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潮騒の街から ~特殊能力で町おこし!?~  作者: 南野 雪花
第6章 ~歓迎! 勇者様御一行~
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歓迎! 勇者様御一行 10

※女性が陵辱されるシーンがあります。苦手な方はご注意ください※

 結局のところ、皆、怒っていたし焦ってもいたのだ。

 でなければ、北海道から長駆して東京に乗り込んだその日のうちに突入作戦など敢行しない。

 しかも戦力を分断して二正面作戦。

「どんだけ短絡的で粗野な作戦だって話ね」

 前庭に立った佐緒里が苦笑した。

 子供チームの中で、冷静さを保っている者がいるとすれば、間違いなく彼女である。

 佐緒里は澪の血族ではない。

 もちろん実剛たちとのシンパシーは強いが、共食いを忌避しないと嘯くだけのことはあり、一歩退いた目で状況を俯瞰することができる。

「不満ですか? 佐緒里嬢」

 問いかける魚顔軍師。

「作戦に不満はない。どのみちあたしの頭では、凪信二以上の作戦など思いつかないから。ただ一点だけ不満があるとすれば」

「あるとすれば?」

「建物がひとつしかないということかな」

「……すみません佐緒里嬢。発言の意図がわからないのですが」

「敵の本拠地なのだから、建物は十二くらいあるべき。そしてそれぞれの場所を守る戦士がいるべき。そう思わない?」

「思わない? といわれましても」

 本気で何を言っているのかわからない。

 魚顔軍師の肩を、ぽむぽむと光則が叩く。

 こいつに何を言っても無駄ですよ、と、諦めきった表情が語っていた。

「さてと。それでは征くとするか」

 ありふれたキャップを目深にかぶり、鬼の姫が歩き出す。

 少し遅れて続く光則と信二。

 無造作に。

 あまりにも無造作に近づいてゆく。

 学校や会社に向かうとき歩調と、なんら変わらない。

 日々のルーチンワークをこなしているような自然さに、一瞬だけ呆然とした警備の警察官たちが、あわてて少女を制止しようとした。

「君っ なんの!?」

 ようだ? と、続けたかったのだろうか。

 もはやそれは誰にも判らない。

 ハエでも追い払うかのように振った腕に打たれ、十数メートルの距離を滑空して立木にぶつかって止まったから。

 およそ人体が発したとは思えない音を立て失神する警官。

 哀れな役人に無慈悲な一瞥をくれる少女。

「誰の許しを得てあたしに触れようとした。身の程をわきまえろ。人間」

 言い捨て、歩を進める。

 あまりの事態に騒然となる官邸の庭。

 警官たちがわらわらと集まってくる。

「光則君。死なない程度にやってしまってください」

「らじゃ。大地よっ 我が前に立つ愚者どもに裁きを与えろっ!」

 どん、と、右足を踏み出す少年。

 次の瞬間、前庭は地獄と化した。

 地面から無数に生えた石筍に、太腿や腹を貫かれ十名以上の警官が呻吟する。

 携帯した拳銃を抜く暇すら与えられなかった。

 とても戦闘とはいえない。

 一方的な暴力である。

「派手にやりすぎましたかね?」

「かまいませんよ。こいつらの親玉も情報を公開できません。マスコミに知られたところで、握りつぶすでしょうしね」

 秘密を守りたいのは、むしろ国の方だろうと笑う軍師。

「坂本光則」

 声をかける佐緒里。

「なんだ?」

「その呪文。かっこいい」

 ぐっと親指を立てたりして。

 どうやら鬼姫の心の琴線に触れたようだ。

 音を立てそうな勢いで少年が頬を染める。

「うるせぇっ きっかけ作りをしたほうが発動させやすいんだよっ」

 どうせ発動ワードを使うなら格好いい方が良い。そう思って子供の頃にかっちょいい詠唱を作ってしまった。

 そのせいで、いまでも大技を使うときは中二病くさい呪文が必要なのだ。

 恥ずかしいが、長年の習慣はなかなか抜けない。

「センス良い」

「いうなっ もう何もいうなっ」

「はいはい。遊んでいないで行きますよ。本番はこれからなんですから」





「きたか。どうしてどうして、打つ手が早い」

 苦笑混じりの感嘆を漏らした男が、女の胸から顔を離す。

 右手首と右足首、左手首と左足首を極細のワイヤーで縛り上げられた沙樹が、自分にまたがっているサトルを睨む。

 昨夜から、ずっと陵辱され続けていた。

「まったく。こんなおばさん犯してなにが面白いんだか」

 十時間近くに及ぶ行為にも、彼女の心はまったく折れていない。

「面白いに決まっている。お前ほどの女を自分のものにできるのだからな」

「意味がわからないわね」

 子孫を残すための生殖行為なら、正直にいって沙樹は不向きだ。

 年齢的に、妊娠が不可能とはいわないが、難しくなってきている。

 心を折ろうとしているのなら、もうすこし効果的な方法があるだろう。

 サトルの行動はまったく理解不能である。

 本当に、ただ沙樹が欲しいだけとしか思えない。

「客の相手をしてくる。大人しくしていろよ。蒼銀の魔女」

 体を離し、毛布を女の身体にかける。

 本当に意味がわからない。

 澪の血の秘密を聞くこともなく、たたひたすらに身体を貪るだけの魔族。

「はやく死ね」

「お断りだ。死んだらお前を抱けないからな」

 足音が遠ざかってゆく。

「くっそっ このワイヤー何で出来てんのよっ」

 どれだけ力を込めても千切れない。

 おかげで、とんでもなく屈辱的なポーズを取らされているのだ。

「こういうとき、量産型のサイコキネシスが羨ましいわっ」

 うぎぎぎともがく。

 恥ずかしいとか、情けないとか、そんなことを言っている場合ではない。

 なんとかして脱出しなくては、助けにきてくれた者たちに申し訳ないというものだ。

「ていうかっ 琴美にこんな格好みられるのはちょっとまずいでしょっ」

 もっともである。

 敵に捕まり、暴行され、あげく大股開きで拘束され。

 蒼銀の魔女の名折れだ。

 前ふたつは、もう起きてしまったことだけにどうしようもないが、せめて最後の一つくらいはなんとかしたいものである。




 ヘリポートに降り立つ三人。

 絵梨佳の重力制御によって空を飛び、首相官邸に着陸した実剛たちだ。

「もうはじまってるね」

 前庭から聞こえる戦闘音に、少年が呟く。

「沙樹さんはどこですかね」

「入口から一番遠い場所よ。絵梨佳ちゃん」

 言って、走り出す琴美。

 焦りがあるのだ。

 と、その前に立ちふさがる男。

 野戦服に身を包んでいる。

「本当に上からくるとはな。非常識にもほどがあるだろう」

 苦笑の気配。

「どけっ!」

 突撃する琴美。

 やや猪突の感があった。

「退けといわれてどくやつなどいない」

 腰だめに構えた特殊警棒で魔女の娘の拳を受け止める。

「陸上自衛隊の三浦だ。死ぬまでの短い間だが、憶えておいてもらおう」

 ぶん、と振られる警棒。

 左の掌底で弾く琴美。

「あんたの名前なんか知らない。お母さんをかえして」

 底冷えするような声。

 蒼銀の髪が、ざわざわとざわめく。






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