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ヤバい奴が異世界からやってきました  作者: Puney Loran Seapon
第7章 新潟市西区~中央区
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第56話『異形』

 午後五時四十三分。


 新潟市中央区にある、海岸へと続く通りの途中。クロマツ等の飛砂防備保健保安林を横切るように通る、アスファルトで舗装された道路にて。


 そこを歩く五人の少女達――相模原優、篠田愛理、桔梗院希羅々、権志愛、橘真衣華の五人は、放課後、海岸沿いにあるカフェでお茶でもしようと、そこへ向かっている最中であった。


 そんな彼女達の背後から、三つの影が迫る。


「――っ!」


 僅かな殺気が近づいてくることに気が付いた五人は、咄嗟にその場を飛び退き、襲来した敵へと視線を向け、顔を強張らせる。


 そこにいたのは、不自然なまでに不気味な姿をした人型のレイパー。


 まるでボディビルダーのような筋肉の鎧を持つ、真っ黒い体の、顔が烏のレイパー。


 黒猫の顔をしているのに、尻尾が無く、やや筋肉質の真っ黒な細身のレイパー。


 こおろぎのような翅を持っているのに、顔は歪な形をしたキリギリスのようなフォルムの、全身焦げ茶色のレイパー。


 いずれも何と分類して良いか分からない形状をしており、今の襲撃を躱した優達を順番に見るように目玉をギョロつかせる。


「こいつはっ!」

「前に戦ったあいつっ?」

「なんダッ? 知っているのカッ?」


 志愛は制服のポッケからペンを取り出しながら聞く。


「希羅々! あの烏頭の奴って前に写真を送ってもらった――」

「ええ! あのレイパーでしてよ!」


 三体のレイパーの内、二体のレイパーには見覚えがあった。


 一体は、以前愛理が雅が消えたビルの屋上で手掛かりを探していた時に見つけたレイパー。実物を見て、こいつがあのレイパーだとはっきりと確信を持つ愛理。


 一体は、五泉市の早出川(はやいでかわ)近くにある廃倉庫の裏で『StylishArts』の女性社員を殺した、あのレイパー。あの時は優と希羅々を見て一目散に逃げたあのレイパーが、今度は自分から襲いかかってきたのだ。


 もう一体、こおろぎの翅を持った歪なキリギリス顔のレイパーには、誰も見覚えが無い。初見故に、何をしてくるか分からない恐怖がある。


 優達はレイパーから視線を逸らさず、ゆっくりと敵の周囲を回るように動きながら、右手に嵌った指輪を光らせる。


 瞬間、彼女達の手に握られる、メカメカしい見た目をしたそれぞれのアーツ。


 優が持つのは、全長一・五メートル程の弓型アーツ『霞』。


 愛理が構えるのは、刃渡り一メートル程の刀型アーツ『朧月下』。


 志愛の持つペンが姿を変え、全長二メートル程の銀色の棍になる。口を開いた虎の頭に、紫水晶が咥えられたその武器は、棍型アーツ『跳烙印・躍櫛』。


 希羅々が振るのは、全長七十センチ程の金色のレイピア型アーツ『シュヴァリカ・フルーレ』。


 そして真衣華が握っているのは、紅色を基調とした全長一・三メートル程の大きさの、半円のような形状の片手斧型アーツ『フォートラクス・ヴァーミリア』。半円状のフォルムの外側に孤を描くように刃がついており、まるで鉄の塊のような見た目で見るからに頑丈そうかつ重そうだが、強度は兎も角重量は一キログラム程度とそこまで重くない。


 五人はそれぞれのアーツを手に、三体のレイパーと対峙する。


 三体のレイパーはやや腰を落として片腕を上げ、拳を握る。


 優が弦を引くと、白い矢型のエネルギー弾が番われるが、まだ放たない。


 他の面々も攻撃を仕掛けるのをまだ躊躇っている様子。それはレイパーも同様である。


 誰かが攻撃をすれば、それが合図となって激しい戦闘が始まると予感し、それ故慎重になっているのだ。


 ジリジリと張り詰めていく空気。


 しかしそんな緊張感も、長くは持たない。


 戦闘体勢をとり、ぴったり五秒後、ついに優が矢型エネルギー弾を放つ。


 人型の猫の頭を持つレイパーへ真っ直ぐに飛んでいくエネルギー弾は、アーツの名の通り、その姿を霞ませる。


 よく見なければ攻撃を視認することすら困難な一撃。


 見事レイパーの腹部に命中するが、レイパーの体が頑丈だからだろうか。当たった部分からは煙が上がるものの、傷は無い。


 二発目を放とうと弦を引くも、攻撃が止まり僅かに出来た隙を突いて黒猫の頭をしたレイパーが優へと近づこうと地面を蹴る。


 だがレイパーと優との間に愛理が入り、アーツでレイパーの突進を受け止める――が、その衝撃で吹っ飛ばされてしまう。


「愛理!」

「くっ! 相模原! こっちだ!」


 ここでは場所が悪いと判断した愛理は、とりあえずどこか広い場所に向かおうと優に声を掛けて走り出す。


 そして優と黒猫の頭をしたレイパーが、その後をついて行くのだった。



 ***



 希羅々、志愛、真衣華も、他の二体のレイパーと戦っている。


 希羅々は烏の頭をしたレイパーと。志愛、真衣華はキリギリスの頭をしたレイパーと交戦中だ。


 レイパーの拳や蹴りの乱打を避けたりアーツで防いだりしつつ、隙を見て彼女達からも攻撃を繰り出すも、レイパーは怯むことなく攻撃を続ける。


 そんな中、愛理と優が戦いやすい場所へと向かうのを見て、彼女達も同じ行動をとることに決めた。


「真衣華! あなたは権さんと一緒に戦いなさい!」

「希羅々っ?」

「一人で戦う気カッ?」


 希羅々の言葉に驚く真衣華と志愛。


 希羅々は烏頭のレイパーの喉にレイピアで一発突いて怯ませた後、レイパーの体を蹴り飛ばして距離を離す。


 そして走り出しながら、二人に向かって口を開く。


「こっちは何とか致しますわ! (わたくし)が心配なら、そいつをさっさと倒して助太刀しに来なさい!」


 言いながらも、その助太刀を待つ気は無い希羅々。彼女は一人で、烏頭のレイパーを倒す気でいた。


 逃げ出す希羅々の後を、烏顔のレイパーが追って行く。


「全くあのお嬢様は……! 分かったよ! 志愛ちゃん、こっち!」

「お、おイ! いいのカッ?」

「ああなったら、希羅々は止まりやしないからねっ!」

「……クッ! 仕方なイ!」


 志愛はキリギリス頭のレイパーの膝裏に力を込めた打撃を打ち込むと、レイパーの動きが僅かに鈍る。その瞬間を狙い、真衣華が体を捻りながら真横に斧を振り、レイパーの体を吹っ飛ばす。


 そして二人も走り出し、その後をキリギリス顔のレイパーが追いかけるのだった。

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