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ヤバい奴が異世界からやってきました  作者: Puney Loran Seapon
第45章 新潟市南区~中央区
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第398話『行方』

 八時五分。ここは新潟市中央区紫竹山二丁目にある、雅の家。


 その家の、出入口の戸のところにて、何やらガタガタと物音がしている。


 戸の前には、


 赤いミディアムウルフヘアーをした、長身の彼女は、セリスティア・ファルト。


 彼女は今、束音家の戸を外していた。前にやむを得ない事情で雅が壊してしまった戸である。


『いやぁ、すみませんね。セリスティアさんも忙しいのに』

「全くだ。朝っぱらから何してんだって、近所の人達から変な目で見られてんだぞコンチクショウ。まぁ良いけどよ。俺も悪いしな。一度直したつもりだったんだけどよ、駄目だった」


 通話の相手は、雅だ。


 扉を外すセリスティアの眼前には、いくつかの立体ウィンドウ。紛れもなくULフォンのもので、雅と話すセリスティアは、頭を酷使しているかのような難しい顔で、そのウィンドウを見つめている。なんやかんや、セリスティアもULフォンを持っていた方が良いだろうということで、数日前から一時的に警察から借りていた。


 ……のだが、


『ULフォンの操作、そろそろ慣れました?』

「いやー……どうにも俺には、こいつは肌に合わねーな。連絡とりてーなら、通話の魔法使う方がいい」


 直感的に使える通話の魔法と比べると、慣れない操作がある分、ULフォンは使い辛いと思ってしまうセリスティア。何だか難しそうという先入観もあり、どうしても苦手意識が出てしまっていた。


「まぁそうは言っても、ミヤビ達と直で連絡取ろうってなると不便だし、ニホンで生活すんなら持っておいた方がいいんだろうけどよ」


 雅達に魔法を覚えてもらうのと、セリスティアが未知の機械を扱えるようになるのと、どちらが良いかと聞かれれば、後者だろう。そう思ったからこそ、セリスティアは渋々、ULフォンを使うことにしたのである。


 とはいえ、いつまでも警察から借りっぱなし、というわけにはいかない。近い内に、自分のULフォンを買わなければならないという考えはあるセリスティア。


 ULフォン本体や通信費等に掛かる費用をどうするか、というのは問題があるが。


「よし、やっと戸が外れた。……んー? あー、やっぱこれが悪いか」

『うーん、セリスティアさんなら、しばらく使っていれば、その内使いこなせると思うんですけどねー。……どうです? うちの戸、直りそうにないですか?』

「どうにも鍵のかかりが悪いっつーか、セイタイニンショウとやらの反応が渋い感じだ。多分だけど、こりゃあ部品を交換しねーとだと思う。流石に俺一人じゃ直せねえ」


 フリーの仕事師をしているセリスティアの元には、建物の修理等の依頼が来ることも偶にあるから、丁番やドアストッパー程度なら――壊れ方にもよるが――セリスティアでも直せる。


 しかし、鍵の部分……生体認証でドアの鍵を開閉したりする仕組みは、異世界には存在しない。ここだけはどうにも、セリスティアの手には負えなかった。


『あー、それじゃ、うちのお金で買っちゃっていいですよ。壊したの、私ですし。鍵業者さん、手配しておきます。……ところで、例の杭は、変わりない感じですかね?』

「一応、ちょくちょく様子は見てるけど、今のところ変化はねーよ。今も普通に刺さったまんまだ」


 そう言いながら、セリスティアは家の中へと視線を向ける。


 雅の祖母の部屋……その床下に、大きな杭が打ち付けられているのだ。ラージ級ランド種レイパーを封印するために。


「一月の終わり頃にミヤビが杭を刺して、今日で凡そ一週間ってところか? ミヤビが見たっつー『破滅の未来』は、一先ず回避出来たって思って良いのかね?」

『私が見たのは、あれから三日後の未来でしたからね。……ただ、問題が解決したわけじゃありません』


 二体のラージ級ランド種レイパー――否。二体で一体となる、ラージ級ランド種レイパー。片割れの封印が解け、二つが合体してしまえば、世界が破滅するという結末は変わらない。


「何とか、早いところ奴を倒したいけどな。……ミカエルの話じゃ、輪廻転生のためのエネルギーが不足している可能性があるんだっけ?」

『ええ。淡ちゃんに憑りついた四枚のお面が、今まで奴にエネルギーを供給していたはずで、それを私が壊しましたからね。誰かがお面の代わりの役割を担っているかもしれませんけど、今まで通りってわけにはいっていないはずだって』


 お面は、死んだレイパーの魂も回収し、ラージ級ランド種レイパーに供給していた。それが出来なくなったために、レイパーの魂が目に見える形――亡霊レイパーとなって出現してきたというのが、ミカエルの推理だ。


 魂を回収出来ていないのだから、エネルギーも回収出来ていない可能性は高い。


「お面の代わりの役目を担った誰か、か。……ミヤビは、誰が代わりをしていると思ってんだ?」

『多分、奴です。あの、ネクロマンサーみたいなレイパー。私の見た限り、亡霊レイパーと密接に関わっていたのは、奴だけですし』


 ネクロマンサー種レイパーは、過去のガルティカ遺跡の地下で、レイパーが輪廻転生する場に立ち会っていた一体だ。


 他のレイパーと比べても、特別な立ち位置にいる……そんな気がした。


「話を聞いた限りじゃ、俺もミヤビに同感だな。そういやそいつは、今どこにいるんだ? キャピタリークから転移で逃げたらしいけどよ……」

『少なくとも、エンドピークにはいないみたいです。向こうのバスターが頑張って探してくれていますけど、影も形も見つからないそうですし。近隣の国にでも行きましたかね? ウラか、オートザギア……それに北の方にも、イェラニアって国があるそうですし』


 言いながら、雅は小さく唸る。エンドピークも同じ予想をしていて、各国のバスターに警戒するよう伝えたらしいが、それでもまるで見当たらない。


 勿論一体のレイパーを見つけるというのは容易ではないが、あれだけ大勢の亡霊レイパーと一緒にいるのだから、探せば手掛かりの一つくらいはあって良いはずだろう。


『転移の魔法が使えるんだから、全然違う国にいても、おかしくは無いんですよね……』

「案外、ニイガタにいたりしてな。ほら、一応はミヤビにやられたんだろう? 仕返しに……なんて思ってるんじゃね?」

『ええ? まさか、そんな……私が会ったの、キャピタリークですよ? 辛うじて日本人だと分かったとしても、新潟出身だなんて思いませんよ、普通』

「分かんねぇぞ? ほら、ミヤビのアーツって特殊だし、その気になって調べれば分かるんじゃないか?」


 やめてくださいよー、と可愛く文句を言ってくる雅に、セリスティアは「冗談だって」と笑い飛ばすのだった。

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