表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤバい奴が異世界からやってきました  作者: Puney Loran Seapon
第52章 ラージ級ランド種レイパー体内
607/669

第52章閑話

 一方、ここはラージ級ランド種レイパーの外。


 いくつものドローンが、巨大な鳥型のレイパー……ラージ級シムルグ種レイパーと交戦していた。その中には、ドーム状の光のバリアに包まれた、ラティア達が乗ったドローンと、魔法の絨毯にのったカリッサとノルンの姿もある。


「きゃあっ!」


 シムルグ種レイパーが広げた大きな翼。そこに付いた二つの目玉から放たれたビームが、ドーム状の光のバリアに直撃。周りでは、何機かのドローンが煙を上げて墜落していた。


 バリアに阻まれていても、衝撃までは完全に防ぎきれない。ラティア達の乗るドローンと、魔法の絨毯に乗ったカリッサ、ノルンが悲鳴を上げる。


 さらに、


「み、皆! 来るわよ!」


 ビームを撃ちながら接近してきたレイパー。衝撃で隙を晒していたドローン目掛けて、大きな爪を振りかざす。――この一撃で、ドローンと魔法の絨毯を、バリアごと海へと墜落させるつもりだ。


「うっ……み、皆、下がって……!」


 ラティアが倒れながらも、小手型アーツ『マグナ・エンプレス』を嵌めた左手の平を、レイパーへと向ける。


 しかし、


「駄目っすよラティアちゃん!」


 伊織がラティアの前に割り込み、出入口から身を乗り出して右腕に装着された銀色の箱……ランチャー型アーツ『バースト・エデン』の発射口を付き出して、レイパーへと向ける。


 瞬間、一斉発射される、二十発もの小型ミサイル。それが、次々とレイパーの体に命中し、爆撃と共に押し返していく。


「ラティアちゃん! 君の仕事は、こいつの相手じゃねーっす!」

「えっ?」


 伊織がそう言って、ラティアの背後……反対側の出入口を指差す。


 思わずラティアがそっちを見れば、そこにはラージ級シムルグ種レイパーよりももっと巨大な化け物の姿がある。暗い中でもよく目立つ、その白い怪物は……ラージ級ランド種レイパー。


「その通りだぞ、ラティアさん!」


 優一も、必死でドローンを運転しながらそう叫ぶ。


「たくさんのドローンが回りを囲む中、奴は明らかに、このドローンを狙っている! 間違いない、奴の狙いはラティアさん、君だ! あのレイパーの(バリア)を打ち破れる力を持っている君を、こいつらが疎ましく思っているんだ!」

「そうっす! こいつはうちらが何とかするっすから、ラティアちゃんは気にせず、奴の(バリア)を破壊して欲しいっすよ! じゃねーと、あいつを倒せねー!」

「は、はいっ!」


 ラティアは、青い顔でそう頷いて、歯を喰いしばる。


 ラージ級ランド種レイパーの上空には、たくさんのドローンがいる。雅達のように吸い込まれなかった大和撫子やバスターが、徐々に体勢を整えていた。もう何時でも、攻撃が出来る状況なのだろう。陸地でも、第二討伐部隊が続々と集まっている。


 だが彼女達は、ラティアがラージ級ランド種レイパーの(バリア)を破壊するまで、何も出来ない。そしてラージ級ランド種レイパーとて、座礁したまま大人しくしているわけではない。可能な限りもがき、反撃を試みている。今はまだ被害は無いだろうが、いずれ取返しの付かないことになるのは明らか。


 雅を始めとした、吸い込まれた者達の救出だって、ラティアの手に掛かっていると言っても過言ではない。


 分かってはいるつもりだった。……だが今、改めて自分自身の重要さを思い知らされるラティア。


 グッと腕を持ち上げ、手の平をランド種の方へと向ける。その腕は重い。


 マグナ・エンプレス自体の重さだけではなく、降りかかる重圧を、ラティアはひしひしと感じていた。


 それでも――


「……皆……お願いっ!」


 ラティアの手から放たれた衝撃波。それが、ラージ級ランド種レイパーへと向かっていく――。




 ***




 ラティアが(バリア)を破壊した、丁度その頃。


 ランド種体内の、とある砂漠エリア。


「ふぅ……何とか窮地は脱したかな?」

「うん。もうこの辺りには、敵はいないはずだ」


 二人の大和撫子が、額の汗を拭いながらそんな会話をしていた。地面の熱がダイレクトに反射され、まるで風邪を引いた時のような朦朧感に襲われていた。そんな中、三体近くのレイパーと交戦し、長期戦の末、辛うじて全部倒したのだ。


冬歌(とうか)、どうする? 私達、あそこに向かう予定だったけど……このまま進む?」


 大和撫子の一人がそう言いながら、二キロ程先に見える大きな建物を見つめて眉を寄せる。あれは、雅達が目的地にしていた宮殿だ。この二人も、同じところを目指していた。


 しかし彼女の問いに、冬歌と呼ばれたもう一人の大和撫子が渋い顔になる。彼女の視線は、宮殿から外れて、その西の方に向けられていた。


「う、うーん……。遠回りになるけど、向こうの草原が広がる道に向かおうよ。ちょっと休みたいし、木陰でもあればいいんだけど……ん?」


 そんな話をしていると、空を飛ぶ一匹の鳥が目に飛び込んでくる。


 多分レイパーか。それならやはり、別の道を……と思っていたのだが、どこか違和感がある。


 不審に思った冬歌が、ULフォンの望遠鏡アプリを起動させ、その鳥を拡大して見ると――


「……ヤバい。あいつ、誰かを抱えている!」

「あれ、この人……あぁっ! あの時のっ!」


 鷹のレイパーに捕まれている、桃色のボブカットの少女――束音雅を見ると、二人は血相を変えて、そちらへと向かいだすのだった。

評価や感想、いいねやブックマーク等、よろしくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ