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潮騒の街から ~特殊能力で町おこし!?~  作者: 南野 雪花
第7章 ~四方八方敵だらけっ~
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四方八方敵だらけ 8

 なにが悔しいって。

「自分の恋人が、ちやほやされるほど悔しいことはないねっ」

「わかるぜっ 実剛兄ちゃんっ」

 物陰から見守る二人の男。

 ハンカチを噛みしめていないのが不思議なくらいの表情だ。

 視線の先では、彼らの恋人たちが取材を受けている。もちろん絵梨佳や美鶴だけでなく、琴美や佐緒里、第二隊の女性陣も一緒である。

 結局、取材を拒否する者はいなかった。

 実剛も光も、自分のカノジョだけは断るだろうと思っていたのに。

 いんすぱいとおぶ。

 現実は非情である。

 うら若き乙女たちは、やはりテレビ出演にノリノリだった。 

 インタビュアーは北海道発のアイドル。普段ならばアナウンサーが行うものだが、それだけ力を入れているということなのだろう。

 テレビ局は撮影隊(キャラバン)まで仕立てて澪に乗り込んできた。

「なかなか可愛い子だな」

 実物のアイドルを直接目にする機会など滅多にない。

 光則の鼻の下がのびきっている。

「はあ?」

「なにいってんだ? 光則兄ちゃん」

 ものすごく白い目を向ける実剛と光。

 馬鹿である。

 自分の恋人が世界で一番可愛いと信じて疑ってもいない顔だ。

 反論しようとした光則だったが、ふと思いついて質問をぶつけてやる。

「じゃあお前らは誰が一番可愛いと思うんだよ?」

 小学校の算数のように答えの判りきった質問。

 当然のように、実剛が絵梨佳を、光が美鶴を指さす。

 そして絡み合う高校生と中学生の視線。

 火花を散らして。

「羽原くん。君は大きな誤解をしている」

「いやいや。いやいやいやいや。いくら実剛兄ちゃんが相手でも、こればっかりはゆずれないぜ」

「絵梨佳ちゃんの方が可愛いからね? 美鶴の何倍も」

「あー わかってない。わかってないわー ぜんぜんダメだわー」

「ほほう? 僕が判っていないと? そいつは聞き捨てならないね」

「絵梨佳姉ちゃんが美人じゃないとは言わないよ? でもなー 美鶴と比べたらかわいそうってもんじゃね?」

 竜虎相打つ。

 うん。タコである。

 こうなることを予想していた光則は、肩をすくめて、少年たちの絶対に負けられない戦いから身を退くと、信二の元へと移動した。

「どう思いますか? 信二先輩」

「アイドルのことなんか、俺に聞かれても判りませんよ。光則君」

「いや、そっちでなくて」

「これだけ大々的に押しかけてるんです。こっちに目を引きつけておくというのが狙いで間違いないでしょう」

「ですよね」

 下顎に右手を当てる光則。

 少しだけ考えて口を開く。

「狙いはやっぱり霊薬ですかね」

「そう考えると時間的にも筋が通ります」

 知事の飲んだ霊薬が効果を現す頃合いだ。

 完璧な健康体と完全無欠な肉体美を手に入れた知事が、次に何を考えるか。

「霊薬を独占したい。そんなところですかね」

 光則の言葉は確認ですらなかった。

「俗物を絵に描いてCGで動かしたようなもんですが、それだけに理解しやすくはあります」

 自分に尻尾を振るものに独占した霊薬を与える。

 これ以上ないほどの支配基盤を築くことができるだろう。

 不老長寿の効果があるかどうかは未来の研究を待つしかないが、体質改善薬としても完璧なのだ。

 むしろ主眼である身体能力の爆発的な向上など、いらないほどである。

「それでテレビなのですか? 先輩」

「そうですね。こっちはイナカモノですから」

 澪の耳目は完全に取材クルーに引きつけられる。

 興味なさそうなふりを装っていた佐緒里ですら、普段はしないメイクを琴美にしてもらって取材にのぞんだらしい。

 澪の人々の気質の一つに、ミーハーを嫌うくせに実はミーハー、というものがあるが、今日の澪はまさにそんな感じで浮ついた空気に包まれている。

「諜報員なり工作員なりが動くには、絶好のチャンスです」

「チャンスですて。そこまで読んでいて、こんなとこにいて良いんですか? 主力ほとんどこっちにいるじゃないですか」

「仕方ないですね。みんな取材に興味津々ですし。無理に警備に回せば不満が出てしまいます」

 能力者たちはほとんどが取材場所である澪海岸に集まっている。

 霊薬の製造工場たる萩邸に配置されているのは量産型能力者の第一隊だけだ。

「手薄すぎませんかねぇ?」

「光則君は自分を基準に考えすぎです。相手は普通の人間ですよ?」

 北海道が使える手駒など、たかが知れている。

 自衛隊を動かすこともできないし、知事が抱えている私兵だってやくざに毛が生えた程度のポテンシャルだろう。

 まして隠密行動となれば、そう大人数は動かせない。

 せいぜい多くて三十名といったところか。

 萩邸にいる十名の量産型能力者で充分に対応できる。

 第二隊と違ってちゃんと戦闘訓練を積んでいるし、実戦経験だってある。

 戦力的には、むしろ過剰だろう。

「俺たちと違って手加減しないですからね。敵の方が心配ですよ」

「たしかに。言われてみればその通りですね」

 肩をすくめた魚顔軍師に微笑を返し、光則は取材現場に目を向けた。

 豪華絢爛。

 水着姿の美女軍団がポーズを決めている。

 こちらの方は、戦力ではなくいささかサービスが過剰だった。

「なにやってんだあいつら……佐藤先生まで……」





 音もなく飛来した矢が左肩に刺さり、歩哨に立っていた萩の戦闘員がもんどり打って倒れ込む。

 森の中。

 無線が飛ぶ。

「情報通り。奴らの索敵方法は視認のみ。視界外からの攻撃を続行する。オーバー」

 コマンドクロスボウを構えた男。

「いくら目が良くたって森の中までは見通せないよな」

 つぶやき、音もなく移動を始める。

 萩邸を囲む森。

 包囲の鉄環が、じわりじわりと狭められてゆく。

 能力者たちの戦闘能力は高い。

 だが、索敵能力が著しく低い。

 格闘のプロであっても戦闘のプロではない。

「みせてやるよ。モンスターども。人間の戦い方ってやつをな」

 顔にまで森林迷彩のペイントを施した男が嘯いた。




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