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オバサンの正体

 魔女は、なんか騒がしいなと思って小屋から出て辺りを見渡した。

 すると、城下町の方で木の怪物が暴れているではないか。怪物は遠くからでも巨体がよく見えた。


「ちょいちょーい! 何あれ!?」


 慌てて小屋へ戻り、セルジュを起こす。

 セルジュはボンヤリしていたが、魔女に引っ張られて小屋から飛び出した。


「ホラホラ、逃げるわよ! 箒に乗って!!」


 セルジュを箒の後ろに乗せて、魔女は空を飛ぶ。

 怪物はお城の方で咆吼を上げて暴れている様子だった。


「あんな化け物、私じゃ手に負えないし、この国を助けてやる義理もないわね!」

「ま、待ってください!」


 一目散にこの国から離れようとした魔女を、セルジュが止めた。


「どしたの?」

「お城の方には、ルゥルゥがいますよね!?」

「あー、でもいいじゃない、王子様が守ってくれるでしょ、知らんけど」

「う……っ、でも、心配です!!」

「知らないわよ! それに、あんな怪物相手に何ができるの? 行くわよ!」

「なら、僕を置いていってください!!」


 魔女が協力してくれないなら、と、飛んでいる箒から飛び降りようとするセルジュ。

 闇落ち寸前で持ちこたえた様だ。闇オチは平凡ショタの方が美味しい事を、良く知っているのだろう。

 

「ちょっと危ないわよ!」

「ルゥルゥは僕の為に陸に来てくれたんだ! ……僕が守らなきゃ!!」

「ぐあああああ眩しいっ!」


 光のセルジュが発するキラキラに、魔女の目が潰れ、存在が掻き消されそうだ。

 

「うぐおおおお、分かったわよ! アッチまで連れて行ってあげるから、飛び降りようとしないで! 死ぬから!!」


 魔女が、お城の方へ箒を大きく旋回させる。

 セルジュはギュッと魔女の腰に手を回した。


「魔法使いのお姉さん、ありがとう!」

「うう……マジでヤバかったら降ろさないからね!!」


―――大丈夫よセルジュきゅん、オバサンがついてるからね!! もっと、もっとギュッてして!!


 魔女はともかく、オバサンは大喜びで声援を送っている。


「行くわよ!!」


 結局、ひとっ飛びにお城の方へと向かってしまう魔女であった。


 近づいて見ると、暴れているのは樹齢500年はありそうな巨木の怪物だった。

 怪物は王子率いる兵士達に足下をツンツンされて、彼らを踏み潰そうと怒り狂っている。

 

『私の前で王子様と結婚とかハッピーな事するんじゃねぇ~!! お前らの幸せなんざ一ミリも見たくねえんだよおおおおお!! 見てもぜんっぜん楽しくありませんからーっむしろ鬱になりますからーーー!!』

「……気持ち、わっかる……!!」


 思わず賛同しながら上空を飛ぶ魔女に、怪物が気づいた。


「なんだか知らないけど、私はアンタの気持ちが世界一分かるわよー!!」

 

 魔女が怪物を宥めようとしたが、怪物は魔女の後ろのセルジュを見ると、二人へ向かってもの凄い咆吼を上げた。


『ウオオオン!! 男女仲良く二人乗りしやがってええええ!!』

「ち、ちがっ! これは、男女とか仲良くとかそういうんじゃ、ないんだから!?」

「どうでもいいよ! お姉さんアイツの手を見て!!」


『どうでもいいよ!』に大いに傷ついた魔女だったが、セルジュも必死なのだろうと何とか自己回復する。そして、彼の指さす怪物の手を見やった。怪物は両手に一人ずつ何かを掴んでいるみたいだ。

 それが誰かを知ると、魔女もセルジュも同時に違う名前を叫んだ。


「ルゥルゥ!!」

「ア、アーサー!?」

「あ、セルジュー! なんか大変なのー!」

「ハニー!! 俺のピンチに駆けつけるなんて、おお、これが真実の愛なんだね!!」

「アンタ何やってんのよ!? 家で息止めてろっていっただろが!!」

「君への愛で窒息してしまうよ!」

「うわうわ、ルゥルゥ……お姫様みたいなティアラ可愛いね!!」

「本当? ありがとうセルジュ……♡」

「ルゥルゥ、すぐに助けて上げるからね!!」


 兄に全く気づかず、セルジュが無謀な誓いを口にした時、怪物がブウンッとルゥルゥごと腕を振るって魔女たちに攻撃してきた。

 魔女はスレスレで怪物の腕を避けて、箒の高度を上げる。


「不味いわね……、パワフル過ぎて迂闊に近寄れないわ」


 地上では、王子がルゥルゥを助ける為、果敢に怪物へ向かって行っている。

 王子が蹴り飛ばされそうになった所を、ムキムキの脚の兵士が間一髪で庇い、兵士の兜がクルクルと宙を舞っていた。

 王子は何やら叫びながら、兵士を助け起こしている。


 セルジュは彼らの勇姿を見て、唇を噛んだ。


「僕も……あんな風に勇敢に戦わなきゃ!」

「駄目よ! アンタはまだ子供だし、なんにも武器がないでしょ!」

「いや、お姉さんが出世払いにしてくれたこの剣があるよ……!!」


 セルジュは腰のベルトに差した剣の柄を握った。

 魔女は青ざめる。


「だ、駄目なのよ、その剣は……」


 選ばれた者にしか抜けない剣なのだ、と言ってしまえば、セルジュは危険を回避してくれるだろうか。しかし、自分が彼に嘘を吐いた事がバレてしまうのがイヤだった。

 その一瞬の迷いの間に、セルジュは箒から怪物目がけて飛び降りてしまった。


「ああああ!? 待って!! 駄目!!」


 魔女が急いで落ちて行くセルジュを追う。

 そして妙にゆっくりと時間が流れる中、生まれて初めて神様へ祈った。


――――神様ごめんなさい、私ったら悪い魔女だったわ! 謝るからお願い、あのボウヤを……!!


 怪物目がけて落ちて行くセルジュは、魔女の嘘に気づかないまま、剣の柄を引く。


――――魔女を疑わないなんて……! ああ、ホント、神様。神様、ちょっ聞いてんの!? あのボウヤ助けろって言ってんの!!!


 魔女が秒速で神様へのお願いに痺れを切らした瞬間、セルジュの腰がピカッと激しく光った。

 

「!?」


――――魔女よ、その願いは神では無くワタシが聞こう。我こそは十五歳以下限定の聖剣ボーイスカウト!! 

「そ、その声は……頭の中の……!!?」

――――キャホーイ! 川でフンドシ、鮎掴み!!


 なんかわからんが楽しそうな決め台詞を声がキメた途端、セルジュの剣がシャランと抜き放たれた。

 魔女が目を見張る先で、セルジュが輝く剣を振りかぶり――――大木の怪物を一刀両断してしまった。



「まさか、伝説の勇者様のお相手とは知らず結婚しようとしてすみませんでした。この結婚はなかった事にさせていただきます」


 そう言って、セルジュに頭を下げたのは王子だ。

 セルジュは複雑な感情でそれに短く頷いた。


「でも……王子様は本当にルゥルゥを想っている様に見えました。あんな風に勇敢に戦って……それをこんなに簡単にいいんですか? 僕、決闘とか受けて立ちますよ?」


 怪物を一刀両断出来る剣を持っているとかなり嫌味に聞こえるが、セルジュは百パーセント純粋にそう言った。

 しかし、王子は何故か幸せそうに微笑んで首を振る。


「いえ、私は本当の運命の相手を見つけてしまったのです」

「え……?」


 セルジュはちょっとイラッとしながら、王子が夢見るように視線を向ける先を見た。

 そこには、筋肉ムキムキの脚をした美女が、壊れた城門や怪物の後始末の指示を出している。


「フフフ……彼女は、我が国の衛兵隊長だ。なんかおかしいと思っていたんだよ。妙に惹かれるなって……いつも兜を被っているから気づかなかった。あんなに美しい女性だったなんて」

「よくわからないけど、良かったですね」

「彼女、私の求婚に応えてくれるだろうか」

「王子はステータスが半端ないですから、きっと大丈夫ですよ」


 セルジュは適当な返事をして、王子を喜ばせといた。


「ありがとう。勇者様は山へ行きたいのだとか。すぐに山の門を開けさせましょう。それにしても、何をしに行かれるのです?」

「そ、それは……内緒です……」


 セルジュは赤くなって、俯いた。

 一時でも恋敵だった王子に、自分がその……そういうアレをアレしに行くなんて口が裂けても言えなかった。


「そうですか。きっと何か重大なご用時なのでしょう。ご加護がありますように祈っております」

「あ、ありがとうございます」


 その辺でケンタと再会していたルゥルゥが駆け寄って来た。


「わーい! これでお山に登れるね、セルジュ!」

「うん!」

「ルゥルゥ……身勝手な私を許してください」

「なにが? じゃあね、王子様!!」


 こうして、ルゥルゥとセルジュは山への門をくぐれる事になった。

 

 さて、良かった良かったと喜んだ後、セルジュは「そういえば」と、魔法使いのお姉さんの姿を探した。

 しかし、どれだけキョロキョロしてみても、魔法使いのお姉さんの姿はどこにもない。

 セルジュは「お礼が言いたかったのに」と、ふと空を見上げる。

 すると、遠くの空で銀色の輝きがチラリと光った。

 箒にまたがって飛ぶ、魔法使いのお姉さんの髪の光だった。

 箒には、何故かロープで根っこ付きの木みたいなのがぶら下がっていたが、遠すぎてよく見えなかった。

 セルジュは、そっとそちらへ手を振って「ありがとうございました」と微笑んだのだった。

 尚、魔女を悩ませた頭の中の声の主は、セルジュの腰に幸福そうに揺れていた。

 セルジュのショタ性が抜けるまでは、ずっと一緒である。


「あの王子様ね、わたしの脚が好きだったんですって。可笑しいわよね、男せ――――ん・んー……そんなに人間の女の子らしくないのに……ね」


 山の門へ向かう途中、ルゥルゥがそんな事を言った。

 だから、セルジュはこう答えたんだ。


「僕は、ルゥルゥがどんな脚だって好きだよ。君の脚が魚だって構わなかったんだからね」


入隊を嫌がる兄がボーイスカウト入れられて、川で白いフンドシ締めさせられて鮎の掴み取りしてる写真が面白すぎて今でも覚えています。

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― 新着の感想 ―
[一言] 頭の中のオバサンの正体が!!なんということでしょう! アーサーは連れ帰られたのね( *´艸`) これでようやく仙人のところへいける!やっぱりセルジュは眩しいね。いつまでもショタでいてほしいく…
[良い点] その声……あなただったのか!!!笑
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