第462話『連携』
「おい! ミヤビィッ!」
「ミスファルト! 避けて!」
ミドル級鷹種レイパーに捕まった雅。遠く過ぎていくその姿を追うようにセリスティアが叫ぶが、同時に皇奈の警告も発せられる。
瞬間、自身に向けられた殺気を感じたセリスティア。そっちを見ると、紫の鱗に覆われた尻尾が迫っていた。それを「うぉっ?」と声を上げながらも躱せたのは、本当に運が良かったのだろう。
「ちぃっ! こんな時に新手かよ!」
大きく跳び退いたセリスティアの視線の先にいたのは、鱗に覆われた人型のレイパー。
異世界には、ドラゴリザードという蜥蜴がいる。硬い鱗により外敵から身を守る、紫色の蜥蜴だ。鱗は固いだけでなく、ヤスリのようにもなっており、強くこすると岩ですら削れてしまう。……このレイパーの見た目は、そんな生物の特徴をもっていた。
分類は『人型種ドラゴリザード科レイパー』。
「ミスファルト! 尻尾に気を付けて!」
「あぁっ? ……っ?」
言われて気付く。人型種ドラゴリザード科レイパーが振り回した尻尾が突き刺さったところの地面から煙が上がり、クレーターが出来ていることに。
ドラゴリザードの尻尾は、鱗に覆われていることを除けば普通の尻尾。だがこいつの尻尾の先端は、よく見ると蠍の尻尾のような形状もしている。そこから毒を出して、地面を溶かしたのだ。
「こいつ、蠍の特徴も持ってんのかよ! ――キララ! マイカ! 散れ!」
近くで、別のレイパー……人型種ジャッカル科レイパーと交戦していた希羅々。そして負傷して膝を付いていた真衣華。そんな二人に、人型種ドラゴリザード科レイパーは尻尾で攻撃をしに行っていた。
セリスティアが声を掛けたところで、もう一体のレイパー相手に苦戦させられている希羅々と真衣華に、新手のレイパーに対処するのは不可能だ。このままでは、尻尾の餌食になってしまう。
「させない!」
皇奈が左腕に装備されたガドリング型アーツ『GottaWin』を乱射してそれを牽制。皇奈は弾丸をレイパーに直撃させるが、硬い鱗はそれを通さない。寧ろ苛立ったレイパーが、弾丸を浴びながら強引に突っ込んでくるのを見て、皇奈の顔が険しさを増す。
チラリと、離れたところで地べたに伏せているもう一体のレイパーの方を見る皇奈。白い蛾、バグモス種レイパーだ。今、皇奈がスキル『アイザックの勅命』を使って重力を強め、大地に押さえつけている。
が、『アイザックの勅命』は、使っている間もかなりの集中力を要するスキルだ。人型種ドラゴリザード種レイパーを相手にしながら、バグモス種レイパーを封じるのは流石に厳しい。
「ミスファルト! ミス桔梗院とミス橘と一緒に、そこのジャッカルと蛾の相手をして! ミーはこいつを引き受ける!」
「くっ……分かった!」
セリスティアが返事をしたのを聞くと、皇奈は一旦バグモス種レイパーに掛けていたスキルを解き、人型種ドラゴリザード科レイパーへと全神経を向ける。
重力から解放され、再び舞い上がるバグモス種レイパー。だがその時にはもう、セリスティアは動いていた。
「もらった!」
先制攻撃――爪型アーツ『アングリウス』を向け、勢いよくバグモス種レイパーに突っ込む彼女。超重力で長いこと動きを封じられていたこのレイパーは、まだ本調子ではないはず。動きが鈍い内に、一気にカタを付けるつもりだ。
だが、その瞬間。
「っ?」
自由に飛べるまで回復していなくても、レイパーとて無抵抗ではない。バグモス種レイパーの吐いた糸が、セリスティアの体に巻き付く。腕と胴体を完璧に撒かれ、全く身動きが取れない。
そしてレイパーがその場で回転し、セリスティアの体に横方向から急激なGが掛かったと思った刹那、気付けばセリスティアは振り回されていた。
「セリスティアさんっ?」
「今助けますわ!」
「――ま、待て!」
人型種ジャッカル科レイパーと交戦しながらも、ピンチのセリスティアに駆け寄ろうとする希羅々と真衣華。そんな二人に、彼女は制止の声を掛ける。
無茶苦茶に振り回される自分に不用意に近づいたら、手酷い衝突事故を起こされるのは目に見えていた……というのもある。
だがセリスティアが二人を止めた一番の理由は、それではない。
無茶苦茶に振り回されるセリスティアの眼と、真衣華と希羅々の視線が交差し、二人は目を見開いた。彼女は訴えていたのだ。「俺が合図するまで待て」……と。
冷や汗を流す二人。セリスティアの意図は分かったが、「本当にやるつもりか」と思わざるを得ない。
それでも――
「真衣華! そちらは頼みましたわ!」
辺りの木の幹に叩きつけられるセリスティアを見て険しい顔をしながらも、希羅々は後ろを振り返る。そこには、今まで彼女達が戦っていた相手……人型種ジャッカル科レイパーがいた。
希羅々は信じる。頼れる自分達の仲間を。こうなれば、信じるしかないのだ。真衣華も同じ気持ちだ。だから歯を喰いしばって、怪我をした体を奮い立たせる。
一気に接近し、蹴りを放ってくるレイパー。希羅々はレイピア型アーツ『シュヴァリカ・フルーレ』で受け流す。レイパーの攻撃はまだ終わらない。ソバットのような蹴りを数発放ち、それをさらに希羅々が凌げば、素早く後ろに回って爪で攻撃。
希羅々がそれをアーツで弾いて防いだ瞬間、レイパーの眼が、勝機を見出してギラリと光る。今、彼女の胴体はがら空きだ。鳩尾目掛け、突き刺すイメージで足を振るう。
が――
「ぃっ!」
「ッ?」
防御用アーツ『命の護り手』……光に包まれた希羅々が、レイパーの攻撃を真正面から受け止める。ダメージをゼロには出来ず、希羅々は痛みと息苦しさに顔を顰めたものの、本来なら致命傷であったはずの一撃に耐えていた。
驚愕するレイパー。瞬間、希羅々の右手に握られていたレイピアが左手へと移る。希羅々はそのまま強引に一歩前に踏み込んで、レイパーのボディに反撃の突きを叩き込んで吹っ飛ばした。
「ブツゥ……! トモトモンウト!」
突かれたところを手で押さえ、呻くレイパー。指の隙間から零れる血は止まらないが、まだ息はある。
人型種ジャッカル科レイパーが、また希羅々の方へと飛び掛かろうとした、丁度その時。
「うぉぉぉらぁぁぁあっ!」
「ッ!」
吠え声がレイパーの鼓膜を震わせ、ほぼ同時に背中に走る、強い衝撃。
霞む視界の中、レイパーは信じられないものを見る。――自分の胴体が、大きく抉れた、その光景だった。そしてそれを見ていたのは、空からだった。
……自分の体が真っ二つに千切れているというのを知ったのは、その時か。
セリスティアが、レイパーの背後から強襲したのだ。彼女を縛る糸なら、もう切れて宙を舞っていた。
バグモス種レイパーに捕らわれていたセリスティアを助けたのは、真衣華。片手斧型アーツ『フォートラクス・ヴァーミリア』で、タイミングを見計らって糸を斬ったのである。
これこそが、セリスティアの狙い。バグモス種に振り回されるのを逆に利用して超加速し、人型種ジャッカル科レイパーを攻撃する、という策。最初に希羅々と真衣華を止めたのは、攻撃のタイミングを見計らうためだったのだ。
最も、それを人型種ジャッカル科レイパーが理解することはない。――その前に、爆発したのだから。
「よし! 残るは二体! ――っ?」
「あいつ……っ、またこの小賢しい糸を……っ!」
「し、しまった!」
一体撃破しても、休む間はない。
希羅々、セリスティア、真衣華の体を、バグモス種レイパーが糸でグルグル巻きにする。一瞬の拘束、恐ろしい早業だ。しかも腕と体をきっちり撒いて拘束し、身動きを取ることを許さない。
バグモス種レイパーは彼女らを糸でぶんまわす。希羅々達は悲鳴を上げる意外、碌に抵抗も出来やしない。
バグモス種レイパーは三人を振り回す速度を上げながら、その視線を横へと逸らす。
皇奈と人型種ドラゴリザード科が交戦している、そちらの方だ。皇奈はブーツ型アーツ『BooT⇄Star』で激しく動き回りながら、ガドリングを乱射していた。人型種ドラゴリザード科レイパーの鱗が弾丸を弾いているが、皇奈が超高速かつちょこまかと動き回っているせいで、レイパー側も皇奈に攻撃を当てられていない。戦況は膠着している。
そんなレイパーと皇奈の間に、タイミングを見計らって、バグモス種レイパーは三人を投げ飛ばした。三人がガドリングの射線上に入れば、皇奈もフレンドリファイアを嫌い、攻撃を止めるはず。そう考えたから。
現に、セリスティア達も顔を引き攣らせている。攻撃を止めるのが少しでも遅れれば、被弾は避けられない。特に希羅々は、もう命の護り手を使ってしまった後だ。人型種ドラゴリザード科とて、皇奈が攻撃を止める瞬間を見逃すまいと、神経をそちらへと集中しだした。
……だが、二体のレイパー、そして希羅々達三人は、皇奈のことを舐めていた。
「ぉぉっ?」
「ひっ?」
「きゃあっ?」
皇奈は、攻撃を止めること等、しなかった。
希羅々達の体をギリギリ躱すように通過する弾丸の嵐。ガドリングを巧みに動かし、彼女達の体に一発たりとも当てぬ神業で、皇奈はレイパーに攻撃を続けていたのだ。あまりにも際過ぎて、セリスティア達も堪らず悲鳴を上げる程だが。
これはアーツの性能だの、スキル等の特殊な力だの、そんな類ではなく、皇奈本人の技術によるもの。
皇奈が横に動くまでの一瞬。だが攻撃の手は、一切の緩みがなかった。
攻撃が止む瞬間を待っていた人型種ドラゴリザード科レイパーは、この瞬間に皇奈の動きについていけなくなった。相変わらず弾丸は鱗が守ってくれているが、皇奈の姿は視界から消えている。
だから気付けなかった。――皇奈が、背後から接近していたことに。
バグモス種レイパーが、皇奈と人型種ドラゴリザード科レイパーの間に三人を投げてきたのは、皇奈にとっても好都合だったのだ。――三人が上手く敵の視界を塞いでくれたのだから。
「尻尾のあるレイパーの弱所は、知り尽くしているわ!」
ガドリングが消え、右腕に出現するは巨大な杭打機。アーツ『HollyHole』。皇奈はその先端を、既にレイパーの尻尾……その付け根に向けていた。
そして発射される杭。同時に皇奈の二つ目のスキルも発動する。
それは、『ウィーク・ピアース』。敵の弱所に攻撃した際、その威力を倍以上にするスキルだ。それにより威力が上がった攻撃が、レイパーの体に直撃する。
刹那、レイパーが悲鳴を上げ、体を覆っていた鱗と鱗の隙間に無数の亀裂が走る。鱗は確かに頑丈だが、それは体にしっかり張り付いていればの話。鱗同士の隙間は弱く、特に攻撃に使うために頻繁に動かす尻尾部分は、強度にも限界がある。そこから衝撃を走らせることで、鱗全体をガタガタにしてやったのである。
「ミス桔梗院! ミス橘! 後は任せたわ!」
皇奈が、右腕のパイルバンカーを収納して左腕にガドリングを流れるようなスムーズな動きで装着する。
彼女の目は、もう人型種ドラゴリザード科からバグモス種へと変わっていた。鱗を攻略しさえすれば、このレイパーの脅威は大したものではない。
走り出す希羅々と真衣華。皇奈に向かって糸を吐くバグモス種。そしてその糸を自らの体で受けて皇奈を守るセリスティア。
四人の動きが、上手く噛み合う。
希羅々がレイピアによる突きを放つと、それが鱗同士の隙間に入り、直後レイパーの体から鱗が剥がれ落ちる。露わになった柔い体に、真衣華がフォートラクス・ヴァーミリアの斬撃を、何度も何度も叩き込み、人型種ドラゴリザード科レイパーを一気に爆発四散させた。
皇奈のガドリングがバグモス種の全身に命中。一発一発はたいしたことなくとも、弾丸を何発も受ければ、威力も馬鹿にならない。糸を封じられてはバグモス種レイパーに避ける術もなく、小さな風穴を無数に開け、しばらくもしない内に大爆発する。
こうして、三体のレイパーは全滅するのだった。
***
さて、時は三時間以上前に遡り、雅達が目を覚ました頃。そこから遠く離れたところ……地理的に言うと、宮殿を中心として、雅達が南西から向かっており、ここはその逆の北東である。
「ムゥ……まさカ、こんな世界が広がっているとハ……」
柔らかな砂の上で、呆然とそう呟いたのは、ツーサイドアップのツリ目の少女、権志愛。
目の前には、どこまでも広がる青い海があった。燦々と降り注ぐ太陽の光に、志愛は思わず目を細めてしまう。……ここがレイパーの中だと知らなければ、どこかのリゾート地ではないかと思い、はしゃいでいたかもしれない。
辺りを見回す志愛の横では、紫髪ウェーブの娘、ファム・パトリオーラが辟易とした表情を浮かべて口を開く。
「うへぇ……ねえシア、あの海の水って、触ったらどうなると思う?」
「そうだナ……良くて体内に毒が流れル。下手をすれバ、指が溶けル。そんなところじゃないカ?」
「……目が覚めたのが、砂浜の上で良かったよ」
言いながら、海からソローリと距離をとっていくファム。実際のところはどうなのか分からないが、志愛にそんなことを言われては、どうにもゾワっとした恐怖が襲ってきてしまう。
「ねぇ、ここからどうする? なんか通話の魔法が使えないんだけど。……ノルンとかミヤビ達、無事でいるかな?」
「ULフォンも通信が繋がらなイ。……取り敢えズ、分かりやすい場所を目指そウ。あそこニ、何か城っぽい建物があル」
そう言って志愛が後ろを振り向いて指を差した先を見ると、ファムも「あぁ、やっぱ気になる?」と眉を寄せる。――後に雅達が目指すことになる宮殿だ。
根拠は無いが、志愛もファムも、どうにもあの宮殿が気になってしまう。何となくだが、あの中から得体のしれない『大きな力』を感じていた。
「シア一人なら、抱えてあそこまで行けるね」
「待てファム。徒歩で行こウ。……私を抱えたラ、万が一敵に襲われた時、大変じゃないカ?」
「んー……まぁ、それもそうか。じゃあ、ルートだけ確認するね。ちょっと待っていて」
そう言うと、ファムの背中から白い翼、アーツ『シェル・リヴァーティス』が出現させ、勢いよく飛翔した。
――高度十メートル程まで飛んだ時だろうか。
「……ん?」
ファムの視界の端……地上の方で、ピカっと何かが光る。
一体何だろうか――そんなことを、考える暇は無かった。
「――っ!」
気づけば、ファムの右肩に、黒いビームが直撃していた。
声にならない叫び声が上がり、遅れて刺されたような激痛と、火傷したような熱が襲ってくる。ファムの華奢な体に、この一撃はあまりにも攻撃力が高すぎた。
「ファムッ?」
制御を失い、頭から落下しはじめるファムを見て、志愛の顔色から血の気が引く。落ちる彼女の肩からは、血が、さながら細い糸を描くように流れていた。
一体何が起きたのか理解したのは、二発目のビームが再びファムに向かって放たれ、それが足の間を通り抜けた後。
(あ、あいつだ……!)
真っ逆さまの視界の中、ファムは捉える。さっき一瞬見えた、あの光を。……その奥にいる、黒い魔物の姿を。
目測で百メートル先、海岸から離れたところに、大きな岩やヤシの木が無造作に生えているところがあり、そこにそいつはいた。
言うなれば、巨大な目玉とでも言うべきか。羽の生えた黒い球体の中心には、大きな白い単眼がある。紛れもなくレイパーだ。分類は、『イービルアイ種』とでもしようか。
先と今のビームは、このレイパーから放たれたのだ。
ここはラージ級ランド種レイパーの体内。いわばレイパーの巣窟とでも言える場所。そんなところで不用意に目立つことをすれば、狙われるのは明白。ファム、そして志愛はそれを、全く考えていなかった。
「クッ……間に合エ……ッ!」
ファムを助けに行こうと走り出した志愛だが、こちらも魔の手が迫る――。
「おワッ?」
海からヌッと出てきた生き物に、突然襲われる志愛。
慌てて横跳びしてそれを回避した彼女は、現れたレイパーを見る。
巨大な牙を二本生やした、青いセイウチ。全長はギリギリ三メートルを超えており、ミドル級のレイパーだ。分類は『ミドル級セイウチ種』。
「こノ……今、お前に構っている暇は無イッ!」
志愛が怒号を上げると、右手薬指に嵌った指輪が光を放つ。服のポケットからペンを取り出すと、それが巨大な銀棍『跳烙印・躍櫛』へと姿を変えた。
志愛がそれを振るい、ミドル級セイウチ種レイパーの牙を圧し折ろうと打撃を叩き込む。
バキっという、鈍い音が鳴り響き――
「ナッ……? 硬イッ?」
――折れたのは、跳烙印・躍櫛の方だった。
***
「おわわっ!」
肩を撃たれたファム。イービルアイ種レイパーがビームを乱射し始め、体勢を整える余裕も殆ど無い。落ちながらも命の護り手を使い、その間に何とかしようとしたが間に合わず、効果時間が切れてしまった。今は体を動かし、ギリギリ躱しているという状態だ。
幸いなのは、肩に受けたビームが、そこまで威力の高いものではなかったということだろうか。血は出ており、痛みはあるが、腕は動かせる。
最も、落下しているこの状態では、腕が動かせようがあまり意味はないのだが。
「こ、このぉ……!」
ビームの嵐の中、一瞬の隙間を見つけたファム。そこに、シェル・リヴァーティスの羽根を飛ばしていく。これで何とか活路が開けないかという、苦し紛れの一発。
当然、それが上手くレイパーに当たるわけもない。真っ直ぐ飛んでいった羽根は地面に突き刺さるわけもなく、レイパーが少し遅れて放ったビームに焼かれてしまう。
そして――
(ヤバ……!)
そのビームが、そのままファムへと迫る。
無理して攻撃したせいで、今のファムはそれを避けることが出来ない体勢だ。
しかも、狙いが肩や腹部ではなく、顔面。流石にそこに直撃すれば、ただではすまない。
自らの死を幻視して、ファムが涙目になりながら目を閉じた――その時だ。
何者かがファムの前にやって来て、ビームを代わりに受けた気配がした。ファムが目を開けると、そこには、
「危ないのぉっ!」
「っ? ……シャ、シャロンっ?」
山吹色の巨竜、シャロン・ガルディアルがいた。
ここから少し離れたところで、一人目を覚ましたシャロン。状況を把握していたところ、ファムが襲われているところを目撃し、飛んできたというわけである。
「パトリオーラ! 一旦降りるぞ! 的になる!」
竜の皮膚は、イービルアイ種レイパーのビームをものともしない。シャロンはそれを全て体で受け止めファムを守りながら、一気に急降下していく。
「シャロン! あっちにシアがっ!」
「分かっておる!」
アーツが壊れ、ミドル級セイウチ種レイパーに一方的に攻撃されている志愛を見て血相を変えるファム。シャロンは志愛も襲われているところは見ており、ファムに言われるより先に、既にそちらへと向かっていた。
そして、イービルアイ種の放つビームの命中精度が大分落ちてきたところで一部が竜のパーツをした人間態に変化すると、セイウチ種の横から、ファムと一緒になって強烈なキックをお見舞いして吹っ飛ばす。
「シャロンさンッ?」
「二人とも、下がっておれ! ――さぁ、修行の成果を試す時が来たかのぉ!」
爪と尻尾を振り上げ、声を張り上げるシャロン。
ミドル級セイウチ種レイパーが、威嚇するように咆哮を上げるのだった――。
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