表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤバい奴が異世界からやってきました  作者: Puney Loran Seapon
第28章 ノストラウラ
313/669

第244話『薄弱』

「皆、ごめんなさい! 私の判断ミスだった……!」


 人工種のっぺらぼう科レイパーから逃げ、三十分後。


 身を隠せそうな洞穴を見つけ、そこで敵を撒くことにした四人。


 そんな中で、レーゼは希羅々、志愛、ミカエルの三人に、頭を下げた。


「奴が現れたところで、撤退するべきだった。そうしなかったせいで、こんなことに……」

「レーゼさんのせいではありませン。窮地に陥った原因ハ、私にもありまス」


 軽く火傷した腕を、濡れたタオルで抑えながら、志愛は首を横に振ってそう呟く。


 逃げようとする男を、迂闊に追いかけようとしてしまった。思えばあれのせいで、敵に主導権を握られてしまったのだ。


「はいはい二人とも、反省会はそこまでに致しましょう。もう終わったことですわ」

「ちょっとキララちゃん、駄目よ! まだ安静にしていないと……」


 防御用アーツ『命の(サーヴァルト・)護り手(イージス)』を発動させていたとは言え、希羅々は火炎放射をもろに受けたのだ。あちこち火傷もしており、ダメージも大きい。ミカエルがそう言うのも、無理は無かった。


「平気ですわ。動けない程ではありませんし、この通り、応急処置もしていますし」

「応急処置はあくまでも応急処置よ。ちゃんと手当しないと」

「……流石にまだ、奴が近くをうろついているかもしれない。もう少しここに隠れて、日が暮れる前に街へと戻りましょう」


 言いながら、レーゼは拳を握りしめる。


 自分がもっと強ければ、彼女達を守りながら帰ることも出来た。いやそもそも、撤退に追い込まれることも無かっただろう。レーゼはそう思ってしまう。


 己の無力さが、ひたすらに悔しかった。




 ***




 一方、その頃。


 ここは、ノストラウラの東の地域。丁度、レーゼ達がいるところと真逆の方向だ。


「うひゃぁ……こりゃ、ひでぇな……」


 崩壊した村を見て、赤毛の女性、セリスティア・ファルトは、溜息を吐くようにそう呟く。


 色々と話を聞いて回ったところ、この辺りに壊滅させられた街があると聞いてやって来たのだ。葛城がやったのかは分からないが、何か手掛かりがあると思ったのである。


「これ全部、葛城がやったのかな?」

「うーん……?」


 黒髪サイドテールの少女、相模原優と、片目を隠した銀髪の少女、ライナ・システィアも、この惨状を見て眉を寄せる。


 優の言葉に、ライナは首を傾けた。


 煉瓦で出来ていた建物は壊れて瓦礫と化し、地面は抉れ、微かに死臭も残っている。


 だが何となく、葛城の仕業のように思えなかった。明確な根拠があるわけでは無いが。


「死体がありませんね。既に誰かがここを見つけて、近くの村にでも知らせたのかもしれません。そっちは後で話を聞きに行くとして……葛城に繋がる手掛かりがあるかもしれませんし、少し探してみましょう」


 辺りを見回しながら、三つ編みの少女、篠田愛理がそう提案する。


「だな。四人で纏まっていても効率わりぃし、二手に別れるか。俺とアイリは向こうを見てくるから、ライナとユウはこの辺りを調べてくれ」

「敵の気配は無いけど、警戒は怠らないようにしないとね。気をつけなきゃ」


 優の言葉に、三人はコクンと頷いた。




 ――そして、探し始めて間もなく。


「……む?」


 愛理のULフォンに、メッセージが届く。


 優から何か来たのかと思ったが、差出人はレーゼだ。


 メッセージに目を通すと、愛理は眉を顰め、セリスティアに声を掛ける。


「マーガロイスさん達から、連絡が来ました。向こうで、我々が前に戦った、あののっぺらぼうの人工レイパーが現れたそうです」

「あぁ? おいおい、あいつら無事なのか?」

「手酷くやられたみたいですが、生きていますね。今は身を隠して、様子を見て街へと戻るそうです」


 愛理の言葉に、セリスティアはほぅっと安堵の息を吐く。


「そうか……無事なら良かったぜ。でも、何でここに奴らが? ――いや、そうか。あいつら、あの謎のお面を狙っているんだもんな。それが葛城に憑りついたんだから、来ていてもおかしくねえか」

「彼の身に起こったこの一件は、久世側が仕組んだことのようですしね。葛城の部下もその場にいましたが、逃げられたとのことです。その男なんですが、どうやらマーガロイスさん達の話では、久世と内通していた様子みたいですね」

「部下の一人が裏切ったってことか。いや、最初からクズシロを罠に嵌めるつもりで近づいたのかね?」


 セリスティアの疑問に、愛理は黙って首を横に振る。


 そこら辺のことは、本人から直接話を聞かなければ分からない。


「とにかく、ノストラウラに奴がいると分かった以上、バラバラに行動するのは危険です。一旦相模原とシスティアに合流しましょう」

「そうだな。ライナに連絡して――うん?」

「どうしました?」

「いや、ジャストタイミングだ。向こうから連絡が来た。ちょっと待ってろ」


 そう言って、通話の魔法でライナと話し始めるセリスティア。


 すると、セリスティアは目を丸くする。「おう、分かった。すぐにそっちに行く」と言って、通話を切った。


 そして、


「アイリ。向こうに人がいたってよ。この村で何が起きたのか、知っているみたいだ。これから話を聞くらしい。俺達も行くぞ」


 そう言うのであった。

評価や感想、いいねやブックマーク等、よろしくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ