しいから」

 改めて宣言する。

「残念なのか? むしろ命の危険がなかったら普通に渡していたってことだよな? それ」

 横合いから口を挟む光則。

 さわやかな笑顔で無視された。

「渡せないといわれて、はいそうですかと引き下がるような女に見える? 王子様」

 挑戦的に、リンが胸を反らす。

 ボリュームとしては絵梨佳とさほど変わらない。

 佐緒里が圧倒的に勝利している。

 どうでもいい話だが。

「見えないけど、光則は僕の仲間で親友だ。得体の知れない女の子にあげるわけにはいかない」

「実剛。自覚しているか? さっき言っていることがまったく違うぞ?」

「気にしたら負けだよ」

「もう負けでいいよ……」

「そんなわけで、得体の知れた人になってもらおう」

 にこやかに笑う実剛。

 何を言っているか判らないという表情を、他の三人が浮かべた。

 もちろん少年は説明するつもりである。

 リンが敵ではない、または現在敵対するつもりがないということは判った。

 御前ではなく首相の依頼で動いているということも判った。

 動機に関しては、どこまで本気かは判らないが、光則を憎からず思っているがゆえの行動だと推測できた。

「敵でないなら、僕としては受け入れを拒むつもりはないんだ。だけど、それじゃ納得できない者もいる」

「ああ。それはそうだな」

 矛を交えた経験のある光則が大きく頷く。

「まあ光則はどうでも良いとして」

「扱い悪いぞっ」

「佐緒里さんはどう思う?」

 鬼姫に視線を送る。

「納得できるわけがない。巫実剛」

 正座したまま応える少女。

 当然だという表情。

 光則がきょとんとする。

 鬼姫がリンを拒絶する理由が判らないのだ。

 誰しも自分の後ろ姿を見ることはできない、という解釈で問題ないだろう。

「だからさ。ここは寒河江式でいいんじゃないかな」

 拳で語る。

 殴り合ってこそ、認め合うことができる。

「こっちからは、最強の戦士の絵梨佳ちゃんかな。一バトルして、互角以上なら……」

「まって。巫実剛」

 立ちあがった佐緒里が近づいてきた。

「その役目、あたしがやる」

「というわけだよ。久保リンさん。佐緒里さんと模擬戦をして、良い勝負ができたら、君を受け入れよう」

「澪の血族でなく、たかが鬼の娘と? 私もずいぶんと舐められたものね」

 好戦的な笑みで嘲弄する少女。

「萩に逃走はないことだ」

 表情も変えず、鬼姫が受け止めた。

「じゃあ放課後。校庭で」

 実剛が仕切っている。

「おいおい……」

 呆れ果てる光則。

 本当に頭でも打ったのか。

 こんな無茶苦茶な提案をするような男ではなかったはずだ。

「何考えてんだ……」

「信二さんならもうちょっとスマートにできるだろうけどね。僕の頭じゃこれが精一杯」

「なにが?」

「時間稼ぎだよ。何にも判らないから放課後まで先延ばしにした。こんなところで暴れられたら困るからね」

 小声で説明する実剛。

 なるほど、と、光則が頷く。

 やはり深慮遠謀あってのことか。

 納得できたが、どうして親友は半笑いなのだろう。

 そこだけが引っかかる砂使いであった。




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