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ヤバい奴が異世界からやってきました  作者: Puney Loran Seapon
第41章 エンドピーク(過去)
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第41章閑話

 時は二二二二年一月二十七日、日曜日。


 雅がアングレー・カームリアと共に、メリアリア楽器店を訪れたその日の午前九時五十分。


 丁度、雅が過去にタイムスリップしてから二十分程が経過した直後だ。


「……ミヤビお姉ちゃん、大丈夫……かな?」


 宿に残されたラティアは、窓から外を見ながら、ポツリとそう呟く。


 雅がキャピタリークの外れにある『メリアリカ楽器店』に行くことは聞いていた。その時から、どこか嫌な予感がしていたのだが……その不安は、時間が経つに連れて大きくなっていた。


 この時間軸に、雅はもういない。そして過去のデルタピークやガルティカ遺跡でピンチに陥っている……カーテンの裾を握る手をギュッとするラティアは、もしかするとそのことを、心のどこかで感じ取っていたのかもしれない。


(ニホンやノースベルグは……確か今、夜の九時くらいだったはず。……無用な心配なら、それでも――)


 皆に迷惑を掛けるかもしれないと思う一方、どうにも雅のことが気掛かりなラティア。


 ULフォンを起動させ、レーゼや優達に連絡を取ろうとした――その時だ。


「――っ?」




 突如、強い揺れを感じてラティアはつんのめった。




「地震っ? いや、違う……っ!」


 鳥や獣、魚達が暴れ、風が止み、大地が身震いし、水や炎がうねりだす。


 地震とは根本的に違う『何か』が、起きていた。


 宿の中でも外でも、何事かと人々が騒ぎ出す。


 慌てて窓を開け、身を乗り出したラティアは、大きく目を見開く。







 世界が、震えていた。







 ***





 一方、オートザギア魔法学院の学生寮の一室にて。


 ここは、愛理……そして、同室の女子学生が過ごす部屋。


 その『もう一人の学生』に対し、愛理は平身低頭の土下座をしていた。


 金髪ロングの、紫の眼をした女子学生がティーカップを片手に持ち、テーブルの上の『とあるお菓子』を口に運んでいる。まさにティータイムといった様子。


 緊張の汗を額や手の平、背中に浮かべ、頭が上がらないように細心の注意を払いつつ、女子学生をチラチラと見る愛理。


 すると、


「……これ、『カキノタネ』といったかしら?」


 女子学生は、愛理にそう尋ねてくる。


「辛くて美味しいですわ。ニホンのお茶とも、よく合うし」

「お気に召したようで、安心致しました。――スピネリア王女様」


 安堵するようにそう返す愛理。


 愛理の目の前にいる女子学生は、スピネリア・カサブラス・オートザギア。


 ……何を隠そう、オートザギアの『第二王女』である。


 偶然か必然か……よく分からない運命によって、スピネリア王女と同室で過ごすことになってしまった愛理。


 部屋の外には護衛もおり、普通の学生寮とはまるで異質なところで、愛理は学生生活を送らないといけなくなってしまったのである。


 スピネリアが今口に運んでいるのは、柿の種。愛理が同室の学生への手土産として持ってきて、相手が一国の王女と分かり慌てて上等な梱包を用意し、侍従たちによるチェックを受けて王女へと献上されたのだ。


 もしも王女の口に合わなければ、斬首刑に処される覚悟もせざるを得なかったのだが……どうやらそうならずに済んで良かったと、愛理は心底ホッとした。


(柿の種もお茶も、普通にスーパーに売っていたものだったが、王女様の口あって良かった……。企業努力は流石だな……。それにしても……いやぁ、束音からお茶の美味しい淹れ方を教えてもらっていて良かった……)

「それにしてもシノダ。あなた、何時までそうしていますの? 一緒にお茶、楽しみましょうよ。折角同室なのだし」

「……お、恐れ多いことでございます」


 万が一何か粗相をしてしまったらと思うと、緊張と不安が大軍勢となって襲ってくる。勘弁して欲しいと、心からそう思った。


 スピネリアはつまらなさそうに頬を膨らませ――何気無く窓の外へと目をやった、その直後。




「っ!」

「なんだっ?」




 ラティアが感じた揺れと、全く同じものを二人も感じる。愛理は慌てて顔を上げると、


「王女様! テーブルの下に!」

「ええっ? ――きゃっ!」


 スピネリアを強引に抱きしめると、自身も一緒になって、テーブルの下に潜り込んだ。


 地震大国日本で暮らす者からすれば、当然の行動。


 直後、慌てて護衛達が部屋に入ってくる。愛理がスピネリアを抱いているのを見て驚きの声を上げ、スピネリアも何やら文句の声を上げるが、愛理は全部無視した。


(なんだこれは……っ! 地震の揺れじゃない! 束音、ラティア――)


 ULフォンを起動させ、二人の無事を確認しようとしたところで、







 空間がぐにゃりと捻じれる、そんな感覚に襲われた――

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