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潮騒の街から ~特殊能力で町おこし!?~  作者: 南野 雪花
第7章 ~四方八方敵だらけっ~
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四方八方敵だらけ 3

 砂の詰まったペットボトルを投げつける光則。

 こんなものに殺傷力はない。

 自衛隊員たちは当たり前のように無視する。

「その油断が命取りだ。砂嵐(サンドストーム)!」

 ペットボトルが破裂し、砂の竜巻が巻き起こる。

 室内での砂嵐。

 目や口を守りながら、自衛隊員たちがわずかに後退する。

「いけっ 佐緒里っ」

「是非もない」

 突貫する鬼の姫。

 あきらかに猪突だ。

 充分な余裕を持って自衛隊員たちが狙いを定める。

 そして爆音とともに余裕は崩れ去った。

 銃の暴発だ。

「砂漠でたたかう兵士たちがまず考えるのは、銃身に砂が入らないように、ということらしいですよ」

 物陰から、魚顔軍師がうそぶいた。

 光則の砂嵐は、このための布石である。

 事態の急変に算を乱した陣列に佐緒里が躍り込み、縦横無尽に拳を振るう。

 たちまちのうちに数を減じてゆく自衛隊。

 彼らが混乱から立ち直る時間は、ついに与えられなかった。

 砂槍(サンドジャベリン)を構えた光則が続き、右に左にと薙ぎ払ったからである。

「くっ」

 指揮官の腕が振り上がり、潮が引くように後退してゆく自衛隊。

 一人がさがるとき、別の一人が背後を守り、佐緒里も光則も容易に追撃へ移れない。

 一分もかからず、屋敷の奥へと消えてしまう。

「なんと見事な逃げっぷり。付け入る隙もありゃしないですね」

 やれやれと肩をすくめた信二が物陰から這い出してくる。

「信二先輩の隠れっぷりも見事でしたけどね」

 混ぜ返す光則だが、こればかりは仕方がない。

 信二の戦闘力は常人よりちょっと上くらいで、量産型能力者にすら及ばないのだ。

 のこのこと戦域に現れたら的になるだけである。

 じっさい、光則や佐緒里ですらけっこう銃弾を受けている。

 かなり回避はしたのだがさすがに一発も食らわないというわけにはいかなかった。

「いつつつ……」

 全身に力を入れて弾を押し出す光則。

 突撃銃の弾くらいでは能力者の筋肉を貫くことはできないが、もちろん痛いものは痛い。

「ふんっ」

 なんか世紀末の救世主みたいなポーズで佐緒里が弾を落としていた。

「そのポーズに意味はあるんですか? 佐緒里嬢」

「格好いい」

「そうですか……」

 聞かなければ良かったと後悔する軍師だった。

「さて、あまりのんびりしてもいられません。後退した連中が体勢を立て直すより前に叩きますよ」

「らじゃ」

「了解した」

 三人だけの突撃隊が突き進む。





 がっちりと受け止めた短刀。

 押し返すより前に、横からもう一振りが突き出される。

「ちいっ」

 大きく飛びさがって距離を取るサトル。

 しかしその間隙は琴美の追撃によって瞬く間に埋められる。

 短刀、拳、蹴り。

 間断なく降り注ぐ攻撃。

 捌ききれない。

「なんなのだ貴様はっ」

 気が狂ったかのようながむしゃらな攻撃に辟易したサトルが喚く。

 成算も計画性もない。

 命中しようがしまいがかまわない。

 反撃されようが、どうしようが、ひたすら前進しながらの猛撃。

 チャーミングといって良い顔に薄ら笑いを浮かべて。

 得体の知れない恐怖を感じながら、サトルが斬りかかる。

 が、その膝が崩れた。

「な!?」

 痛みは後から。

 琴美の攻勢をブラインドにして走り込んだ村井が、サトルの膝裏をしたたかに蹴りつけたのだ。

 もんどりうって倒れ込む魔族。

 好機を逃がすまいと琴美が躍りかかる。

 一転して跳ね起きたサトル。

 迎撃体勢を整えるよりさきに、村井のスライディングキックが顔面を襲った。

「ぐぼあっ」

 床を滑り、壁にぶつかって止まる。

「もうすこし連携しやすい戦い方をしろ」

 立ちあがった村井。

 妻を犯した魔族を見据えながら、娘に説教をたれる。

「しかたないでしょ。練習始めたばっかりなんだから」

「だが、見事だった」

 褒めることに慣れていないのだ、と、父親の背中が語っている。

「お父さん。この刀」

 短刀を返そうとする琴美。

「お前がもっていてくれ」

「いいの? すごい高そうだよ? これ」

「値段はない。沙樹と結婚したとき、新日鉄室蘭の刀鍛冶だった俺の祖父さんが設えてくれたものだからな。銘は貞秀だ」

「へええ」

 しげしげと夫婦刀の片割れを見る琴美。

 美しい刃紋。しっかりと鍛えられた刃。

「じゃあ、お父さんがもってるやつは、私の旦那さんになる人にあげるんだね」

「…………」

「なんで固まるの?」

「……もしかしてそういうあいてがいるのか?」

 妙に平坦な声。

「いないけど。将来の話だよ?」

「…………」

 大きく息をつく村井。

 安堵の吐息だったのか、それとも別の何かだったのか、自分でも判らなかった。

「ずいぶんと余裕があるな。敵を前にして親子の交流か」

 怒りに金瞳をぎらつかせてサトルが起きあがる。

「あ、復活した」

「いや、最初から気づいていた。俺たちが隙を見せるのを伺っていたのだが、近寄ってこないので業を煮やしたのだろう」

 冷静に村井が分析してみせる。

 それが癇に障ったのか、ますますサトルがいきり立つ。

「いい気になるなよ。娘の力を借りねば戦うこともできぬ半端者が」

「まったくその通りだ。いつかは隣に立ちたい。いつかは守り側になりたいと思ってきたが、不惑になっても未だに叶わん」

 自嘲するようにいって言葉を切る。

 掌をさしだし指をちょいちょいと動かす。

「こいよ。魔に堕された腐れ神。ハンパものが怖くないならな」

 挑発。

 犬歯を剥きだしてサトルが吠え、突進する。

 遅い、と琴美は思った。

 つい先ほどまでの鋭さがない。

 腹部にめり込む村井の拳。

「ぐぼ……」

「俺の蹴りが、ただの膝かっくんだと思っていたのか? 腱の二、三本は断たせてもらったに決まっているだろう」

「ニンゲンごとき……が……」

「琴美。成敗」

「了解っ!」

 短刀を構え、琴美が突き進む。

「っざけんなっ!!」

 まばゆいほどの光を放つサトルの身体。

 次の瞬間、金瞳の男は跡形もなくいなくなっていた。

「消えたっ!?」

「亜空間転移で逃亡したな。悪魔に堕されたとはいえ、さすがは神といったところか」

「転移て……そんなことできるの?」

「澪にも記録が残っている。今は使える者がいないがな」

 テレポーテーションほど便利な能力ではないらしいが、と付け加える。

 さすがは量産型能力者を生み出した研究者だ。

「沙樹をたすけるぞ」

「はいっ」

 逃亡した神のことを頭から逐い、中年男が駆け出す。

 大きく頷いた娘が続いた。




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