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ヤバい奴が異世界からやってきました  作者: Puney Loran Seapon
第24章 新潟市中央区②
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第24章閑話

 一方、ピエロ種レイパーを倒した、雅と優はというと。


「さがみん、もしかして、新しいスキルを貰いましたか?」


 レイパーに止めを刺した時、優の眼が赤く染まったのを見ていた雅はそう尋ねる。


 アーツも淡く光っていたので、きっとスキルを授かったのだろうと思ったのだ。


 しかし、優は首を横に振り、スナイパーライフル型の新しいアーツ『ガーデンズ・ガーディア』を見つめる。


「スキルで間違いないと思うけど、今はもう使えない。多分、二個目のアーツだからかも」


 一般的に、元々スキルを持っている人が、様々な事情で別のアーツを使い始めた場合、新しいスキルを貰うには相当な時間を要する。詳しい理由は明らかにされていないが、新しいアーツが、以前使っていたアーツに嫉妬して、中々スキルをくれないという説が有力だ。


 真衣華のように、二つのスキルを持っているというのは、本当にレアケースなのである。


「もしかすると、ガーデンズ・ガーディアも初陣だったから、色々張り切っていたのかな? お試しってことで、私にスキルを使わせてくれたのかもしれない」

「サービス精神が豊富なアーツですねぇ」


 雅はそう言うと、優と共にクスリと笑う。


 そして一転、真剣な面持ちになると、レイパーが倒された場所へと目を向けた。


 爆発の煙はまだ晴れない。


「さがみん、念のため、アーツは出したままで。お面がまだ残っているかもしれません」

「うん」


 以前、四葉とレーゼと一緒に、般若のお面を着けたレイパーを倒した際、お面だけは無傷だった。恐らく、今回もそうだろうと予想している。


 ワルトリア峡谷の一件で、お面が人間に憑りつき、意のままに操ってしまうことも知っている。油断は禁物だ。


 雅と優は、それぞれアーツを構える。


 しばらくすると、煙も薄くなってきて――二人の顔は強張った。




 地面には、予想通り、火男のお面が落ちていた。しかも無傷で、だ。




「みーちゃん! 破壊するよ!」

「ええ!」


 これ以上、お面に好き勝手させるつもりは無いと、雅と優はお面に攻撃をしようとした、その刹那。


「っ? 待ってさがみん!」

「えっ? ……っ?」


 辺りに立ち込める煙の中に、何かの気配がある。


 雅の制止で、優もその気配に気が付いたのだろう。目を凝らすと、煙の中に、人型の黒い何かがいた。


 一体何時からそこにいたのか。


 ピエロ種レイパーばかりに気を取られていた雅と優は、今までその存在に、全く気が付かなかった。


 突然のことに、硬直する二人。


 やっと煙が消え、そこにいた存在を目視すると――雅と優の顔が、緊張で強張る。










 そこにいたのは、のっぺらぼう。










 真っ黒なそいつは、雅と優は初めて見たが、知っている。


 こいつは以前、久世への手掛かりを探して、三条市の下田地区のログハウスに行った時にレーゼ達が戦った、人工レイパーだ。


 分類は、『人工種のっぺらぼう科』。


 何故そいつがここに、という疑問が、雅と優の頭の中を駆け巡る。


 自分達を殺しに来たのか、と冷や汗を流す二人だが、すぐにそうではないと分かった。


 のっぺらぼうの人工レイパーには眼が無いが、それでも敵の意識は、地面に落ちているお面に向けられているのが分かる。


 火男のお面がカタカタと震えると、宙に浮かび上がった。


 雅と優は察する。お面は、ここから逃げようとしているのだ、と。


 のっぺらぼうの人工レイパーの手が、浮かんだお面へと伸びる。


 お面がこの場から飛び去ろうとする前に、のっぺらぼうの人工レイパーの手が、お面を捕えた。


 そして――










 呆気にとられる雅と優の目の前で、のっぺらぼうの人工レイパーは、自らそのお面を被る。










 刹那、お面はのっぺらぼうの顔へと吸い込まれていく。


 二人は理解する。この人工レイパーはお面を着けたのではなく、取り込んだのだと。


 余りにも異様な光景に、立ち尽くす雅と優。


 刹那、のっぺらぼうの人工レイパーは体を震わせると、頭を抱えて苦しみだした。




 ただ見つめることしか出来ない二人の目の前で、のっぺらぼうの人工レイパーは、よろめきながらも姿を消すのだった。

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