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グルメこそ最強ゲームの世界で愛の告白を!〜恋か?喫茶店の夢か!?NPC猫の店長との譲れない戦い〜  作者: 元毛玉
第一章 イートインワールド

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5/10

第三話 店長との出会い

〜ここまでのあらすじ〜

食事が栄養ゼリーだけの世界で、政府は全てを左右するVRMMOイートインワールドを開発した。

1位を目指す峰大は、狩りで順調にレベルアップを果たす。

メンバーが次々とログアウトする中、ソロで追加の狩りへ向かう。☜イマココ


〜登場キャラ紹介〜

・ガッツリン:多部 峰大(たべ ほうだい)

 主人公。高2。取柄はゲームの腕で負けず嫌い。


・ローカロリー:相須 萌奈香(あいす もなか)

 峰大と同じクラス。ハイスペックな天然女子。


多部 翔(たべ かける)

 峰大の双子の兄。学区1位で全国でも5本の指。



 ◇◆◇◆◇《スライムの森》エリア。



 西にある狩場へとやってきた。

 いわゆる初心者エリアなんだが、実は隠しエリアがある。


「よしよし、まだここはバレて無いな」


 こうした情報が漏れると人が集まってしまい、狩りどころでは無くなる。


「会いたかったぜ、シルバーちゃんよぉ!」

「ぴぃ? ぴぴーー!」


 出会い頭に逃げたシルバースライムを追うと頬が緩んでいく。

 逃げ足が早いだけでソロでも狩れるから、あっさりと三体撃破。


「いや~、これは期待できるな。メニューは何にしようか。小麦粉が余ってたからクッキーとケーキかな」


 シルバースライムは細かく砕くと【アラザン】という銀色の砂糖菓子になり、焼き菓子との相性が良い。

 俺は慣れた手つきで生地を用意していく。


「おっし、後はオーブンに入れるだけ」


 ありがたや~。

 ソロでも狩れる強さで、高級食材。

 しかも、経験値も美味しい。これぞ一粒で何倍も美味いってやつだな!


「ん? メッセージ?」


 焼き上がるのを待っていたら、メッセージボックスのランプが点灯していることに気付き、開いてみる。


『ローカロリー:どう? シルバースライムは狩れた? 明日インするから私の分もよろしくね!』


 萌奈香にはバレバレだったみたいだ。


「チョコ足りるかな? 少し買い足すか?」


 いつもの皆がログインしないのなら、明日は萌奈香と二人きりだ。

 割とドキドキする。

 ん? あれ?

 用事ある雰囲気だったはずなのに、急に都合がついたのか?


「ま、いっか。シルバースライムも気持ち狩り足しておこっと」


 チーーーィン!


 今後の予定を考えていたらちょうど焼けたようだ。

 熱々のオーブンを開けると、整列した小ぶりな幸せたちがお出迎え。

 クッキーの香ばしさと、チョコの甘~い香りが食欲をそそる。

 さっき皆で料理を食べたばかりだけど、甘いものは別腹って言うし、チートデイってことにしておく。


「うっま! これやべー!」


 チョコケーキは超当たり。

 アラザンの食感がアクセントになって、ケーキの滑らかさが際立っている。

 ふわふわと口どけは軽く、どこまでも飛んで行ける多幸感が俺を包む。


【ガッツリンはレベルアップしました!】


 きたきたきたーーーー!

 腕力、技量、幸運が大幅アップ!

 今回は力技で倒したのも多かったから、腕力も上がるとは思っていたけど、予想よりも上だ。


「萌奈香と、お財布事情のためにもう少し狩ろう」


 アラザンは売ればお金になるし、幾らでも欲しい。

 それに、明日は萌奈香と二人っきりだ。

 どうせなら喜ばせたいし、俺の株も上げておきたいしさ。

 あわよくば翔よりも俺を……って下心もある。


 そうして、俺は隠しエリアへ再び足を踏み入れた。



 ◇◆◇◆◇



「ってことでお代わりちゃんはどこ~?」


 さっき狩ったエリアでは見つからず、今日はもうちょい先まで進んでみることに。

 やや毒々しい茂みの中を散策していたら、突如バランスを崩した。


「おっとっと、うわぁぁ!」


 茂みの足元が崩落する。隠しエリア特有の挙動だ。

 俺は転げ落ちながら、即死ダメージ(クリティカル)を避けようと頭だけは庇い続けてどうにか凌ぐ。


「ってて……ぺっ、ぺっ!」


 口の中に入った砂利を吐き出しつつ、状況を確認するため辺りを見回す。

 目に飛び込んだのは最上級のレア食材。


「おいおい、マジかよ……」


 爽やかな果実の香りとこの見た目。

 間違いなくコーヒーチェリーだ。


「現物は初めてだ。撮っとこ」


 カシャ!


 記念撮影も済ませておく。

 昔はありふれた植物だったが、地球温暖化が進んで栽培適地が無くなり、今は幻の植物になっている。


「待てよ……これならスイーツの効果が爆上がりじゃね?」


 VRMMO(イートインワールド)では、料理に合う飲み物を一緒に摂取すると、パラメータは跳ね上がる。

 コーヒーチェリーから作れる【珈琲】という飲み物は、一昔前では甘いものと一緒に飲む定番の飲み物だったと聞く。


「よっし、試すぞ」


 ネットの文献を見つつ、珈琲を作ることにした。

 選別、乾燥、焙煎まで済ませ、ここでちょっと手が止まる。

 粉状にするミルという機材は手元に無い。

 仕方が無いので、持っているすり鉢で頑張ることにした。


「この、この……」


 すり潰すのには手こずったけれど、暫くすると香しい匂いが漂い出す。

 これはとても期待できる。

 ドリップという最終工程へ辿り着き、それを眺めていると、ふと視線を感じた。


(敵? この銀色のシルエットは……)


 浮かれすぎて接近に気付かなかった。

 これがもしタヌキャットだったら、ソロで戦うにはかなり厳しい。

 俺は剣を鞘から抜きつつ、警戒を強めた。


「わわっ! 待つニャ~。オラは敵じゃないのニャ~」


 緊迫した空気を霧散させるような軽い口調。

 そこにはケットシーを思わせる二足歩行の猫が居た。

 わたわたとこちらを手で制しながらも、敵ではないアピールを続けている。


「会話が出来るってことはNPCか? 名前は?」


 猫はコテりと首を傾げ、尻尾も力なく垂れ下げた。

 どうもNPCという存在が理解できないようだ。

 まぁ、そんな風にはプログラミングされていないのだろう。

 見た目はスコティッシュフォールドに似ている。

 AIレベルが低いのか、どうにも話が噛み合わないのが気になるところ。


「オラはガシマというのニャ~」

「ふーん、そのガシマはどうしてここに? それと、寝不足なのか?」

「これは生まれつきなんだニャ~」


 半閉じの眠たげな目と垂れ下がった耳。


「気づいたら光に包まれてこの世界にいたのニャ~。オラの住んでいた所と全然、違うんだニャ~」


 のんびり口調で何やら妄想も言う。

 人語を解するタヌキャットは聞いたことがないが、ここは油断できない。

 デスペナで今日の稼ぎがパーになってしまうのは避けたいところ。

 不意打ちを仕掛けて倒すことも視野に入れ、そーっと、剣の柄に手を伸ばした。


「な、何してるのニャ~? オラは敵じゃないのニャ~! 一先ず落ち着くニャ」


 全身の毛を逆立てたまま、わたわたと弁明を始めるガシマ。

 必死で焦る様子に、なんだかこっちの力が抜けた。


「ふっ……アハハハ! 変なやつだなお前。わかったよ、信じる。で、どうしてここに居たか教えてくれるかい?」

「だから、さっきも言ったんだニャ~。光に……」


 あくまで設定を貫くらしい。

 NPCまとめサイトの記憶を引っ張り出しても、他に例がない。


「ガシマってさ、いわゆるレアNPCなのか?」

「なんニャ~それ?」

「ああ、いいいい。みなまでゆうな。俺だけは分かっているからさ!」


 未発見のレアNPCなら、凄くツイているかも知れない。

 俺はさっそく色々と情報を聞き出そうとした。


「ニャ~? そもそもイートインワールドってなんだニャ~?」

「は? いくらなんでも無知な設定にしすぎだろ?」

「オラ、住むとこも、お金も持ってないんだニャ~」


 今までどうやって暮らしていたのだろうか。


「でさ、ここはどうやって見つけたんだ?」

「コーヒーチェリーの香りを辿っていたらここについたんだニャ~」


 別の世界では喫茶店の店長をしていたと語るガシマ。

 つくづく変な設定に凝っているレアNPCだ。


「じゃあ、このドリップ珈琲を飲む?」


 ガシマは尻尾を項垂れさせながら首を振る。

 どうやら俺の淹れた珈琲はお気に召さないようだ。


「オラが最初から作るニャ~」


 そんな訳で急遽、俺とガシマの珈琲対決が始まったのだが、店長だったと言うだけあって、専門的な機材を全て取り揃えていた。


「では、飲み比べと行こうか」

「ニャ~。オラの珈琲の方が絶対うまいはずニャ~」


 いざ、実食。



───用語説明:

【《スライムの森》エリア】

 初心者が通う狩場で難易度は低い。数々の隠しエリアが存在しているが、知っている者が公表しないため謎に包まれている。


【シルバースライム】

 レアモンスター。サイズはジャンガリアンハムスターと同程度。

 経験値効率の良い砂糖菓子(アラザン)の素材になり、高額で取引される。


【タヌキャット】

 凶悪なモンスター。俊敏なマジックキャスターで、見た目の愛らしさとは相反する凶暴さに、多くのプレイヤーが泣かされている。


【ステータス:MP(マジックポイント)

 魔力残量。魔法のレジストにも影響する。

 魔法を受けても一定値消耗し、残量によってダメージ軽減率やレジスト率が変わるため多い方が良いとされる。


◆かぐつち・マナぱ様からファンアートを頂きました!

挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
あの青い猫さんですか? あれ?白?? まさかのコラボ?いや、ドラ探からお引っ越し猫さんでしたね。 しかし、どうやってゲームの世界に!? そういえば。Σ(-∀-;) このゲームで、ご飯たべたら現実世界…
「食事による多幸感でレベルアップ」←イートインワールドのこの設定は、本当に良いですね。キャラも幸せで、読者も幸せです(^^)/  そして、ガシマ店長が登場!  ガシマ店長って、御作の『ドラ探』のキャ…
シルバースライムはメタルスライムみたいな感じですかね〜♪確かに経験値も多そう(^^) ついに、ガシマ店長登場♪ なぜいきなり登場したのかはわからないんですね\(^o^)/ このさくらんぼは珈琲の元に…
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