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ヤバい奴が異世界からやってきました  作者: Puney Loran Seapon
第36章 新潟県立大和撫子専門学校付属高校
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第319話『無双』

「やぁぁぁぁっ!」


 辺りで激しい金属音や爆音が轟く中、一際目立つ気迫の籠った声が轟く。それは橘真衣華のものだ。


 自身の『鏡映し』のスキルによって二挺に増やしたフォートラクス・ヴァーミリアを構え、突っ込んで行く先には――小面のお面に操られた学生達。


 斧を持って迫ってくる真衣華に対し、学生達は明確な行動が出来ずにいた。何故なら、


「はぁぁっ!」


 真衣華の後方から、ノルン・アプリカッツァが杖を振り、風を集めて作られた球体を乱射していたからだ。


 嵐のような魔法攻撃に怯んでいる隙に、学生達に接近した真衣華は、自身のもう一つのスキルである『腕力強化』を発動しながら、力一杯にフォートラクス・ヴァーミリアを振り回す。


 真衣華の細身の体からは想像も出来ない、鬼神の如く激しい攻撃は、学生達の手からアーツを弾き飛ばしながら、同時に顔に張り付いたお面までも吹っ飛ばしていく。


 勢いに任せ、どんどんと学生達を解放していく真衣華。


 しかし学生達も、黙ってやられているつもりはない。


 吹き飛ばされる学生達の後ろから、一丸となって、一気に真衣華に襲い掛かって来る。一人二人犠牲にしても、人数差で真衣華を抑え込むつもりだろう。


「マイカさん、危な――っ?」


 奮戦する真衣華は目の前の敵ばかりに集中し、その一団が見えていない様子。故にノルンが警告の声を発しかけ――刹那、彼女の脳裏に、ノルン自身が背後から襲われるイメージが浮かび上がる。


 ノルンのスキル『未来視』が、彼女に危険を知らせたのだ。ノルンが慌てて背後を見れば、そちらからも学生の大群がやって来ていた。敵が見えていなかったのは、ノルンも同じだった。


 だが、スキルが教えてくれたのならば、焦ることはない。ノルンは魔力を杖に集中させる。


 瞬間、大竜巻が発生し、学生達を吹き飛ばす。


 さらにノルンは流れるような動作でアーツ……無限の明日を空に掲げる。


 一瞬の間を置き、辺りの風が美しい緑へと変色して、ノルンの頭上に集まって来る。出来上がるは、緑風のリング。彼女の最大魔法だ。


「マイカさん、気を付けてくださいっ!」


 そう叫びながら、ノルンは真衣華へと迫る学生の大群の足元目掛け、そのリングを放った。


 弓なりに地面に着弾し、地面が爆ぜて怯む学生達。


 そんな彼女達に、


「せぇぇぇえいっ!」


 真衣華は勢いよく飛び掛かり、Xの字を描くような一撃を、学生達にお見舞いするのであった。




 ***




 一方、真衣華とノルンの近くでは、愛理が学生達に囲まれていた。


 しかし愛理の顔は真剣なものの、そこに苦悶の色は無い。


「っと、ふっ!」


 愛理は朧月下の切っ先を地面に向けたまま、学生達の剣や槍等のアーツによる攻撃を、最小限の動きでスルスルと躱していく。


 そして――学生の一人が、動きに隙を見せた瞬間。


「はっ!」


 目にも止まらぬ速度の斬撃が、学生の顔に張り付いたお面の下に入り込み、弾き飛ばす。


 真衣華達程派手ではなくとも、こうやって愛理は学生達を一人一人解放していた。


 落ち着いて敵の攻撃を見切りながら、相手の隙を伺う愛理。


 再び学生の一人の動きに隙を見出し、愛理の居合斬りが彼女を襲う。


 だが、学生が思わず仰け反ったことで、紙一重のところで愛理の刀は空を斬る。


 その刹那だ。


 愛理の姿が、一瞬にして消えた。


 途端、攻撃を避けた学生の背後に出現する愛理。


 彼女がスキル、『空切之舞』を発動したのだ。当てるつもりの攻撃を躱されてしまった時、敵の死角へと瞬間移動するスキルだ。


 愛理の居場所が突如として変わったことで、攻撃を躱した学生も、その近くにいた学生達も、思考が一瞬フリーズする。


「もらった!」


 その隙を逃さず、愛理の斬撃が彼女達のお面を捕え、吹っ飛ばすのだった。




 ***




 愛理から少し離れたところでは、ライナ・システィアと権志愛もまた、大量の学生相手に奮戦している。


 ここには真衣華とノルン、愛理のところよりもさらに多くの学生が群がっていた。


 しかし、ライナと志愛が戦っているのは、僅か数名の学生のみ。それもそのはず。残りの大量の学生は、ライナがスキル『影絵』で創り上げた自分の分身達が相手をしているからだ。


 本体ライナや志愛に襲い掛かろうとしている学生達を、分身ライナが足止めをしているという状況である。


 それでも何人かの学生は分身ライナの足止めをすり抜け、本体のライナや志愛へと辿り着くのだが、


「ハッ!」

「やっ!」


 志愛が跳烙印・躍櫛で学生の足を払って体勢を崩し、ライナがその学生が着けたお面の隙間に、ヴァイオラス・デスサイズの切っ先を器用に引っ掛けて剥がす。


 単調な動きしか出来ない分身ライナ達ですら、学生相手に善戦しているのだ。志愛とライナの前では、一般の学生が太刀打ち出来るはずもない。


 そんな二人の背後に、それぞれ一人ずつ学生が忍び寄る。


 しかし、


「ふンッ!」


 彼女達の気配等お見通しだった志愛達。志愛は背後にいる学生の腹部を棍で突いて怯ませると、体を捻って回転して彼女を振り回し、学生の大群の中へと投げ飛ばす。


 そして、


「シアさん!」


 ライナも背後に来ていた学生のアーツを鎌で吹っ飛ばし、志愛へと声を掛けた。


 武器を失った学生は、あたふたとその場から逃げている。


 志愛はライナの方へと走り、彼女の肩を踏み台にして高く跳ぶと、


「はぁぁぁアッ!」


 スキル『脚腕変換』を発動しながら、学生の背中に勢いよく跳烙印・躍櫛の先端を叩きつけた。


 志愛のスキルは、足に加わった衝撃を、腕力へと変換するスキル。


 威力の上がった突き攻撃は、学生を大きく吹っ飛ばし、その衝撃でお面が剥がれるのだった。




 ***




 そして、学校の敷地の入口付近では、甲高い金属音が、小気味よく鳴り響いていた。


 桔梗院希羅々が、学生達を相手に一歩も引かずに善戦している音だ。


「ふふっ、まだまだですわね、あなた達!」


 金色のレイピア、シュヴァリカ・フルーレを振り回す希羅々の動きに、一切の淀みはない。


 前方から迫る様々なアーツによる攻撃。中にはハンマーや大斧、鉄球等、レイピアで相手をするには少しばかり不利な武器もあれど、希羅々は難なくそれらを捌いていく。


 操られ、自分の意思で動くことのない学生達の動きは、希羅々からすれば人形もいいところだ。


 それでも、学生達とて無策では無い。


 希羅々の両脇から、一人ずつ学生が同時に攻撃をしてきた。希羅々のアーツはレイピア一本。


 希羅々が片方の学生を捌く間に、もう片方の学生が攻撃を当てにいくつもりだろう。


 だが、


「甘いですわっ!」


 希羅々のレイピアのポイントが片方の学生の胸元に直撃し、大きく仰け反らせる。


 刹那、希羅々の左手の中指に嵌った指輪が薄らと輝いたと思ったら、希羅々が右手に持っていたはずのシュヴァリカ・フルーレが、左手へと瞬時に移動した。


 アーツ持ち替え装置、『アーツ・トランサー』。希羅々がこれを発動させたことで、彼女の攻撃速度は飛躍的に上がる。


 もう片方の学生の攻撃が自分に届くより早く、左手に移動させたレイピアの突きが彼女の顔面に命中し、大きく仰け反らせた。


 怯んだ彼女を蹴り飛ばすと、希羅々は学生の大群へと突っ込んでく。


 両手に一本ずつレイピアを持っている……そんな錯覚を覚える程の攻撃の嵐が学生達を襲った。


 そして気が付けば、学生達は一か所に固まっていた。


 希羅々は適当に暴れ回っていたわけではない。上手く学生達を誘導していたのだ。


 そう、全てはこの一撃のため――。


「止めでしてよっ!」


 希羅々が思いっきりレイピアを前に突き出せば、空中に出現するは巨大なシュヴァリカ・フルーレ。


 希羅々の必殺スキル、『グラシューク・エクラ』である。


 空気を震わせ、威圧感と共に迫る巨大レイピアに、学生達に為す術はない。


 レイピアの直撃と共に全員纏めて吹っ飛ばされ、同時に着けていたお面も剥がれ飛ぶのであった。




 ***




 駐輪場の付近にて、何人もの学生達がうろついている。お面に操られているとは言え、彼女達はアーツを構え、どこか警戒している様子が見て取れる。


 辺りをキョロキョロしているその様は、まるで誰かを探しているかのよう。


 学生達の足取りは慎重……のように見えて、その実は違う。よくよく見てみれば、僅かに怯えているような、そんな足の動かし方であった。


 それは何故か。


 緊張で張り詰めた空気を乱暴にぶち破るような……自転車の倒れる、大きな物音が響く。


 必然、一斉にそちらを見る学生達。


 しかしそこには、誰もいない。


 その時だ。


「――ッ?」


 全く別のところから、弾丸型の白いエネルギー弾が飛んできて、一人の学生のお面を弾き飛ばす。


 相模原優だ。手に持っているライフルは、ガーデンズ・ガーディア。


 物陰に身を潜め、まるで針に糸を通すかのように、物と物との僅かな隙間から学生を狙撃したのだ。しかも、視認していない攻撃の威力を上げる『死角強打』のスキルも同時に発動していた。顔に張り付いただけのお面等、ひとたまりもないだろう。


 他の学生達が、エネルギー弾が飛んできた方を見るも、もうそこに優はいない。攻撃をした後、すぐにその場を移動していたからだ。


 お面を被り、視界が狭まった学生達に、隠れた優の姿は見つけられない。


 それでも、どこだどこだと必死で優を探す学生達。


 すると、


「――ッ!」


 空中から白い羽根が飛んできて、学生の手からアーツを弾き飛ばす。


 空を見上げれば、そこにいたのはシェル・リヴァーティスを広げたファム・パトリオーラ。彼女もまた、建物の陰に隠れつつ、空中からアーツによる羽根飛ばし攻撃を行っていた。先程、大きな音を立てたのも彼女。優が狙撃する隙を創り出すためにやったのだ。


 ボウガン等の遠距離攻撃が出来るアーツを持った学生がファムに攻撃しようとするも、それを行動に移す前にファムは逃げてしまう。


 優もファムも、ヒットアンドアウェイを繰り返し、少しずつ、少しずつ学生達の顔からお面を剥がしていた。


 ジリジリと数を減らしていく学生達。いつどこから攻撃されるか分からず、辺りへの警戒心は徐々に高まっていく。


 それと同時に、学生達の頭の中は、見えざる敵のことで一杯になっていた。


 故に、気が付かない。


 いつの間にか、自分達が同じ場所に集まっていたことを。


 不意に、体が何かにぶつかり……そこでようやく、彼女達は自分達が一か所に固まっていることに気が付き、その刹那、


「こっちだよっ!」


 頭上から声が轟いた直後、急降下するファムのドロップキックが学生達に炸裂した。


 優とファムも、ただ各個撃破に徹していたわけではない。ちょっとずつ敵を追い詰めながら、虎視眈々と一網打尽に出来るチャンスを伺っていたのだ。


 ファムの奇襲の衝撃により、体勢が崩れる学生達。


「今だ!」


 優がその隙を逃さず、身に着けるお面を一つ残らず狙撃するのであった。




 ***




 一方、シャロン・ガルディアル。


 両腕を山吹色の鱗と爪のある腕に、背中から小さな翼、尻から尻尾を生やした、竜と人間の中間態。そんな姿のシャロンは、多くの学生達に囲まれてはいるものの、一歩も引かず、人間離れした力を存分に奮っていた。


「ふんっ!」


 左右から同時に迫る、チェーンソーとサーベルの攻撃を、シャロンは両腕を盾にし、平気な顔で受け止め、そのまま弾き飛ばす。


 さらに彼女達の後ろから襲い掛かってきていた学生二人を爪の一撃で吹っ飛ばし、学生の群れの中に突っ込むや否や、太い尻尾をぶん回して学生集団を薙ぎ払う。


 刹那、シャロンの足に着いたアンクレットが光を放ったと思ったら、シャロンの腕の周りに、十二個もの山吹色の雷球が出現。


 シャロンのアーツ『誘引迅雷』だ。


 シャロンは雷球から発する電流を束ねて鞭とすると、大きく振り回し、学生達の手からアーツを絡めとって明後日の方向へと投げ飛ばした。


 そして、


「はぁっ!」


 小柄な体からは想像もできない程に大きな声を張り上げた刹那、学生達の体を、まるで激しい台風に襲われていると錯覚する程の強風が襲う。


 咆哮と同時に翼を勢いよく広げたのだ。


 強烈な風圧と、咆哮の威圧感に、蹴散らされる学生達。


 さらにシャロンは勢いよく空へと舞うと、その体を発光させ、姿が変わる。


 全長三メートルもの、山吹色の鱗を持った巨大な竜。シャロンの真の姿だ。


 その圧倒的なまでの迫力と、力の差を理解させられる人外感。


 それを見た学生達は、委縮するか、逃げ出すかの二通り。


 シャロンがあらん限りの力を込めて尻尾を地面に叩きつけると、轟音と共に地面が大きく揺れる。


 その衝撃で、一斉に剥がれる小面のお面ども。


 シャロンの翼の被膜が発光した直後、開いた顎門に収束するエネルギー。それはシャロンの怒りの程を表すかのように、激しくスパークする。


 一気に放たれた雷のブレスは、お面を圧倒間に消し飛ばしてしまうのであった。




 ***




 少し開けたところでも、戦いがある。


「おらおら、どくっすよ!」


 響く重低音と共に白い閃光がさっそうと通り抜けると、学生達が吹っ飛ばされていく。冴場伊織の乗る白バイだ。とても警察官の乗る白バイとは思えない音がマフラーから発せられているが、今寧ろそれが、敵の行動をワンテンポ遅らせていた。


 無茶苦茶に走り回る白バイに、散り散りになる学生達。


 そんな彼女達に、上空から襲い掛かるのは――小型のミサイル。


 伊織の操るランチャー型のアーツ、バースト・エデンから放たれたものだ。伊織は走り回りながら、同時に学生達に攻撃を仕掛けてもいた。


 そして学生達に襲い掛かるのは、ミサイルだけではない。


 小さな火炎弾が地上に落ちて、小さな爆発と共に煙を発生させ、学生達の逃げる足を鈍らせる。


 空中には、無数の赤いプレート。それに乗って杖型アーツ、限界無き夢を振りかざしているミカエル・アストラムの姿があった。


 魔法使いは近接戦に弱い。故にミカエルは、敵の手の届かないところから魔法で攻撃していたのだ。


 無数に降り注ぐ火炎弾と、無茶苦茶に走り回る白バイ。それらに学生達が混乱し、とても彼女達に攻撃を仕掛けるどころではない。


 しかしそんな攻撃の嵐を、難なくすり抜けて動く影が一つ。


「そらっ! こっちだぜおらぁ!」


 セリスティア・ファルトだ。彼女は威勢よく叫び声を上げながら、アングリウスの爪を振り回し、逃げ惑う学生達の顔からお面を剥がしていた。


 さらに、


「そこよっ!」


 ずっと火炎弾を撃ち続けるミカエルだが、時折学生達の動きに隙を見出しては、炎で出来た針を放つ。


 音速で飛んでいくその魔法は、学生達の着けるお面に正確に命中し、破壊していく。


 伊織と火炎弾の牽制、そしてセリスティアとミカエルが学生達を解放する、という状況だ。


 そして、


「さぁ、行くわよ!」


 ミカエルは自身のスキル『マナ・イマージェンス』を発動して魔力を回復させると同時に、増えた魔力を、杖に込めていく。


 刹那、ミカエルの足元を中心に広がる魔法陣と、空中に出現する五枚の星型の赤いプレート。


 星型プレートが円を描くように回転すると、その中心に魔力が集中し――次の瞬間、


「はっ!」


 ミカエルの声と共に放たれる、極太の炎のレーザー。


 空気の温度を上げながら発射されたレーザーは、地面に抉り込み、爆発。


 その衝撃で吹っ飛ばされる学生。


 直後、


「いくぜオラァ!」

「これで止めっす!」


 セリスティアが『跳躍強化』のスキルを使い、無茶苦茶に動き回り、伊織がランチャーからミサイルを全弾フルバーストさせる。


 セリスティアのダッシュ攻撃と、伊織のミサイルが、学生達の顔に着いたお面を次々と破壊していくのだった。




 ***




 そして――残った一人、レーゼ・マーガロイスはといえば、校舎入口から少し離れたところにいた。


 周りに群がるは、十人以上もの学生達。


 四方八方から絶え間なく迫る、槍や大槌、モーニングスターやトンファー等の多種多様なアーツによる攻撃。『命の(サーヴァルト・)護り手(イージス)』による白い光に包まれたレーゼは、『衣服強化』を使いつつ、その攻撃を腕や足で全て防いでいた。


 学生達は、決して弱くない。一つ一つの攻撃は、並の威力ではないのだ。


 だが、それらを受け続けるレーゼの顔は、真剣そのものではあるが苦悶の色は浮かんでいない。レーゼと学生達とでは、根本的に体の鍛え方が違かった。


 そして、息もつかせぬ攻撃の嵐の中、一瞬、学生達の動きに乱れが生じる。


 刹那、レーゼの眼に鋭い光が走ったと思ったら、レーゼの腕がぬるりと動き、弧を描く虹と共に斬撃が放たれた。


 あまりにも素早く、そして重いその一撃は、学生達の手からアーツを吹っ飛ばし、お面を剥がしたりするには充分な威力だ。


 斬撃の圧により、吹っ飛ばされる、お面による支配から解放された学生達。


 だがその直後、周りから同時に、ブーメランやエネルギー弾、円月輪等の飛び道具による攻撃が、レーゼへと襲い掛かる。


 離れたところにいた、お面に操られた学生達による一斉攻撃だ。近接戦では埒が明かないと思った彼女達が、戦術を変えてきたのである。


 しかし――レーゼに隙は無い。


 学生達が戦術を変えるより早く、レーゼの背中には巨大な虹のリングが出現していた。


「はぁぁぁあっ!」


 空色に輝くレーゼが、体を捻り、全力で繰り出した回転斬り。


 刃の通った後に描かれた虹……学生達の放った遠距離攻撃がそれに触れた途端、軌道を屈折させ、明後日の方向に飛んでいってしまう。


 そして、レーゼの体を包んでいた虹色の輝きが弾けた瞬間、学生達は皆一様に、一歩後ろへと後退る。


 レーゼの姿が、変わっていた。普通の服を着ていた彼女の体には、空色を基調とした鎧や小手が着いているのだ。


 騎士のような姿になったレーゼ。その威圧感は、今までの比では無い。


 剣型アーツ、希望に描く虹を構えたレーゼ。


 ビビり上がる学生達へと、レーゼは突っ込んでいくのであった。

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