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ヤバい奴が異世界からやってきました  作者: Puney Loran Seapon
第50章 カルムシエスタ遺跡
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第443話『天井』

 通路を塞ぐように置かれた岩を退かした一行は、カリッサの先導の元、遺跡の中を進んでいく。


 中は複雑な構造になっており、何度も階段を上り下りし、迷路のように入り組んでいた。


「なんだか、ガルティカ遺跡の中を思い出しますね。あそこもこんな風になっていて、迷子になりそうでした」


 最早、自分がどこにいるのかも分からない。雅は辺りをキョロキョロと見渡しながら、若干辟易気味にそう言うと、優が心底同意だというように何度も頷く。


「武器庫として使われていたんですよね? なんで迷路みたいになっているんですか?」

「そういう目的として使っていたのは、最初の大部屋だけらしいよ。場合によっては、敢えて敵をここにおびき出して、この通路で仕留めていたとか」

「……肝心のコートマル鉱石は、どこにあるんですか?」

「もっと先の、地下の方。ここまで来るのに費やした時間と、同じくらいの時間が掛かるかな」


 カリッサの言葉に、思わず「うへぇ」と漏らす優。カリッサは苦笑いを浮かべながら、「この先に大きめの部屋があるし、そこで少し休もうか」と提案した。


「こんなところの地下で、よくコートマル鉱石なんて見つかりましたね」

「……偶然、発見されたんだってさ」

「……へぇ」


 そんな偶然があるのかと疑う優。やはり、どうにもカリッサは怪しい。悪いことを企んでいるわけではなさそうだが、何か隠しているような、そんな感じがしてならない。


 この遺跡の中を、迷うことなくスイスイ進んでいるのも気になった。どこかでこの場所にコートマル鉱石があると知ったのはまだいいとしても、ここまでスムーズに進めるのは、中の構造を熟知していなければ不可能な話である。


 雅にこっそりアイコンタクトでその意思を伝えるも、雅は視線で「まぁ、信じましょう」と言ってくる始末。相変わらず、女性には甘い奴だと、優は内心で溜息を吐いた。優としては、ここでカリッサを問い詰めても良いくらいだと思っているのだ。


 そして、大部屋に着いた四人。


 大部屋といっても、せいぜい大きめの会議室くらいか。四人がラジオ体操しても、それなりに余裕があるくらいのスペースだ。


「今来た通路の道とは別に、二手に別れていますね。これも、敵を嵌めるための場所みたいですね」


 部屋を見渡しながら、ライナがそう言う。壁には、無数の古い傷跡や穴があった。明らかに、ここで戦闘があった証拠である。


 最も、今ここで戦おうものなら、アーツの性能と遺跡の老朽化のせいで、下手をすれば生き埋めになる危険性が高かろう。大した威力の無い武器で戦っていた頃だったからこそ、出来た話だ。


 取り敢えず休憩を……そう思い、部屋の真ん中辺りで腰を下ろそうとする雅達。


 ――だが、その時。




「っ! 皆! ここから離れてっ!」




 鋭く響く、優の警告。


 刹那、天井に鈍い音が響いた。


 雅達が跳び退くのと、天井が砕け、大量の瓦礫が降り注ぐのは同時。


 土や砂が煙のように舞い、咳き込む雅だが……


【ミヤビっ! ライナとカリッサさんがいないよ!】

「ゲホゲホ……ええっ?」


 カレンの言葉で、気付く。優の姿は見えるが、他の二人がいないことに。


「さがみん! ライナさん達を見ませんでしたかっ? それに、一体何が……っ?」

「分かんない! 私も驚いた!」


 砕け、穴の開いた天井を見ながら、優がギリっと奥歯を鳴らす。


 遺跡に入ってから、念のために優はずっと、敵の存在を感知する『エリシター・パーシブ』のスキルを使っていた。今まで何も反応が無かったのだが、それが今、突然上にレイパーがいると教えてくれたのだ。


 レイパーが、スキルのアンテナに引っ掛かりにくくするような能力を持っているのか。だとすれば、厄介なことこの上ない。


 だが、分かっているのは――


「遺跡の中に、レイパーがいる。しかも、こっちの存在にも気づいているよ。今はもう、どこかに行ってしまったみたいだけど……」

「くっ……。ライナさん! カリッサさん! 無事ですかっ? 返事をしてください!」

「はい、ここです! ユウさんのお蔭で、何とか! でも、これからどうしましょう?」


 瓦礫越しに聞こえてくるライナの声に、雅と優はホッと胸を撫で下ろす。


 だが、困ったことになった。瓦礫を退かそうにも、時間が掛かるのは明白。元来た通路に戻ろうにも、そこも塞がれてしまっている状況だ。完全に分断されてしまった。


「皆! この部屋の両側の通路を進むと、確か同じ部屋に着くはずだ! そこまで一本道だし、一旦そこで合流しよう!」

「分かりました! でも、レイパーがいます! 気を付けて!」


 どのみち、中にいるレイパーを放ってはおけない。


 危険を承知の上で、先へ進むしか選択肢は無かった。

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