第30章閑話
雅達がウラに滞在していた頃。日本にて。
八月二十八日火曜日、午前八時三分。
ここは新潟市西区青山新町にある、公園。
そこに、数台のパトカーが止まっていた。
立ち入り禁止のテープが貼られ、事件があったのは明らかだ。
厳つい顔をした、短い髪の男性がテープをくぐり、現場へと入っていく。
相模原優一……優の父親だ。
捜査一課の警部である彼がここに来たのは――
「ガイシャは?」
「あちらです。しかし……」
「心配はいらん」
先に来ていた警官と、そんなやりとりをする優一。彼の顔は、少しばかり強張っていた。
公園の隅に倒れた少女。歳は十三歳程か。
首には絞められた跡があり、明らかに他殺。
そんな死体の元へとやって来た優一は……少女の顔を見て、顔を強張らせる。
(ちらっと話は聞いていたが、これは……)
ある程度覚悟していたつもりだったが、実際に見ると、やはりショックが大きい。
殺された少女の顔は、頬や唇の端が上へと吊り上がったもの……不気味な程に、笑顔だったのだから。
「……レイパーだな。それも、奴だ」
明らかに異常な死体。
これに、優一は見覚えがあった。
遥か昔の記憶が蘇り、優一は目を揉む。
子供を中心に襲う、凶悪なレイパー。
殺された子供達は、皆、不気味な笑顔で死んでいた。
この少女のように。
さらに、優一は地面に目を落とす。
土の感触が、公園内の他の場所に比べてざらついている。まるで栄養が抜け落ちたような、そんな土だった。
「あれから突然姿を消したはずだが、まさかこのタイミングで現れるとは……」
「目撃情報によると、そのレイパーはお面を被っていたそうです。先日のピエロのレイパーのように。そのお面は――」
「お爺さんの顔のお面だろう?」
警官の言葉を遮るように、優一は小さくそう告げると、警官は首を縦に振るのだった。
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