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ヤバい奴が異世界からやってきました  作者: Puney Loran Seapon
第36章 新潟県立大和撫子専門学校付属高校
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第314話『変貌』

「な、なんだこれはっ?」


 学校まで戻ってきた優達。


 目に飛び込んできた光景に、愛理が驚愕の声を上げる。


 校舎の外には、大勢の学生や教員。だが、その足取りはおぼつかない。まるで夢遊病患者のように、当ても無く彷徨っているようだ。明らかに異常な様子である。


 彼女達が、どんな顔をしているのかは、分からない。何故なら――




 全員の顔には、様々な小面のお面が着いていたからだ。




「こレ、カベルナさンと一緒ダ! 皆、あのお面に操られているんダ!」

「ええっ? なんでこんなことにっ? てか、ど、どうすんのっ?」

「落ち着くっす!」


 志愛の言葉に大慌てになる真衣華に、顔を強張らせながらも一喝する伊織。


 すると、その声に反応したのだろう。


 お面に操られた人達が、一斉に彼女達の方を向くと……それぞれの指輪が光を放ち、アーツを出現させた。


 これから何をするつもりか、考えるまでも無い。


「来ますわよ! 皆さん、準備を!」

「なるべくうちの近くにいるっす!」


 うつらつらとした動きから一転、アーツを振り上げて襲い掛かって来た女性達。


 伊織がランチャー型アーツ『バースト・エデン』を出現させる横で、希羅々がレイピア型アーツ『シュヴァリカ・フルーレ』を構えて、襲い掛かって来る者どもへと突撃していく。


「ちょ、希羅々っ? 待ってよぉ!」


 続けて真衣華が片手斧型アーツ『フォートラクス・ヴァーミリア』を。


「優、援護を頼ムッ!」

「ええい、厄介な……!」


 志愛がペンを棍型アーツ『跳烙印・躍櫛』に変え、愛理が刀型アーツ『朧月下』を携え、希羅々に続く。


「全く、こんな時に……!」


 最後に優がスナイパーライフル型アーツ『ガーデンズ・ガーディア』のスコープを覗く。


「……くっ!」

「こ、この……!」


 優と伊織がエネルギー弾やミサイルを放つも、それは群がって来る学生達の合間を飛んで行き、一瞬動きを鈍らせただけで終わる。


 本来なら、続けざまに何度も攻撃をしていくべきなのだが……優と伊織は、苦しそうな顔を浮かべた。


 戦い始めた希羅々達も、どこか戦いにくそうな様子。


 相手は、操られているだけの学生である。レイパーでは無いのだ。一歩間違えれば、彼女達を殺してしまうかもしれない。直前に四葉の訃報に接したのだから、尚更そう思ってしまう。


 操られている少女達の動きは、ただひたすらに単調だ。強敵との戦いを幾度となく生き抜いてきた優達なら、いなすのも、反撃するのも難しくない。


 しかし、精神的なハードルは別問題だった。


 攻めあぐねていると、あちこちからわらわらと集まってくる。


「オ、おイ! まずいゾ! このままじゃ押し切られル!」


 今や十人の学生と同時に戦っている志愛が、悲鳴のような声でそう叫んだ。一人一人の戦闘力は大したこと無くても、数が増えれば厄介なことこの上ない。


「こ、この……お面を剥がせば、元に戻るはずですのに……!」


 希羅々も苦悶の声を漏らす。一人一人に限って言えば時折隙が出来るのだが、横や背後から攻撃が迫ってくれば、そちらの対処を優先せざるを得ない。結果的に、相手の隙を突く余裕が無くなっていた。


 それぞれが苦戦を強いられていると、


「ぅ……ぅぅ……」


 校舎の中から、誰かが頭を抱えて出てきた。


 他の学生とは、根本的に様子が違う雰囲気だ。


「生き残りですのっ?」

「いや待って希羅々! あれは……!」


 出てきた人物を見て、真衣華が顔を引き攣らせる。


 苦しそうな声を漏らしてやって来たのは……鬼灯淡、その人だった。


「よつ、よつば、ちゃん……! よつばちゃん、よつばちゃん……!」

「な、なんすかっ? 様子、ちょっとおかしいっす!」

「……はっ! まさかこのお面、彼女の仕業なのかっ?」

「ちょ、ちょっと! あの子が来たってことは――」

「ぅ、ぅぁぁぁぁぁぁっ!」


 淡は絶叫すると、その姿をぐにゃりと歪める。


 現れたのは……全身真っ黒な、人型の化け物。


 綺麗な卵型の頭部に、顔の無いそいつは……紛れも無い、『人工種のっぺらぼう科レイパー』だった。


 そして――のっぺらぼうの人工レイパーに、お面が憑りつく。


 だが、その着け方は、今までとは違っていた。


 今まで顔に張り付いていたはずのお面は、人工レイパーの上半身に出現したのだ。


 右肩に、般若のお面。


 左肩に、罅の入った翁のお面。


 背中に、姥のお面。


 胸元に、火男のお面。


 人工種のっぺらぼう科レイパーがこれまで吸収してきた四枚のお面が、同時に表に出てきたのである。


 それだけではない。


「な、なにあれっ?」


 優が驚愕に、目を見開く。


 人工レイパーの体の筋肉が肥大化し、まるで鎧のような風貌へと変化を遂げたのだ。


 さらに右手からは長く鋭い鉤爪が伸び、どこからともなく出現した金色の錫杖を左手で握る。


 そして、人間で言えば口のある場所にエネルギーが集中した瞬間。


「何ですのっ?」

「っ!」

「ウォッ?」

「きゃあ!」

「何っ?」

「やべっ……!」


 巨大な炎が、優達に襲い掛かるのだった。

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