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ヤバい奴が異世界からやってきました  作者: Puney Loran Seapon
第24章 新潟市中央区②
274/669

第24章幕間

 優と雅が、ピエロ種レイパーを撃破してから五分後。


 新潟市急患診療センターに、八人の女性がやって来る。


 愛理を先頭に、セリスティア、志愛、真衣華、希羅々、レーゼ、ライナ、そして四葉だ。


 それぞれ人工レイパーを倒したり、ピエロ種レイパーと交戦したりした後、合流したのである。


 レーゼや希羅々は手当が必要な程に負傷し、他の六人も無傷では無い。優の様子を確認するついでに、ここに治療を受けに来た。


 この中では、四葉が最も平気そうな様子。装甲服型アーツ『マグナ・エンプレス』の防御力が優れているのもあるが、四葉自身も鍛えてあるというのが大きな理由である。


 故に、別に病院に行くまでも無いと思っていたのだが、真衣華から「念のため、診てもらった方が良い」と強く勧められ、断れなかった。


 最も、理由はそれだけでは無いが。


 レーゼや希羅々の介抱に、人手が要りそうだと思ったのもある。


 そして何より、火男のお面を被ったレイパーの行方に、最も近いのが彼女達だから、情報を得ようという目的もあった。


 しかし、


「え? 奴がここに現れた?」

「ええ。でも、さっき海の辺りで、大きな爆発があったって聞いたわ。多分もう、倒されていると思う」


 ミカエルからそんな話を聞かされ、四葉は眉を寄せる。


 正直なところ、逃がしたレイパーは自身の手で確実に仕留めておきたかった。四葉が戦う理由の一つに、今自分が使っているマグナ・エンプレスの宣伝というのがあるからだ。


 しかし、レイパーが倒されたのは素直に喜ぶべきこと。不満そうな気持になってしまったことを、四葉は内心で恥じる。


 とは言え、だ。


「あのレイパー、火男のお面を着けていた。きっと警察の方で、色々調べるでしょう? 何か分かったら、こっそりでも教えて欲しい」


 四葉はミカエルとは初対面であり、話しかけた際は、互いに自己紹介から始まった。その時、ミカエルが警察と繋がっていることは聞かされてある。


 四葉も、お面を着けたレイパーを探していた。火男のお面ではない、別のお面だ。妹を殺した敵のレイパーは、未だ倒されぬままどこかへ逃げている。火男のお面は、そいつに繋がる手掛かりになるかもしれなかった。


 その理由をわざわざミカエルに話はしなかったが、四葉の頼みに、ミカエルはどこか鬼気迫るものを感じたのだろう。「分かったわ」と了承してくれた。




 ***




 十分後。


 ミカエルと話を終えた四葉は、待合室の椅子に座り、自分の番が来るのを待っていた。


 周りには、他にもレイパーに襲われた人達で溢れている。


 帰れるのは何時になるのやらと、四葉が若干渋い顔をしていると、遠くからセリスティアがやって来るのが見えた。


「うぃっす、ヨツバ。さっきはサンキューな」

「別にお礼なんていいわよ。大したことは――」


 そこまで言いかけて、四葉の言葉が止まる。


 セリスティアはラティアの手を引いており、四葉の目は、ラティアに釘付けになっていた。


 ラティアは美しい少女だ。普通に歩いていても、すれ違った人が思わず振り向いてしまうくらいには。


 最初セリスティアは、四葉もきっとラティアに見惚れたのだろうと思ったが、すぐに様子がおかしいことに気が付く。


「どうした?」

「い、いえ。なんでもないわ」


 四葉は目を見開いているのだが、どこか動揺している印象を受けた。その顔に浮かんでいる感情は、どちらかと言えば『恐怖』に近い。


 ラティアは表情こそ変えないが、四葉の態度に、少し困惑している雰囲気を醸し出していた。


 ラティアが四葉の隣に座ると、スッと四葉は横に移動する。


 さらにラティアが詰めようとするが――四葉はそれを、目で制した。


 ギロリと光る、鋭い眼差しに、ラティアの体がビクリと震える。


「おいおい。あんま威嚇するなよ。相手は子供だぞ」

「いや、別に威嚇したわけじゃ……。そんなつもりは……。でも、ごめんなさい」


 窘めるような口調のセリスティアに、四葉の言葉も弱々しいものになる。


 自分の態度にしょげるラティアを、四葉は長く見ていられなかったのだろう。


 四葉はそっぽを向くと、一言も喋らなくなってしまった。

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