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ヤバい奴が異世界からやってきました  作者: Puney Loran Seapon
第28章 ノストラウラ
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第245話『静殺』

 優とライナが出会った男性は、村長だった。


「そいつが、いつからいたのかは分からない。だが昨晩、気が付いた時にはもう、多くの女性が殺されていた」


 優とライナのところに、愛理とセリスティアが合流した後、目撃者の男性は語り始める。


 女性を殺していたということから、犯人はレイパーであることは明らかだ。


 だがそれを聞いて、四人の頭の上に『?』が浮かぶ。


「まるで、こっそり殺されていたというような口ぶりね? 大暴れしていた、という感じじゃなかったんですか?」

「うん? ああ、静かなものだった。誰も気が付かない内に、どんどん人が殺されていったんだ。生き残った村民を、近くの村に避難させて……聞けば、他の村でも被害があったらしい。村人が全滅したところもあったそうだ」

「全滅っ? 男性も女性も、皆殺しにされたんですかっ?」

「レイパーの殺しの邪魔をしたからかもしれねーな。男を積極的に襲うことはねーが、邪魔されりゃあ躊躇なく殺す奴らだ」


 愛理の驚いたような発言に、セリスティアは吐き捨てるようにそう答える。


「聞きにくいことなんですが……殺された方の死体が無いようですが、あなた方が回収されたんですか?」

「……ああ。午前中にな。一晩経って、流石に奴もどこかへ消えたようだったから……。死体のことは、あまり思い出したくない。顔が酷い状態にされていて……それを見て泣き崩れる人が……」


 村長は、他に逃げ遅れた人や回収されていない死体が無いか確認していたところで、そこに愛理達がやって来たのだと言う。


 そして辺りを見回し、元から苦しそうだった顔を、さらに歪めた。


「それにしても、我々が逃げた後に、建物まで壊すとは……」

「え? これって、レイパーが女性を襲った後にやった際に壊れたんじゃないんですか?」

「ああ。言っただろう。『気が付いた時にはもう、多くの女性が殺されていた』って。誰も気が付かない内に、たくさん殺されていたんだ。その時は、建物もこんなんじゃなかった」

「……妙ですね。どうにも殺人が大人しすぎます。これじゃまるでアサシンですよ」


 村長の言葉を聞いたライナが、愛理にこっそり耳打ちをする。


「全部終わった後に、建物を壊したというのも変だな。何故そんな無駄なことを?」


 標的を探すために建物を壊して回っていたのならともかく、既に殺しが終わった後で破壊活動をする意味は無い。


 愛理もライナも、浮かんだ疑問に首を傾げた。


 そんな中、優が口を開く。


「襲ってきたのはどんな奴か、分かりますか?」

「ちらっとだけだが、俺も見た。夜でうっすらとしか見ていないから、説明しろと言われると難しいな……。もう一度出てきたら、襲ってきた奴かどうか分かると思う」

「こんな奴ではありませんでしたか?」


 言いながら、優はULフォンを操作し、般若のお面を被った、人工種ドラゴン科レイパーの画像を見せる。


 これが葛城の変身する人工レイパーだ。画像は雅から送られてきていた。


 しかし……いや、やはりと言うべきか。


「いや……違うな。お面を被っていたのは間違いないと思うんだが……こんな、人型の竜のような奴では無かった」

「……クズシロじゃない、ってことか。だけど、お面を被っていた? どういうことだ?」

「もしかして、お面を被ったレイパーが、もう一体いるんじゃありませんか?」

「かもしれねぇな。わりぃ、村長さん。殺された女性の顔なんだけど――」


 と、セリスティアがそこまで言った時、


「村長! こっちに来てくれー!」


 遠くから、男性が呼ぶ声が聞こえてくる。


「……多分、まだ残っていた死体が見つかったんだろう。少し行ってくる」


 そう言って、声のする方へと向かう村長。


 セリスティア達も、後を追うのだった。




 ***




 予想通り、女性の死体がそこにはあった。


 一人では運べないため、助けを呼んだのである。


 だが、それを見た愛理と優は、思わず顔をそむけてしまう。


 殺された女性の顔は、鋭利なものでズタズタに斬り裂かれており、原型が分からない程、あまりにも無残な状態であった。


 仕事柄、死体を見慣れているはずのセリスティアとライナでさえ、顔を覆いたくなるような有様だ。


「……ひでぇこと、しやがる」


 セリスティアが呟いた言葉に、村長は拳を握りしめる。


「あぁ。こんなんじゃ無かったんだ。こんな……ただでさえ老けたような顔に変えやがったのに、その上ズタズタにするなんて……」

「老けた顔にされた? それって――」


 と、ライナがそこまで言った、その時だ。




 ザッ、ザッ……という足音が、遠くから聞こえてきた。

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