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ヤバい奴が異世界からやってきました  作者: Puney Loran Seapon
第32章 新潟県警察本部
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第280話『相似』

 九月三日月曜日。午後四時二十一分。


 新潟県警察本部の、とある一室に集められた雅達。


 今日は平日だが、休み明けの初日であり、学校は午前で終わった。学生であるはずの者もここにいる。


 雅を除く新潟組の面々は、ULフォンによる立体映像だ。


 だが……。


「あれ? さがみんは?」


 辺りを見ても親友の姿が無く、ムスカリ型のヘアピンを着けた桃髪ボブカットの少女、束音雅が首を傾げる。


 すると、三つ編み高身長の少女、篠田愛理が「あー」と気まずそうな声を上げた。


「相模原の奴、結局宿題が終わらなくてな……」

「あぁ、居残りでやらされているんですね……」


 頷く愛理に、雅は苦笑いを浮かべることしか出来ない。


「提出時間ギリギリまで頑張っていたようだが、普通に間に合わなかったんだ」


 あと丸一日頑張って何とか終わるくらいには課題が残っており、いくら急ピッチで進めたところで間に合うはずが無かった優。


 今頃は、教室で先生に監視されながら、悲鳴を上げている頃だろう。


「ところで束音、君は今日――」


 と、愛理がそこまで言いかけた時だ。


 部屋に、優の母親である優香が入って来て、二人は会話を止める。優香は、ちょっと不機嫌そうな顔だ。


 優から『宿題が終わらなかったから居残りする……』と連絡を受け、ご立腹しているのは明らかだった。


 しかし、コホンと咳払いをしていつも通りの顔を作ると、「さて」と口火を切る。


「優以外の皆は揃っているわね。えー、改めて、ウラへの遠征お疲れ様。今日集まったのは、あなた達が向こうで回収した、サルモコカイアについて調査が終わったから、その報告をするためよ」


 ウラの北部にしか分布していない、珍しい植物のサルモコカイア。


 これは異世界の麻薬の原料であり、加工した際に出る廃液には、人工レイパーをパワーアップさせる効果がある。


 葛城は、ウラでサルモコカイアの廃液を集め、大きな力を手に入れようとしていた。


 しかし、廃液にはもう一つ、レイパー等の危険な生物を呼び寄せる臭いを出す効果がある。これにより、姥のお面と般若のお面に憑りつかれ、葛城は自我を失い、大暴れさせられた。


 そんな危険なサルモコカイアを、その効果の調査のために、雅達は日本に持ち帰って来たのである。収納魔法で異空間にしまえば、安全に運ぶことが出来た。


「資料は、皆のところにあるわね。細かい分析結果はそれを見てもらうとして……まず結論から言うと、悪い効果ばかりでは無かったわね」

「え、どういうことですか?」

「人工レイパーを強化するこの成分……これは応用すれば、命の(サーヴァルト・)護り手(イージス)をパワーアップさせたり、似たような武器を創れるかもしれない。ほら、コートマル鉱石、覚えているでしょ? エネルギーの構造は異なるけど、あれと同じようなものだったわ」

「コートマル鉱石と同じようなもの……となると、本当に強いエネルギーなのね。まぁ人工レイパーがパワーアップするくらいだから、当然かしら」


 感心したようにそう呟いたのは、白衣のようなローブを身に着けた、金髪ロングの女性、ミカエル・アストラム。


 コートマル鉱石というのは、彼女の故郷で採掘出来る鉱石だ。一度雅達がそれを回収し、優香達がそれを上手く使って、防御用アーツ『命の(サーヴァルト・)護り手(イージス)』を創り出したことがあった。


「まぁ武器と言っても、アーツみたいな直接的なものは難しいかもしれないけど……」


 優香の言葉に、思案顔をした愛理が首を傾け、口を開く。


「補助的なもの、ということでしょうか? 例えばエネルギー弾や魔法の威力をブーストするような……」

「ええ。ただ一個問題があって、廃液から抽出したエネルギーを入れる『器』が必要ね。かなりの力をもったエネルギーだから、頑丈なものじゃないと、すぐ壊れてしまうかもしれないわ」

「ア、そうでス。良いものを貰っていましタ」


 ツリ目をしたツーサイドアップの少女、権志愛がそう言って出したのは、腕輪やイヤリング、ネックレス等の装飾品。


 これらは全てマジックアイテムだ。とはいっても、効果は既に失われているが。


 ティップラウラの復旧作業の際に見つかり、処分することになったのだが、直せばまだ使えるのではと期待した志愛が持ち帰って来たものだった。


 なお、ティップラウラのバスターにはちゃんと許可を貰ってある。


「これなラ、エネルギーを蓄えられるのではありませんカ?」

「良いの持っているじゃないの、志愛ちゃん! それ、後で私に送ってもらえないかしら?」


 元々は魔力を溜めこんでいたアイテムだ。見た目によらず、エネルギーの類を内部に閉じ込めるには頑丈な作りになっている。


「ふむ……そうなると、真衣華のお父様の力もいりますわね」

「そだね。私からお父さんに話をしておくよ」


 そう言ったのは、ゆるふわ茶髪ロングの桔梗院希羅々に、なよっとした体つきをしたエアリーボブの少女、橘真衣華。


 真衣華の父親の蓮は、『StylishArts』で開発部長だ。彼の知恵があれば、良いアイテムが出来そうである。


 しかし真衣華は、そう言った後で不安そうな顔で再び口を開いた。


「でも、エネルギーだけ取り出しても、廃液は残るんだよね? 臭いは……」

「かなり特殊な薬品を使わないといけないけど、中和すれば大丈夫。手配はしてあるから、ひと月もすれば色々実験が出来るわ。その時は、ちょっと協力してもらうかもしれないわね」

「手伝えることがあれば、何でもしますよ。……そう言えば、サルモコカイアはどこに?」


 一歩間違えれば、レイパーを呼び寄せてしまう可能性がある。雅が気になって尋ねるのも当然だ。


 しかしその質問に、優香は僅かに笑みを浮かべ、「内緒」とだけ答えるのだった。

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