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ヤバい奴が異世界からやってきました  作者: Puney Loran Seapon
第29章 ティップラウラ
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第29章幕間

 時は、二週間近く前に遡る。


 八月十二日日曜日、午前十一時三十三分。新潟県警察本部、科捜研にて。


 丁度、雅達がカームファリア――ラティアの故郷を調べに行った場所だ――から帰って来て、優の両親の優一や優香にそこで起きた事件等の説明を行った後のことである。


「うーん……分かんないわねぇ……」

「ごめんなさい。私も分からないわね……」


 椅子の背もたれに体重を預け、唸るようにそう呟いたのは、優香。


 その隣で、ミカエルも眉を八の字に曲げ、首を横に振る。


 近くには、雅と志愛もいた。


 四人の視線の先には、二つの画像。空中に出されたウィンドウに映し出されていた。


 表示されているのは、雅と志愛。


 しかし、服装がいつもと異なっている。


 雅の方は、桃色の燕尾服。指揮者のような格好である。


 志愛の方の服装は、まるでチマ・チョゴリ。


 元からこのような服装だったわけでは無い。戦いの最中に、突然この姿になったのだ。


「優香さんでも、分かりませんか?」

「困りましタ……。何か少しでモ、手掛かりが欲しかったのですガ……」


 この姿になった時、二人は自分の体の奥底から力が溢れるのを感じていた。いつでもこの姿になれるようになれば、心強い戦力になるだろう。


 だが、二人がこの姿になれたのは完全な偶然。自由にこの力を引き出せる訳では無い。


 時間を見つけて、当時の感覚を思い出してなろうとしてみたものの、うんともすんとも言わない。


 故に、知識が豊富そうなミカエルや優香を頼ったのだが……回答はこの通りだ。


 しかし、優香は軽く唸ると、口を開く。


「まぁ分からないとは言っても、何も手掛かりが無いわけではないわ」

「エッ?」

「似たような事例は、極少数だけど確認されているのよ。日本だと、岩手と宮崎でそれぞれ一件ずつだったかしら? 自衛隊でも、同じような現象が確認されたという噂もあるわ。公にはなっていないし、四十年以上前の話みたいだけどね」


 日本だけでなく、アメリカやエクアドル、フランスやインド、中国等でもあったらしいと、優香は続ける。


「聞いた限り、どうもレイパーとの戦いで追い詰められた際に発生したらしいわ」

「こっちの世界じゃ、聞いたこと無いわね……。アーツを持っている人の数が少ないからかしら? でも、今の話を聞いて思ったのだけれど、ミヤビちゃんとシアちゃんは似ているようで、シチュエーションがちょっと違うわね」

「似ているけど、違う?」


 雅のオウム返しに、ミカエルはコクンと頷く。


「ミヤビちゃんの時は、あの魔王みたいなレイパーに追い詰められてあの姿になったわよね?  シアちゃんの方は直接見たわけでは無いけど、話を聞く限り、敵に止めを刺す直前に変化した。状況が逆なのよ」


 すると、優香が納得したように、「あー」と相槌を打つ。


「そう言われると、さっきの私の話は、雅ちゃんの方に近いわね」

「あなた達に起きたこの現象は、同じように見えて、実は別物……私には、そんな風に思えるわ」

「何にせよ、二人が一番知りたいであろうことは分からないのよね……。ごめんなさい、力になれなくて」

「いエ! お話を聞かせて頂けただけでモ、とてもありがたかったでス」

「似たような現象があるって分かっただけでも収穫です。こっちも、またあの力を引き出せないか、色々試してみますね!」


 志愛と雅はそう言うと、ペコリとお辞儀をしてから、科捜研を出るのだった。


 小さくパタンと音を立てて閉じる扉。


 一拍置いて、優香は再び口を開く。


「ミカエルちゃん、どう思う? さっきの二人の話」

「一度なれたはずの姿に、自由に変身出来ないというのは気になります。条件があるのか、エネルギー的な問題なのか……。ただ……」

「ただ?」


 優香の言葉に、ミカエルは少し考え込んでから、再び口を開く。


「一番気になるのは、シアちゃんの方かしら。聞く限り、彼女だけ他に確認された事例と、少し違いますから」

「成程……。私もその点は気になったけど、発生数がそもそも少ないから、例外のように見えているんじゃないかって思うわ。ミカエルちゃんの意見を否定するわけじゃないんだけど」

「件数が少ないのがネックですね。どうやっても、推測にしかならない。私達の世界では、そもそもそんな話すら聞いたことが無いけど……時間がある時に、こっちでも調べてみようかしら」


 ミカエル達の世界は、雅達の世界程、情報の共有がされている訳では無い。


 自分が知らないだけで、探せば見つかる可能性は、充分にあった。


 と、ミカエルがそんなことを考えていると、


「ミカエルちゃん。私が一番気になっているのはね、発生頻度よ」


 優香が、顎に手をやりながら、そう言った。


「極稀な現象なはずなのに、それが身近で二件も起きた。これが、一番不可解だわ。それも、この短期間に」


 同じ現象なのか、違う現象なのかは分からない。ミカエルは『違う現象ではないか』と言ったが、それはあくまでも推測だ。


 しかし、不可解なことが二件も起きた、というのは事実である。


 そして、優香の勘が告げるままに、こう言う。




「もしかするとミカエルちゃん達にも、同じような現象が起きるかもしれないわね」




 と。

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