第50章幕間
小説家になろうは章が100個までしか作成出来ない仕様とのこと。第50章で最大数まで達してしまいました。嬉しいやら悲しいやら。そのため、いつもは本編と幕間・閑話を分けていましたが、第50章の幕間と閑話は、一旦新たな章分けをしないことにします。
今後どうするかは検討中。第51章の連続投稿開始までには結論を出します。
エピソード選択の画面が見辛いかとは思いますが、何卒ご理解の程、よろしくお願い致します。
→5/25:幕間・閑話の章を削除することに致しました。今後、小説家になろう様の仕様変更で作れる章の最大数が増えたら、また復活させます。
雅達がコートマル鉱石を入手し、シェスタリアに着いた頃。日本の、とある場所。隠れ家的な廃屋にて。
「ふむ、了承した。いや、それで良い。今回に限り、コートマル鉱石は彼女らの手に渡す。代わりのエネルギー限は、既に確保した」
暗い室内に、電話で誰かと話をする男性の声が響く。――黒いスーツを着た、白髪交じりの中年、人工レイパーを創った張本人、久世浩一郎のものだ。
久世の視線の先には、ULフォンによって空中に呼び出されたウィンドウ。そこには、おおよそ五百リットル近くもある大量の琥珀色の液体……ウラで採れる麻薬、サルモコカイアから採取された廃液が映っている。久世が部下に命じて、集めさせたのだ。――手に入れる予定だったコートマル鉱石を、雅達に渡すことになったから。
今日、遺跡で雅達を襲った正体不明の敵。その正体は、人工レイパーだ。今久世が話している相手は、その人物である。人工レイパーは久世の命令を受け、コートマル鉱石を回収する予定だった。
だが、雅やカリッサ達が来ていることを知り、交戦。雅と優の合体アーツの一撃を受け、一旦撤退したところで久世に連絡をしたところ、久世から『見逃せ』という指示が出たのである。命令通りに雅達がコートマル鉱石を回収するのを黙って確認し、それを報告するために今、久世に連絡してきたという訳である。
電話の先で、「渡してしまって、本当に大丈夫なのか」と尋ねられた久世は、やや苛立たし気に「ああ」と返す。
「彼女らの持つ『命の護り手』が強化され、色々な人の手に渡ることは懸念している。だがあのコートマル鉱石を使って、レイパーを輪廻転生させる装置を破壊してくれるのなら、そちらの方が我々には大きなメリットだ。……うむ、ではまた連絡する」
そう言い終わると、久世は通話を切り、深く息を吐く。
彼の視線の先は――日本海。
「そろそろ頃合いか。……さて、精々死に物狂いで、奴を倒して欲しいものだな」
ボソリとそう呟いた言葉は、誰にも届かない――。
***
そして、午後二時を少し過ぎた頃。シェスタリア港にて。
「ミヤビさーん! 皆さーん!」
「久しぶりじゃのぉ」
「あ! ノルンちゃんにシャロンさん!」
雅達の元に、二人の少女がやって来る。一人は前髪が跳ねた、緑髪ロングの女学生ノルン・アプリカッツァ。そしてもう一人は、山吹色のポンパドールをした、見た目は幼女の竜人シャロン・ガルディアルだ。
二人とも、一度新潟で皆と合流するのだ。ラージ級ランド種レイパー……その討伐作戦に参加するために。
「久しぶりです。シャロンさん、ノルンちゃんのお迎え、ありがとうございました」
「なに、大した距離では無い」
「シャロンさん、ドラゴナ島で修行していたんですよね? 仕上がりはどうですか?」
ライナがそう尋ねるが、シャロンは渋い顔で「そう変わらんよ」と肩を竦めてみせる。
だが、雅の中にいるカレンが、何かに気づいたように【おっ】と声を上げる。
【シャロンさん、何か少し仕込んだみたいだね】
(んー? あー、言われてみると、そうかも)
何となくだが、シャロンの周りの空気だけ、ピリピリとした違和感がある。随分と妙なトレーニングをしていたらしい。
と、雅がそう思っていると、
「……む? システィアよ。お主、何か変な臭いがするの」
「え、ちょ、嫌ですよシャロンさん! 私、そんな臭いですか?」
「……あまり良い香りではない。早めに洗い流しておいた方が良いの」
耐えられない訳では無い。言うならば、どこか不安を感じる臭いといったところか。
自らの腕などを嗅ぎだすライナを見ながら、シャロンは妙な胸騒ぎを覚えていた。
さて、そんな横では、
「あれ? カリッサさんだ! ビックリした! どうしてここに?」
「えっと、君は確か、ノルンちゃんだったかな? いや、実はちょっとここの遺跡に用事があってね。カルムシエスタ遺跡っていうんだけど」
「あー、そう言えば、なんか聞いたことあるような……」
「コートマル鉱石、覚えてる? ちょっとあれが必要で、カリッサさんに案内されていたのよ。……ところでノルンちゃん、怪我の具合はどう?」
優が、ノルンの足に視線を向ける。少し前に、ウェストナリア学院で起きたレイパー事件の際、ノルンは足に怪我をして療養中だったのだ。シャロンがノルンを迎えに行ったのも、病み上がりだからというのが理由である。
正直に言えば、まだ学院に残っていて欲しいとも思っているのだが、ノルンの強い希望により、彼女も戦場に赴くことになっている。ノルン曰く、「師匠が頑張るのに、弟子が寝ていられません」とのことだった。
「ええ、怪我ならお蔭さまで良くなってます。ていうか、コートマル鉱石、シェスタリアにあったんですか? 知らなかった……。あ、それより、師匠はどんな調子ですか? 入院したって聞いて、気が気じゃなくて! 師匠もファムも大丈夫だって言っているんですけど、私全然信用してませんからね! 本当に大丈夫なんですかっ?」
「あ、いや、もう退院してるし……」
早速ミカエルの話になったこと、そしてその剣幕に、優は苦笑いを浮かべる。相変わらずだが、心配もごもっともだろう。
「さて、アプリカッツァから聞いたが、何やらニイガタでは大変じゃったらしいの。帰りの道中、そこら辺の話を詳しく聞かせてもらうぞ」
シャロンはそう言うと、体を発光させ、本来の姿である巨大な竜へと姿を変える。カリッサが驚いた声を上げる中、雅は「ええ」と頷くと、その背中に飛び乗るのだった。
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