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百合エルフは科学と魔法で無双する  作者: 浦和マサツナ
第1章 ようこそ転生者
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外宇宙探査船サジタリウス号

 翌日。

 宿のロビーには、すっかりマールスに染まっていた面々がいた。


 元日本人のアレックスとエドウィンは当然の事、アレックスの幼馴染であり、冒険者としてもずっと一緒にいたイリーナとウルファに至っては、衣装まで完全にマールス風の物に着替えていた。


「イリーナちゃん、ウルファちゃん、二人共、似合ってるよー!」


 ユーリカは開口一番、女性陣を褒めた。可愛い女の子が着飾っているのを見ると、このエルフの少女はついついニヤけてしまうのだ。


 イリーナはふんわりとしたワンピースを。ウルファはホットパンツにTシャツという出で立ちだ。褒められて満更でもない様子。


 男性陣の内、芸術品に目がないというカスパルもまた、マールス風の衣装に着替えていた。


「スーツというのが欲しかったのだがな。仕立てに時間がかかるそうなので、今日はこのように楽な格好にした」


 ポロシャツにジーンズを着用している。


 翻ってオットマーは昨日と同じ衣装のままだ。しかし武装は解いて、街歩きの格好をしている。


「エドウィンの話を信じるならば、ここは『日本』という国並に治安がいいのだろう?ならばそれらしくしておかないとな」


 前日までの緊迫感が嘘のように、リラックスした体で語るオットマー。


「ユーリカさんとバルタザールさんは、マールスの衣装に着替えないの?」とイリーナが尋ねる。


 ユーリカとバルタザールの2人の格好は、昨日と同じのまま……つまり冒険者風のままであった。


「皆を入国管理局まで送り届けたあとは、また冒険者稼業に戻るからねぇ。 私達は偶然、君たちをグランツ王国で見つけたのでマールスに立ち寄って来ただけだからさ」


「という事は、またグランツ王国へトンボ返りするんだ? 大変だな」とウルファ。


「まぁそういう仕事だからね。それじゃあ入国管理局へ行こうか」




 入国管理局は駅エリアと、マールスの中心エリアの境目に存在していた。


「ああ、ユーリカさん、バルタザールさん、おかえりなさい……送ってきた報告にあった子達ね? 私はパメラ。これから皆さんを案内いたします。よろしくね」


 受付にいた女性が席から立ち、 元日本人2人組と、現地人4人組に挨拶をした。



「それじゃあ……みんな、私達は一旦ここでお別れだよ。 出来ればマールスに残っていて欲しいけれど、こればっかりは強制出来ないからね。 また会える事を楽しみにしているよ」とユーリカ。


 それぞれに挨拶を済ませると、最後に6人を代表してエドウィンが語った。


「ありがとう、ユーリカさん、バルタザールさん。 ここまで連れてきてくれて。……二人共、ご武運を」


「それじゃあ、またね!」


 ユーリカが元気よく手を振りながら、入国管理局から出ていった。





「さってと、バルタザールさんや。 私はまたグランツ王国へ戻るけれど、そっちはどうする?」


 入国管理局から出て、うーんと一仕事終えたかのように両手を高く上へと伸ばすユーリカ。実際にはこれからまた通常の仕事……つまり冒険者稼業に戻る訳だが、転生者の案内を無事に済ませられて、気分は晴れやかである。


「ああ、私は追加任務の通達が来ててね。これからユーリカとは別行動だ」


「そっか。気をつけてね」


 何度も共に行動をしてきたので、バルタザールの実力は知っている。 ユーリカ自身も自分の能力に疑問はないので、別れて行動する事に特に不安も心配も無い。まるで明日また会えるかのように気楽に別れを告げ、ユーリカは一度自分の家へと戻った。




「ただいま、マーシュ」


 家の屋上にてマーシュ、と呼ばれたのは、人間でも動物でもなく、 一人と一人分の荷物が載せられるくらいの大きさの戦術支援ドローンであった。主な移動手段でもあり、偵察や攻撃支援にも回れる優秀な存在だ。


 先日、アレックスやエドウィン達を見つけてからは、ステルスモードで常に頭上で待機していて貰っていたのだ。


 今日から通常任務に戻るという事で、昨夜から家でメンテナンスを実行していたのである。


「おかえり、ユーリカ。 そろそろグランツ王国へ戻るの?」


 各ドローンの性格設定はマスターに委ねられている。ユーリカはマーシュの設定をのんきな友人風に指定してあった。


「マーシュ、メンテナンスは完了した?」


「いつでもOKだよー」


「じゃあ、行きますか」


 荷物を載せ、自分もマーシュに跨がるユーリカ。


「ではしゅっぱーつ」




 マールスの空へ飛び立つユーリカ。街の中心部では相変わらず、『シップ』が鈍い光沢を反射させて鎮座していた。


 外宇宙探査船サジタリウス号。 通称シップ。 100年以上も前に26世紀の地球から転移してきた存在だ。


 この街を支える高度な科学技術の基礎のほとんどは、シップからもたらされた物である。この世界に転生してくる地球人の多くは21世紀前後の人間だが、そんな彼らより遥か未来の地球から転移してきたシップは、ワープ中に外宇宙からの攻撃に晒された結果、この世界に不時着してきたのである。


 彼らによれば……この世界も外宇宙から狙われる可能性が高いと言う。シップの乗組員達のこの世界での第一目標は地球に戻り、外宇宙からの侵略を警告する事。しかし異世界への転移は完全に偶然の結果であり、戻る技術は現在でも目処が立っていない。


 その為、現在進行しているのは第二目標……この世界の文化レベルを高め、きたる将来、やってくる外宇宙からの侵略に備える事。


 幸いなのか必然というべきなのか。この世界には地球からの転生者または転移者が、決して多くは無いが、少なくない割合でやって来る。この世界の文明レベルよりも高度な教育を受けている彼らを集め、組織されたのが、ユーリカ達が所属する『機関』とセーヴェル公国なのであった。


 集められた元地球人達により、科学技術と魔導技術がこの国では常に進歩し続けている。例えばシップが持つテラフォーミング技術だけでは、この過酷な北の大地をここまで発展させる事は出来なかった。そこにはチートクラスのスキル持ちの転生者や転移者達の存在が必要不可欠だったのである。




 マーシュにまたがり、グランツ王国へ向けてひたすら南下するユーリカ。とある国境の山間を通り過ぎようとした時、マーシュから警告音が発された。


「下で民間人が盗賊に襲われているようですね。ユーリカ、どうしますか?」


「助けに行こう。 <ハイ・ステルスモード>」


 速度が落ちる代わりに、外部からほぼ一切の認識が出来なくなるハイ・ステルスモードを起動させた。通常のステルスモードは科学的に光学迷彩を施しているのみだが、ハイ・ステルスモードは魔術的に匂い、音までも遮断している。 ハイステルスモードもまた、シップがもたらした科学技術に、転生者達が開発した魔導技術が融合した結果の産物なのである。



 下では仕立ての良い馬車と荷車が、襲われていた。盗賊23人に対して、護衛の冒険者……にしては装備品が高級品ばかりである……はたったの8名。護衛は誰もが優秀そうであるが、数に押され気味である。


 <ユーリカ、警告、護衛の中にグランツ王国近衛騎士団のキール副団長がいるよ>


 ユーリカの体内に存在するナノマシンが、キールの顔写真を含む情報を網膜に投影した。世界中に散らばる『機関』の工作員達が日夜、各国の重要人物の情報を集め、アップデートを続けている。情報によれば、キールは数ヶ月まえに副団長になったばかりの実力派若手である。


 <という事は、あの馬車には王族がいるって事かな>


 王族じゃなくても助けるつもりだったが、相手が王族ともなれば、今後の繋がりが期待出来る。


 <では早速助けにいきますか。 近くに下ろして、マーシュ>

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