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グルメこそ最強ゲームの世界で愛の告白を!〜恋か?喫茶店の夢か!?NPC猫の店長との譲れない戦い〜  作者: 元毛玉
第一章 イートインワールド

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8/10

第六話 男に刺せ

〜ここまでのあらすじ〜

食事が栄養ゼリーだけの世界で、政府は全てを左右するVRMMOイートインワールドを開発した。

ユニークスキルを手に入れた峰大は、1位を目指して益々精力的に活動する。

そんな中で店長はタヌキャットの推定メスへと惚れ込んでしまう。☜イマココ


〜登場キャラ紹介〜

・ガッツリン:多部 峰大(たべ ほうだい)

 主人公。高2。取柄はゲームの腕で負けず嫌い。


・ローカロリー:相須 萌奈香(あいす もなか)

 峰大と同じクラス。ハイスペックな天然女子。


・TKG

 中学時代の同級生。中二病は高校からデビュー。


・爆殺クチャラー

 ネット上の親友。関西弁が特徴のエンジョイ勢。



 ◇◆◇◆◇《湿地帯》エリア。



 今日は狩りにきていた。

 順調だったが、俺の油断から強敵ビーバッファロー二体に遭遇し、ローカロリーが不意打ちを受ける。半身めり込む泥の中から彼女の咳きが聞こえ出す。


「ローカロリー、休んどき! ったく、貸しやからなガッツリン!」

「わりぃ! すぐ返済する!」


 ミスの借りは早めに返さないと、今後やりづらくなってしまう。

 俺はビーバッファローの背後を強襲した。


「チッ! やっぱかてぇ!」

「ちょい待ち! おまけや!」


 横綱サイズの闘牛へ剣を突き立てるも、ビーバッファローの装甲のような毛皮に阻まれる。剣は刺さらず持ち手は痺れ、辛うじてヘイトを誘導しただけ。

 だが、ヘイトが切り替わったのを見計らい、爆殺クチャラーが怒濤のラッシュを仕掛ける。

 五連撃の拳と蹴りを叩き込んでいた。


「3、2、1……ファイア!」


 声と同時に爆発の花が咲く。

 爆弾魔の格闘装備セットの能力だ。打撃で出来たタンコブは、簡易爆発物へと早変わり。

 TKGが「冥府開門(やったか)?」とフラグ発言をしたせいか、敵は即座に立て直した。

 黒煙が晴れる前に、俺はアイテムボックスからギガントミートクラッシャーを取り出す。

 以前は重すぎて装備できなかったが、今ならば可能だ。


「グモォォォ!」

「運が悪かったな。肉に還りな!」


 敵が次の行動を起こす前に、大上段からの一撃を叩き込む。

 止まっている相手にしか当てられない大技。


 ドザシュ!


 強い血の香りが跳ねて来て、手ごたえを確信するが気を抜かないよう目配せをする。

 爆殺クチャラーと二人で、傷口へとラッシュを仕掛けた。

 TKGの苦情が飛ぶ。


疾く終焉(さっさと)導かれしプロミス(かたづけてこっち)福音バーニング(えんごきてくれ)!」


 残る一体を一人で受け持つのは負担だろうが、頑張って貰うしかない。

 執拗に繰り返す低い姿勢からの敵のタックルモーションを、TKGは辛うじて捌いていた。


「あと30秒粘ってくれ」

「次のCMまでキバリ。ほら、納豆でもかけて粘り増量で」

星たちよ(おまえら)アウトサイダー(たにんごとだと)仮定せしめるな(おもいやがって)~!」


 泣き言をBGM代わりにしながら、目の前のビーバッファローを仕留めにかかる。

 爆殺クチャラーが足止め、俺が傷口へギガントミートクラッシャーを振り下ろした。


「グモォォォ!!」


 一刀両断。

 装甲みたいな毛皮の抵抗が無ければ、このぐらいはやれる。

 もっと強くなれる手ごたえを得られて満足だ。


時が満ちた(おわったん)ならプロンプトへ(はやくしろぉ)!」


 切羽詰まったTKGの声に、俺と爆殺クチャラーは肩を竦めつつ救援へと向かった。



 ◇◆◇◆◇



「無事か? ローカロリー、TKG」

「なんとか……でも、ガッツリンのせいだからね!」

エルドラドは豊穣へ(ほうしゅうがおおく)錬金術の理をリワード(ないとわりにあわねー)


 無事を称え合う最中、ぞわりと背筋を這い上がる悪寒が走る。

 VRMMO(イートインワールド)では、遥かに強い相手が接近した場合、五感をフル稼働して警告を与えてくる。


「おい、ガッツリン! やばないか!?」

「そうだなクチャラー、急いでこの場を離れるぞ」


 戦いの余韻も束の間、圧倒的な強者が近づく気配に撤退を決断し、行動に移す。

 しかし、遅かったようだ。


「ダメ! 逃げられない」


 ローカロリーの声に、俺は身構えた。

 少し遅れて、TKGも反応する。


驚天動地(おいおい)死のエンゲージ(強制ボスバトル)か?」


 脱出不可能を示す(ボスフィールドの)エフェクトが、不気味な光を放つ。

 現れた敵影。

 鮮やかさと気品を併せ持つ毛並み。風で靡く長い体毛からは覇気が宿り、王者の貫禄を感じさせた。

 3mを超え、4mにも届きそうな全長。

 野生を体現した岩のような体つきは、筋肉の鎧というより装甲に見える。


「皆、気を付けろ。ヒグマントヒヒだ!」


 全滅情報が9割を超える中ボスのお出ましである。遭遇するのは初めて。

 芯からの震えは、真冬の雨に打たれたかのよう。四肢の動きが定まらないし、歯の根も合わない。

 近づいてくる足音は、まるで断続的な余震。


趨勢(これ)……死の旗も屹立(やばくないか)?」

「生は初めてや。ネットで見聞きするのと、生で体感するんは、別もんやな。意識飛びそうや」


 皆は半ば諦めた声色だし、ローカロリーなんか顔面蒼白で一言も発していない。

 それでも敢えて鼓舞する。


「プルプル震えてたって何にもならねーぞ。俺たちで討伐記録を更新しようぜ!」


 恐怖を腹に押し込み、敵に対し反時計回りに走りだす。

 ヘイトが取れればそれでもいいし、取れないなら背後から強襲するつもりで走り回る。

 皆も続く。


我が盟友(ガッツリン)生後間もない小鹿(ブルってんじゃん)凍土住まう囀りか(こえふるえてんぜ)? ()神風と成りてアビスへ(やるだけやってやらぁ)煌めきと共に(ほら、やるぞ)

「やな」

「う、うん。私もやるよ! あんなの凄く大きくて、野蛮で凶悪なだけのお肉好きのお猿さんだよ!」


 ローカロリーのちょっとピントがずれたセリフに皆も苦笑い気味だけど、やる気は出た。


「刮目せよ! 《超速突進》!」


 TKGがスキルを発動させ、一直線に駆けていく。

 《超速突進》は敏捷を20倍に上げるスキル。強力な分、方向転換できない欠点もあるのだが、何か考えがあるのか。

 TKGとヒグマントヒヒが互いの射程距離に入り、当然、敵はカウンターで迎え撃つ。

 寸でのところで地面に手をつけたTKGが、大きな声で叫んだ。


「《バーテンダー》発動!」


 調理スキルの応用。いつもながら発想が柔軟だと感心させられる。

 カクテルシェイクの八の字を描くスキルは、途轍もなく重いシェイカーボトルを扱うための技能。動かせない大地を軸にして、逆に体を方向転換(シェイク)した。


「空振りフィッシュオン(させてやったぞ)! 誓い約せ(ちゃんと)タイムリーヒットを命ず(しろよ)星たちよ(おまえら)!」

「任しとき! サヨナラかましたるわ!」


 スキルを使って空中跳躍をした爆殺クチャラーが、無数の爆弾を敵へ放り込む。攻防一体の得意技だ。


 爆ぜる。

 強烈な火薬の香りが舞う。

 大地を抉り、ズシンと腹に響く音を轟かせた。

 敵は爆弾の直撃を意にも介さず、無造作に歩みを進めたどころか、その一つを空中で受け止め投げ返してきた。


「ちょちょ!?」


 爆殺クチャラーは投げ返された爆弾をギリ回避する。


(でも、よそ見はいかんぜ。熊&お猿さんよ!)


 爆風に紛れつつ接近した俺の斬撃が火を吹く。


「《半月切り》!」


 ガキィィィイインンン!


「な!?」


 胴薙ぎの一閃は、硬質な筋肉に遮られた。

 俺の最大火力の一撃。それでノーダメージは、武器の攻撃力が全く足りていないと言うことだ。

 ギガントミートクラッシャーならばダメージが通るかも知れないが、ぶん回すには筋力が足りない。


「ローカロリー! 詠唱準備!」


 指示を出し、一旦仕切り直す。

 頭を過るのは、ここ最近の反省点。

 あと少し筋力が上がっていれば。刺突スキルを手に入れていれば。

 無い物ねだりだが、どうしても思ってしまう。


「どないした? ガッツリン、はよ指示くれや!」


 催促の声で我に返り、作戦を叫ぶ。


「クチャラーは攪乱しながら爆撃を! 絶対ローカロリーにヘイトが向かないよう調整!」

「あいよ!」

「TKGはフォローを頼む。後、隙を見て筋肉が少ないところに刺突攻撃!」


 TKGからは「筋肉ロスト行方不明(ないのどこだよ)!?」と苦情が上がるも、「()にぶっさせ!」と返しておく。

 攻略情報には斬撃と打撃に高い耐性とあったので、半月切りが通じなかった時点でダメージソースが足りない。

 ローカロリーの魔法ならダメージは通ると思うが、傷が全く無い状態では厳しいだろう。


「おらぁ!」


 爆殺クチャラーの爆撃とタイミングを阿吽で合わせ、餅つきのように交互に攻撃を浴びせる。


(ほら、鬱陶しいだろ? もっと俺を見ろ!)


 効かないなりに攻撃を足に集中させ、敵の機動力を奪う。

 挟撃を嫌がったヒグマントヒヒは、俺にターゲットを絞り始める。


「《アイスピッカー》!」


 TKGが一瞬の隙を縫い、敵の股間へスキルを突き立てた。



───用語説明:

【ビーバッファロー】

 浅い河に巣を作って生息するモンスター。

 ソロで狩れたなら上級者と言われるほどの強敵。


【ヒグマントヒヒ】

 ヒグマの名を冠する中でも、最強と呼び声の高い凶悪な中ボス。

 力強さと頑丈さの上に、知性に裏付けされた戦闘巧者であり、弱点が少ない。


【スキル《超速突進》】

 敏捷を20倍に向上させるが、自力では方向転換できない欠点もある。

 以前は方向転換の制限が無く、強すぎたため弱体化(ナーフ)された。


【スキル《半月切り》】

 強烈な一撃を叩き込み、敵がスタンすれば敏捷に応じた追加攻撃をするスキル。


【スキル《アイスピッカー》】

 刺突系の上位スキル。攻撃箇所や角度、タイミングによりクリティカルも発生。


【ステータス:耐久】

 スタン率や連続行動、スキルの連続使用に影響。

 内部的には行動スタミナの上限値となっていて、強力なスキルはこの値が高く無いと発動できない。

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― 新着の感想 ―
「筋肉ロスト行方不明」でふきました~TKGの厨二用語がくせになりますw 全員、キャラたってます。面白いです! これからも更新を楽しみにしていますね。頑張って下さい!
 ページタイトルの「男に刺せ」とは、そういう意味……(´·ω·`)  ヒグマントヒヒさん、痛そうです(爆)。  TKGの中ニ病ワードは、楽しい&面白いですね(^^)/
ルビが面白いww
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