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ヤバい奴が異世界からやってきました  作者: Puney Loran Seapon
第37章 ノースベルグ②
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第332話『模索』

『うん。変な靄っていうか、亡霊? みたいな奴、こっちにも出たよ。志愛と一緒に何とか追っ払ったけど……』

『学校の方にも出たわよ。こっちも逃げられちゃったけど……。私が魔法を撃ったら、すぐに消えたわ』


 亡霊コボルト種レイパーとの戦いを終え、家に戻った後、雅達は日本にいる優と、ウェストナリア学院にいるミカエルに連絡を入れていた。亡霊レイパーのことについて情報共有するためだ。


 今、レーゼの家のリビングには彼女達の立体映像が出現しており、四人でテーブルを囲んでいるという状況である。


『ところでラティアは、本当に大丈夫なの?』

「ええ。イージスのお蔭で大きな怪我は無かったです。街のお医者さんからは一日安静にしていれば大丈夫だって言われました」


 でも、と雅は目を伏せて続ける。


「ラティアちゃんは大丈夫だったけど、犠牲者は五人も出ました……。そちらは、被害の方はどうですか?」

『こっちは、今のところ被害はゼロよ。最初に亡霊を見つけたのが私で本当に良かったわ』

『正確な人数は不明だけど、何人かは出てる。お父さんや伊織さんが今も捜査中だけど、死体が何か変なんだって』

「……もしかして、肌が青白く変色していたりしていなかった?」


 レーゼの質問に、優は「そうそう、そうらしいよ」と答える。


 顎に手をやり、小さく唸るレーゼ。


「殺し方が不気味ね。なんで死体があんなことになったのかしら? ……ミカエル。あなたから見て、どう思う?」

『詳しいことは、死体を確認しないと何とも言えないけど……レーゼちゃんから送られてきた写真を見る限りだと、これは多分、著しく体温を奪われていると思われるわね』

「あ、確かに冷たくなっていました。まるで、氷のように……」

『そこまで冷えているのなら、この亡霊レイパーは、標的から温度のエネルギーを奪って殺すんじゃないかしら?』

『なんかやり口が、あのお面みたい……』


 喜怒哀楽のお面のことを思い出し、苦い顔になる優。『感情や生体エネルギー』と『温度』という違いはあれど、確かに彼女の言う通り、やり口はよく似ていた。


『ミカエルさんの炎魔法で逃げ出したってことは、あいつら、炎が苦手なのかな?』

「炎か……。そう言えば私が騎士の姿になったら、すぐに逃げたわね。もしかすると、激しい光とかに弱いのかしら?」

『あ、そっか。亡霊だから、そういうのが弱点なんだ』


 レーゼが騎士の姿になる時、体が発光する。亡霊レイパーは騎士となったレーゼに逃げたのではなく、変身した際の光に怯えて逃げ出したのだろうと推理する優達。


「でもあの亡霊レイパー、一体何者なんでしょうか? 今までの奴らとは、明らかに毛色が違いますし……」

『見たことのない、亡霊のレイパー……それがノースベルグやウェストナリア、新潟で一斉に出現するって、やっぱりおかしいよね?』

「ええ。少なくとも、ノースベルグであんなレイパーは見たことがないわ。ミカエルはあんな亡霊のレイパー、見たことある?」

『無いわ。多分、世界初よ。それに、亡霊レイパーが出たのは、私達のところだけじゃない。あちこちで亡霊レイパーの目撃情報が、次々に報告されているわね。そして、そのどれもが、過去に倒したはずのレイパーの亡霊だったって』

「世界中で何かが起こっている……。でも、どうして突然こんなことに?」

『分からない。ただ一つ気になるのは、これよ』


 そう言ってミカエルが見せてきたのは、一枚の画像。


 それは遠くで、黒橡(くろつるばみ)色の雲が台風の目のように渦巻いている写真だった。


『すぐに元の空に戻ってしまったから写真は少ないけど、目撃情報は一杯出ているわ。こんな空なのに雨が降るわけでもなく、強風が巻き起こることもなく、本当に一瞬空がおかしくなっただけだったって』

「少し前に、ニュースになっていた事件ですよね? あれから特に大きな異変が起こることもなくて、調査も有耶無耶になっちゃったんでしたっけ?」

『これが原因で、今回の亡霊のレイパーが出現したってミカエルさんは考えているんですか?』


 優がそう尋ねると、ミカエルは難しい顔で首を傾げる。


『これが原因なのか、もっと別の何かが裏にあるのか、筋違いの見当なのか、それは調査してみないことには何とも言えないわね……。少なくても奴らの目的や存在意義くらいははっきりしたことが知りたいのだけど、せめてもうちょっと手掛かりが欲しいわ』

「なら私、現地に行ってみます。何となくですけど、この空の異変、レイパーが絡んでいるような気がしてならないんです」

「……成程。もし亡霊の出現と関係が無くても、奴らの企みを一つ潰せるかもしれないなら、調査してみる価値はあるかもしれないわね」


 雅が先に言った通り、この異変の調査は有耶無耶になっている。現在、表立って調べている人が誰もいない状況だ。雅が調査することで、何か進展する可能性は充分にあった。


「具体的なことが何も分からないので、取り敢えず一人で行って調べてみますね。えっと、確かその異変が起きた場所は――」

「エンドピークよ。エスティカ大陸の東の国。三ヶ月くらい前に、あなた達の世界の国……オーストリアと協力関係を結んだところね。レイパーのことを抜きにしても中々良好な関係らしいわ。特に首都のウィーンとの交流が盛んだとか」

「ウィーンと交流が盛ん? ……あ、もしかして」


 レーゼの話を聞いて、エンドピークがどんな国か、何となく想像がついた雅。


 彼女の想像は正しい。







 エンドピーク。


 それは音楽で有名な国である。

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