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ヤバい奴が異世界からやってきました  作者: Puney Loran Seapon
第28章 ノストラウラ
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第28章閑話

「――つーわけで! うちは本当はっ! 人身安全対策課や少年課みたいにっ! 子供と触れ合えるとこに行きたかったんすよぉ!」


 雅とラティアの首を小脇に抱え、焦点の定まっていない真っ赤な顔で愚痴る伊織。


 雅が「アルコール度数が低い」と嘘をついて飲ませた酒で、完全にスイッチが入ってしまった。


「でも目つき悪くて怖がられてぇ! ちっとアーツ使えるっつーんで今の部署に回されてぇ! やってらんねぇっすよもぉ!」

「あわわあわわあわあわわ……」


 肩を掴まれ、前後にグワングワンと揺らされる雅。


 内心で冷や汗ダラダラである。やっべやり過ぎた、どうしようって感じだ。


 すると、伊織は雅を突き飛ばすように解放すると、


「ラティアちゃんは良い子っすねぇっ! こんなうちを見てもビビらねーですもんっ!」


 そう言って、今度はラティアに絡む。


 抱きつかれたラティアは目を白黒させながら、伊織にされるがままになっていた。


「あぁほらほらどうしたんすか二人ともぉ! 今日はうちのおごっりすよぉ! ほら、もっとじゃんじゃ食べる食べるっ! あ、店員さんお酒おかわりっす!」

「あ、あの伊織さんっ? お酒はもうその辺にしておいた方が――」

「何言ってんすかぁっ? 飲ませたの、雅ちゃんじゃねーっすか! 最後まで面倒みてくらしぇーっすよぉ! うちお酒だーいすきぃっ!」


 グラスを掲げ、上機嫌に叫ぶ伊織。


 結局この後、伊織は気を失うまでお酒をガブ飲みするのだった。




 ***




「ぅん……? いてて……」


 次の日の朝、窓から差す太陽の光で、伊織は目を覚ます。


 目に映るのは、見知らぬ天井。ガンガンする頭を抑えながら上体を起こし、そこで伊織はやっと、ここが宿の一室で、ベッドに寝かされていたのだと気が付く。


「……あー」


 やっちまった……と伊織は深く目を閉じる。


 昨日、お酒を飲んでからの記憶が無い。


 おのれ雅ちゃんめ……と思う一方、どうかヤバいことをやらかしていませんようにと、最早ここまできたら祈るしかない伊織。


 すると、


「えぇっ?」


 突如、伊織の口から変な声が漏れる。


 隣で、雅がスゥスゥと寝息を立てている。


 奥には、ラティアと……浅見四葉の姿。


 まぁこれは良い。


 何故か雅が裸である点を除けば、だ。


「えっ? ……えっ?」


 疑問の声を漏らしながら、顔が青褪める伊織。


 一体自分は、雅に何をやってしまったのか? 酔った勢いに任せて、良からぬことをやってしまったのではないか?


 淫行、青少年保護育成条例違反、児童福祉法違反……そんな単語が、伊織の頭に浮かぶ。


 そんな時、


「……ふぁ……あ、もう朝れすかぁ?」


 欠伸をしながら、雅が目を覚ます。


 そして、


「あ、伊織さんおはようございます。――昨晩はお楽しみでしたね」

「あぁぁぁぁぁぁあっ!」


 部屋に響く絶叫。


 必然、


「ちょ、な、何っ? えぇっ? あなた達、なんでいるのっ? 大体あなた、なんで裸で――」


 四葉とラティアもびっくり跳び起きる。


 四葉は何故か自分の部屋に雅達がいることと、雅が裸なことに、思考が追い付かない。


 ラティアも慌てたように辺りを見回しており、何が何だか分かっていないらしい。


「あぁ四葉ちゃん、泊めてくれてありがとうございました!」

「何でいるのよあなた達!」

「えぇ? ちゃんと許可とりましたよ? 覚えてません?」

「そんなことより! うちは一体何をやらかしたんすかっ? ねぇ雅ちゃんねぇ!」


 カオスな光景。


 真相はこうだ。


 酔っぱらった伊織を介抱しながら、宿へと戻った雅とラティア。


 泥酔具合が半端なかった上、ラティアも歩きながら船をこぎ始めたこともあり、一番近いところにある四葉の部屋で、一旦休ませてもらおうと雅は考えた。


 普通なら、四葉に追い出されて終わりだ。


 だが……四葉は寝ぼけていた。


 夜遅い時間だというのもあったが、何より四葉も、葛城との戦いで疲れ切っており、ほとんど寝ていると言って良い状態だったのだ。


 訪ねてきた雅達を部屋に通し、伊織とラティアをベッドに横にする雅をボーッと眺め、そのまま寝落ちしてしまった四葉。


 それを見て一瞬慌てた雅だが、その時、彼女の頭に電流が走る。


 もしやこれは、一緒のベッドで寝るチャンスなのでは?


 そんな考えが頭を過った次の瞬間には、雅は四葉もベッドに寝かせ、服を脱いでベッドにダイブ。


 最初はちょっと三人に抱きついた後で自分の部屋に戻るつもりだったのだが、ベッドに横になった瞬間、急激に疲労が襲ってきて、そのまま寝落ちしてしまい、朝のあれに至ったという訳だ。


 最も、そんなこと等欠片も覚えていない三人が騒いでいると、


「これ! 宿で騒ぐでない!」

「他のお客さんの迷惑ですよ!」


 四葉の部屋の扉が勢いよく開かれ、プンスカ怒ったシャロンとノルンが入って来る。


 部屋の騒ぎは、彼女達が泊っている上の階まで聞こえていた。


 後ろには真衣華とファムもおり、シャロン達とは対照的に、二人はどこか面白がっているような顔だ。


 しかし、裸の雅を見て、四人の顔が強張る。


「タタタタバネお主何をしとるんじゃっ?」

「はーい二人は見ちゃだめだよー! てかラティアちゃんもいるじゃんっ!」


 ノルンとファムの目を手で覆いながら、真衣華は愕然。


 当のラティアは、裸の雅をジーっと見つめ、なんで裸なのかと言わんばかりに小首を傾げていた。


「あぁ別に何か悪いことがあった訳では――」


 流石にヤバいと思った雅が、慌てて言い訳をし始めた、その瞬間。


「えぇいタバネェッ! 子供の前じゃろうがぁっ! 何を考えておるんじゃお主この馬鹿者めぇ!」


 青筋を浮かべたシャロンの雷が落ちた。




 ***




 そして、服を着た状態で床に正座し、事情をきちんと説明した雅。


 ラティアにちょっとジト目で見つめられる中、伊織、四葉、シャロン、ノルンの四人にひとしきり叱られた後、


「あ、そうだ! 私、優ちゃんから、雅ちゃんに鉄拳制裁する許可貰ってたんだ!」


 ポンっと手を打って、そんなことを言い出す真衣華に、雅の顔も青くなる。


「よし、やれタチバナ。きついのを頼むぞ」

「待ってください真衣華ちゃん待って本当に待って。私今ちゃんと叱られたばっかり――」

「もんどぉむよぉっ!」

「ちょ、スキルは止め――」


 雅が言い終わる間でも無く、スキル『腕力強化』により威力の増した真衣華のアッパーが、雅の顎を捉えたのだった。

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