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ヤバい奴が異世界からやってきました  作者: Puney Loran Seapon
第7章 新潟市西区~中央区
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第61話『再会』

 本物だ。


 相模原優は、いきなり現れた束音雅を見てそう確信を持つ。


 今までどこに行っていたのか等、疑問は多々あるが……それでも、生死が不明だった親友が生きていたことに、戦闘中なのにも関わらず目頭が熱くなってしまう優。


 雅はベルセルク種レイパーに視線を向けつつも、優と愛理へとサムズアップをしてから、剣銃両用アーツ『百花繚乱』を構える。


 雅のタックルを受けて吹っ飛ばされたレイパーは、威嚇するような唸り声を上げつつも立ち上がった瞬間――お返しと言わんばかりに、雅へと突進していく。


 咄嗟に腰を落としてレイパーの攻撃を受けようとするも、敵のあまりのスピードに、反応は僅かに遅れてしまった雅。


 正面からぶつかり合うアーツとレイパーだが、衝撃を抑えきれずに雅は吹っ飛ばされてしまう。尻餅をつくことこそ無かったものの、両腕は上に上がり、後方に数歩よろめく。


 そんな彼女の腹部へと迫る、レイパーの爪。


「――っ!」


 しかし、その攻撃が雅に直撃することは無かった。


 優の放った矢型のエネルギー弾が、レイパーの左目を貫いたのだ。


「さがみんっ?」

「みーちゃんには手を出させない……!」


 そして愛理が雅の後方から飛び出て、怯んだレイパーへと斬りかかる。


「愛理ちゃんっ?」

「こんなところで……負けて堪るものか!」


 毛と一緒に皮膚が切れ、血が飛び出る。


 悲鳴のような咆哮と共に、レイパーは大きく後ろへと飛び退き、雅達と距離をとった。


 抉られた眼や斬り裂かれた皮膚はすぐに再生するが、レイパーの三人を見る目が明らかに変わる。


 獲物ではなく、敵を見るような視線。殺気も強まり、雅達の背筋を震わせた。


「さがみん、愛理ちゃん……!」

「大丈夫。まだ戦える……!」

「私もいけるぞ!」


 雅と愛理はアーツを構えつつ、ジリジリとレイパーへと近づきはじめる。


 優は弦を強く引き絞り、矢型のエネルギー弾を生成。いつでも放てる状態だ。


 雅と愛理、レイパーが地面を蹴るのは同時。


 雅が身を低くし、レイパーの腹部を狙って百花繚乱を横に一閃。


 愛理が朧月下を振り上げ、レイパーの頭部へと縦に一閃。


 二人の同時攻撃を、レイパーは両腕の爪で受け止める。


 攻撃を弾かれる二人だが、間髪入れずに別の方向からそれぞれ刃を振るう。


 それさえ、再び爪で防ぐレイパーだが、二人はまだ諦めない。


 別々の角度から同時に、時にはタイミングをずらし、気力を振り絞るように声を張り上げながら攻め続ける。


 そして二人の動きの隙を付き、反撃に転じるためにレイパーが一歩踏み込んだ瞬間、優がエネルギー弾を放つ。


 直線的な軌道で飛んでいったその攻撃が、レイパーの首へと命中。その痛みで、レイパーは僅かに動きを鈍らせる。


 その隙に雅の振った剣が、レイパーの胸元に大きな傷をつけた。


 さらに追撃のように振るわれた愛理の刀が、レイパーの右足にも傷を負わせる。


 膝をつき、呻くレイパーに止めを刺さんと、雅と愛理のアーツが同時に頭上から襲いかかった……のだが。


 鬱陶しい虫を振り払うように、レイパーは爪を振って二人の体を吹っ飛ばす。


 強く叩き付けられた爪に苦悶の声を上げる雅と愛理。いとも簡単に吹っ飛ばされた彼女達は、並ぶようにして地面に背中から叩きつけられる。


「ば……化け物めぇ……! うっ……」


 起き上がろうとした愛理だが、爪の攻撃を受けた所に激痛が走り、上体を起こすことすら出来ない。


「ぐっ……」


 雅も同じような状態だが、愛理程ダメージを受けたわけでは無い。


 百花繚乱の柄を曲げてライフルモードにすると、倒れたまま狙いを定め、レイパーへと桃色のエネルギー弾を放つ。


 最初の三発は外れたものの、四発目はレイパーの顔面に直撃。


 だが怯む様子は無い。


「二人ともっ!」


 優が青い顔で雅達へと声を掛け、レイパーに向かってエネルギー弾を放ちながら二人の側へと駆け寄る。


 雅と優の遠距離攻撃が雨のようにレイパーを襲うが、ダメージを受けた様子は無い。


 腕でエネルギー弾を受けながら、あるいは被弾しながらも立ち上がり、怒り狂ったように雄叫びを上げ、腰を落とす。


 タックルを仕掛けてくる構えだ。


 ヤバい――そう思うと同時に、雅の頭に電流が走る。


「さがみんっ! あれ!」

「――っ!」


 何かに気がついたように叫ぶ雅で、彼女の言いたいことが伝わった優。


 体は既に悲鳴を上げているが、気合と根性と言う名の鞭を打ち、雅は立ち上がる。


 素早く雅が百花繚乱の柄を戻してブレードモードにすると同時に、優が霞の弦を引く。


 それを見て愛理が二人の行動の意味を悟ると同時に、レイパーが三人目掛けて地面を蹴った。


 雅の百花繚乱が、優の霞へと番えられる。


 雅のアーツに備わっている『合体』機能。


 同じメーカーの、他のアーツと組み合わせることが出来るこの機能。異世界ではついぞ使う機会が無かったのだが――今なら使える。


 エネルギーが番えられた百花繚乱へと集まり、白い光を纏うが……攻撃可能になるまで、僅かにその充填速度が間に合わない。このままでは二人が攻撃するより先に、レイパーの爪が二人を抉ってしまう。


 しかしその時、愛理が動いた。


 立ち上がれなくとも腕は動かせる愛理は、レイパー目掛けて自らのアーツを放り投げたのだ。


 猛スピードで近づくレイパーは、投げられた朧月下に対し、腕を振るって爪でそれを明後日の方向へと弾き飛ばす。


 だがそれにより一瞬の隙が出来、百花繚乱へのエネルギーの充填が終わる。


 レイパーが腕を伸ばし、爪が二人の顔面まであと数センチというところまで迫るが、それより霞の弦から二人の指が離れる方が速かった。


 レイパーへと、ほぼほぼゼロ距離で放たれる百花繚乱。


 眩い光を放つ百花繚乱が、レイパーの胴体を貫いて、そのままレイパーごと直線的に飛んでいく。


 ベルセルク種レイパーは雅達へと腕を伸ばしたまま狂ったように声を上げるも、そのまま空中で爆発四散したのだった。



 ***



 ベルセルク種レイパーが爆発四散して、一呼吸置いた後。


 優が、雅に抱きついた。


「わわっ? さがみんっ?」

「みーちゃん、ちょっとジタバタしないで」

「あ、いえっ? でも私今、汗が――」

「うっさい」


 汗の臭いなど気になるはずも無い。


 絶対に生きているのだと確信していても、それでもやはりこうして生きている姿を見れば、色々と込み上げてくる。


 優の目からポロポロと涙が零れ落ち、それに気がついた雅も、優を抱き締め返す。


「……束音、色々聞きたいことはあるが……まずは……無事で良かった……本当に良かった」


 愛理も涙ぐんでおり、雅は二人に随分と心配を掛けていたことに改めて気づかされる。


 異世界に行っている間の優達の行動を直接見たわけではないが、何となく、ずっと自分を探し回っていたのでは無いかと思う雅。


「二人とも……ごめんなさい」

「いい。別にみーちゃんが悪いわけじゃないから……」


 もしかしたらずっと会えないかもしれないと思うこともあった。


 でも、また会えたのだ。


 それだけで、優と愛理は充分だった。

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