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ヤバい奴が異世界からやってきました  作者: Puney Loran Seapon
第24章 新潟市中央区②
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第216話『仲直』

 林の中で広がる煙幕。


 火男のお面を着けたピエロ種レイパーが、邪魔をしてくるファムや、スキル『影絵』により創り出された分身雅から逃げるために、黒いジャグリングボールを地面に叩きつけたことによって、発生したものだ。


 ピエロ種レイパーの目的は、優の殺害。どうでも良い二人を相手にする気は、毛頭無い。


 煙幕で目を晦ませば追っては来れまいと、レイパーが二人に背を向けた刹那。


「逃がすもんかっ!」


 ファムが、背中から伸びた白い翼型アーツ『シェル・リヴァーティス』を激しく羽ばたかせ、辺りに充満する黒煙を全て吹き飛ばした。


 そして、分身雅を抱えて舞い上がると、そのまま彼女の足を持ってその場で回転し、遠心力の勢いを付けてレイパーの方へと投げ飛ばす。


 分身雅の手には、剣銃両用アーツ『百花繚乱』が握られており、その切っ先はレイパーの体へと向けられていた。


 こんな攻撃、生身の人間では危険極まりない。分身雅だからこそ出来る技である。


 真っ直ぐ飛んでいく雅と百花繚乱が、レイパーの体に突き刺さる……が、


「――っ?」


 おおよそレイパーの体とは思えない、ぐにゃりとした手応えの直後、傷口から溢れ出す大量の綿に、雅の顔が驚きに染まる。


 そこにいたのはレイパーでは無く、レイパーの姿をしたぬいぐるみだったのだ。


 本体は、ぬいぐるみの少し後ろに隠れていた。


 一方、空を飛んでいるファムの目は、レイパーの手元へと注がれている。


 雅を投げ飛ばした後、別方向から攻撃しようと、すぐに移動した彼女には、一連の流れが見えていた。


 攻撃に気が付いたレイパーが、どこからともなく小さな水晶を取り出し、それを使って自分の姿を模したぬいぐるみを創り出したところを。


 あれを破壊しない限り、ファム達の攻撃はことごとく透かされてしまう。


 ならば、やることは一つだ。


 ファムはシェル・リヴァーティスの持つ攻撃性能を使い、十枚もの羽根を飛ばす。


 狙いは、レイパーの持つ水晶だ。


 だが、直線的に放たれたその攻撃は、このレイパーにとって回避するのは容易い。


 軽やかなステップで、飛んでくる羽根を、紙一重で躱してしまう。


 その時だ。


「ッ!」


 横から巨大な剣が飛んできて、レイパーの体に直撃する。


 飛んできたのは、百花繚乱。分身雅が、レイパーに向かって投げつけたのである。


 アーツを捨てるような攻撃は、普通なら自殺行為だが、分身雅にとっては関係が無い。


 分身雅も、先のファムの攻撃で水晶に気が付いたのだ。


 アーツをぶつけられた衝撃で、レイパーは、思わず水晶を落としてしまった。


 拾いに行こうとするレイパーだが、それよりも早く、ファムの放った羽根が水晶に命中し、パキンと軽い音を立てて砕け散る。


 これでもうピエロ種レイパーは、ぬいぐるみを使った攻撃や防御は出来ない。


 声にならないレイパーの叫び声が、聞こえたような気がした。


 敵の戦術を一つ潰せたと笑みを浮かべるファム。


 だが、その時。


「えっ? ちょっとちょっとっ?」




 レイパーの被った火男のお面の口から炎が放たれ、林に火が着いてしまう。




 丁度、ファムのいる辺りが燃え始め、彼女の顔が青褪める。


 キレたレイパーがした思わぬ行動に、気を取られてしまうのも仕方ないだろう。


 しかし、それは決定的な隙を生み出してしまった。


 自分から目を逸らしてしまったファムへと、レイパーは黄色いジャグリングボールを投げつける。


 しまった、と思った時には、既に遅し。


「――っ?」


 ジャグリングボールが命中し、ファムの体に電流が迸る。


 墜落するファム。


 地面に激突する前に、分身雅が間一髪で受け止めたが、レイパーはその間に優を追って姿を消してしまった。


 炎が、辺りを包み込む。


 分身雅は、ファムを抱えると、彼女を炎から庇いながら、林の外へと逃げるのだった。




 ***




 一方、時は少し前に遡り、現在レイパーから逃走中の優は、林の中を逃げ回っていた。


 シャロンがやられた音が聞こえた時点で、レイパーが林の中に入って来たことは、何となく察した。


 ここなら身を隠す場所はいくらでもあるが、それはレイパーも一緒。


 いつ、どこから敵が出てくるか分からないことが恐怖に繋がり、かと言って林から出れば、すぐに見つかってしまうだろう。優は行く当ても無く、ただ闇雲に逃げ回ることしか出来なかった。


 音を立てれば見つかるかもしれないという考えから、激しくなりそうな呼吸を押し殺す。


 だが少しでも遠くに逃げたい一心で、足音がするのも気にせず、とにかく走る。


 自分の行為が矛盾していることに気が付いていても、本人にはもう、どうにも出来ない。まるで自分の体ではないように、優は感じていた。


 しかし逃げている内に、体が疲れてきた。そこでやっと、優は近くの木に背中を当ててしゃがみこむ。


 辺りを見回すが、取り敢えず、レイパーはいない。


 助けを呼ぶのに連絡をとろうとするが、そこで優は、自分が今どこら辺にいるのか、よく分かっていないことに気が付いた。


 調べている時間は無い。


 とにかく、雅にSOSのメッセージを送ろうとしたところで、ふと指が固まる。


「みーちゃん……!」


 親友の顔を思い浮かべたら、思わず、彼女の名前を呼んでしまっていた。


 死にたくない。


 だがそれ以上に、親友と喧嘩したまま死ぬのは、もっと嫌だった。


 その想いが、優にそんなことをさせた。




 ――その時だ。




「呼びましたか? さがみん」

「っ!」




 突然聞こえたその声に、優は飛び上がる。


 口が震えるが、声は出ない。人は本当に驚いた時には、言葉が出なくなるのだ。


 そこにいたのは、桃色の髪をした、ボブカットの少女。白いムスカリ型のヘアピンを着けた彼女こそ、優の親友である束音雅だ。


 顔や腕には大小様々な傷が見え、髪もボサボサ。どうして彼女がここにいるのか、考えるまでも無い。


「おぉっと」


 気が付けば、優は雅に抱きつき、涙を零していた。


「遅くなってごめんなさい。でも、もう一人じゃ無いですよ」


 雅は、優の頭を撫でながらそう言った。


 そんな雅に、優は何か言おうとして……真っ先に言わなければならないことを思い出す。


 優は急いで雅から離れると、


「さ、さっきはごめん!」


 一気に頭を下げて、そう言った。


「ついカッとなってしまったけど、あんな風に突き飛ばすつもりは無かったの。もう怒ってない。本当にごめん!」


 勢いのまま、自分の気持ちを正直に伝える優。


 言い終わってから、優は、謝れた自分自身に驚いた。


 雅も、まさか優が素直に頭を下げるとは思っていなかったため、彼女の謝罪を、ポカンと口を開けて聞いていた。


 が、それも数秒。


 雅は、覚悟を決める。


 優がちゃんと謝ったのだから、今度は雅の番だ。


 だが、最初に口にすべきなのは謝罪では無い。


「さがみん。……左手、出して下さい」

「え? わ、分かった」


 言われた通り、スッと左手を差し出す優。


 雅は優一達から貰った指輪を取り出すと、それを彼女の薬指に嵌める。


「ちょ、あんたこれ……」

「新しいアーツを預かってきました。どの指に嵌めるべきか悩みましたけど、右手には『霞』の指輪があるから」


 同じ手に二個指輪があるのは、何かと不便だろう。そう思って、雅は何気無く左手の薬指を選んでいた。


「私は、もう迷わない。さがみんを巻き込むことを。色々考えたけど、やっぱり私には、さがみんの力が必要です」


 他ならぬ優が、自分と戦うことを望んでいる。


 ファムとラティアと話をして、優一と優香に励まされ、冷静になった頭で色々考えたら、驚くほどあっさり結論が出た。


 危険を承知で、親友を仲間に加えるという行為は、随分自分勝手なように雅は思う。きっと死んだら地獄行きかと、雅は自嘲する。だがそれでも良かった。


「さがみん。これから、もっとヤバい奴と戦わないといけないかもしれない。今日よりも怖い思いをするかもしれない。最悪、死ぬかもしれない。でも、それを分かった上で、さがみんは私に力を貸してくれる」


 雅は、優の手をギュッと握る。







「だから私も、覚悟を決めました。レイパーを全滅させるの、付き合ってください」

「当り前じゃない。こっちは最初から、どこまでもみーちゃんの側にいるつもりよ」







 優は雅の言葉に即答すると、彼女の手を握り返す。


 その時だ。


 遠くで爆発音がして、林が燃えだした。


 驚く二人。だが、それだけでは終わらない。


 ガサガサと音がした。二人はそちらを見て、揃って眉を寄せる。


 そこに現れたのは、手首と足首だけを膨らませた細身のボディで、大きく曲がった二本の角を生やしたレイパー。


 その顔には、ほっかむりを被り、口を窄めた男の仮面が着いていた。


 火男のお面を被った、ピエロ種レイパーである。


 ファムと分身雅を退けたレイパーが、優の元へと辿り着いたのだ。


 お面で顔が分からないが、きっと獲物を見つけて、笑みを浮かべているに違いないと、二人は確信する。


 ギロリと、二人の目が光った。


「あんた……よくもしつこく私のことを追い回してくれたわね。しかも色んな人を殺した挙句、シャロンさん達まで傷つけて……絶対に許さない!」

「もう二度と、あなたにさがみんは狙わせません。今ここで、きっちり倒します!」


 そう叫ぶと、二人の手に嵌った指輪が、同時に光り輝く。


 雅の手には、全長二メートル程の、メカメカしい見た目をした剣。剣銃両用アーツ『百花繚乱』だ。


 そして優の手に現れたのは、白いスナイパーライフル。


 全長は一・五メートル程。銃身には、様々な花の紋様が描かれている。


 名前は『ガーデンズ・ガーディア』。


 これが優の新しいアーツだ。


 武器を構えた二人に、レイパーは一瞬怯んだものの、すぐに戦闘態勢に入り、お面の口から火炎放射を放つ。


 だが、優は前に出ると、ライフルの引き金を引く。


 銃口から放たれるは、先の尖った、白いエネルギー弾。


 それが回転しながら飛んでいき、レイパーの吐いた炎を貫いて、敵の喉へとヒットする。


 小さな爆発と共にレイパーが仰け反り、喉からは緑色の血が噴出した。


 仮面の下からも血が流れる。これならもう、炎は吐けない。


 レイパーは喉元を抑えながらも跳び退くと、十個ものジャグリングボールを取り出して、二人に向かって投げつける。


「みーちゃん! 行くわよ!」

「はい!」


 雅は百花繚乱の柄を曲げ、ライフルモードにすると、優と共に飛んでくるジャグリングボールへとエネルギー弾を放ち、空中で破壊する。


 ジャグリングボールは爆炎を放ち、それが木の葉に引火。少しずつ林が燃えだしていく中、雅はボールを破壊しながら、レイパーへと接近していく。


 近づけさせまいとジャグリングボールを取り出すレイパーだが、その手に、優の放ったエネルギー弾が命中し、足元にボールを落とす。


 そしてその衝撃でジャグリングボールが爆発し、レイパーがよろめいた。


 辺りに広がる煙。


 それを吹き飛ばす程の勢いで、雅が迫る。


 その手には、柄を戻し、ブレードモードとなった百花繚乱が二本。


 雅が自身のスキル『共感(シンパシー)』により、真衣華のスキル『鏡映し』を使い、アーツを複製したのである。


 二刀流となった雅の、素早い二連撃。


 しかしレイパーは、体を僅かに傾けて、その攻撃を躱す。


 雅が負けじと連続で斬撃を繰り出していくが、それら全てを、レイパーは軽やかな動きで避けていった。喉に大ダメージはあったが、身体能力は健在だ。


 レイパーの手には、いつの間にか、刃が湾曲した刀、シャムシールが握られている。


 中々攻撃が当たらず、雅が攻め急いでアーツを振ろうとした瞬間を狙い、レイパーの斬撃が百花繚乱の柄の底に命中し、弾き飛ばしてしまった。


「っ!」


 片方の武器を失った雅のバランスが崩れる。しまった、と思った時には、雅の首にレイパーの手が伸びてきて、反撃する間もなく、遠くに投げ飛ばされてしまう。


 レイパーが空中にいる雅をジャグリングボールで仕留めようとするが、刹那、横腹に優の放ったエネルギー弾が直撃して、怯んでしまう。


 その隙を、投げ飛ばされているとは言え、雅は見逃さない。


 空中で体勢を変え、後方に迫る大木の幹に、両足で着地すると、そのまま思いっきりレイパーの方へと飛び掛かる。


 そして今の動作で、足に受けた衝撃を、志愛の『脚腕変換』のスキルにより、全て腕力に変換し、力一杯に突き攻撃を放つ。


 狙いは、レイパーの胸部だ。


 だが、


「くっ?」


 間一髪のところで、レイパーは大きく仰け反り、雅の渾身の一撃を躱してしまった。


 それでも、雅は攻める手を休めない。


 当てるつもりだった攻撃を避けられてしまったことで、今度は愛理のスキル『空切之舞』の発動条件が達成。


 瞬発力を一時的に大幅に上昇させ、素早くレイパーの背後に回り込むと、横に一閃、斬撃を放つ。


 同時に、優のライフルからも、エネルギー弾が放たれる。


 しかし、レイパーは雅の斬撃をシャムシールで受け流しつつ、体を捻って優の攻撃も躱してしまう。


 諦めずに、二発、三発と二人は攻撃していくが、レイパーはシャムシールと体捌きだけで、ことごとく直撃を回避する。


 敵も、だんだんと目が慣れてきたのだ。


 そして、


「――っ!」


 レイパーの腕がしなり、シャムシールの刃が雅の顔面スレスレを通り過ぎる。


 レイパーは二人の攻撃を避けつつ、雅へと攻撃する余裕が生まれてきたのだ。


 苦しくなる、雅と優の顔。


 レイパーの繰り出す斬撃は、軌道が読み辛い。途中で軌道が変わり、思いもかけないところから迫って来ることもある。


 いつの間にか、雅はもう、レイパーに攻撃する側から、攻撃される側に回ってしまっていた。敵の変幻自在の斬撃を防ぐことで、手一杯になっていたのだ。


 何とか防げているのは、優の狙撃が敵の動きを阻害してくれているからである。


 このままでは、やられる。


 雅がそう思ったと同時に、『空切之舞』の効果時間が終わった。


 動きが鈍った雅へと、レイパーの斬撃が襲い掛かる。


 途中で三度軌道が変わり、抉り込むように、雅の首元にヒットする――が、


「ッ?」


 人の首を斬ったにしては手応えがおかしく、レイパーは一瞬、動揺する。


 それもそのはず。雅はレーゼのスキル『衣服強化』と、防御用アーツ『命の(サーヴァルト・)護り手(イージス)』を併用し、自身の防御力を大幅に上昇させていた。


 敵の攻撃を仁王立ちで無理矢理受けた雅。『衣服強化』のスキルを解くと同時に、レイパーを思いっきり斬り上げる。


「はぁぁぁあっ!」


 そして体を捻り、仰け反ったレイパーの腹部へと、強烈な回転斬りを叩き込んだ。


 優のスキル、『死角強打』により、視認していない攻撃の威力を上げる雅。


 その一撃は、レイパーを容易に吹っ飛ばす。


 それでも、空中で体勢を整え、上手く地面に着地したレイパーは流石と言うべきか。


 だがそこで、レイパーの体に、二つの弾丸が命中する。


 ガーデンズ・ガーディアから放たれた、白いエネルギー弾がレイパーの肩を抉る。直後、ライフルモードにした百花繚乱から放たれた、桃色のエネルギー弾が爆発して、さらにレイパーを吹っ飛ばした。


 レイパーは、今度こそ地面に背中から打ち付けられる。


 攻撃の痛みに呻くレイパー。


 そんなレイパーに向かって、上空から何かが襲い掛かってきた。


 それは、巨大な百花繚乱。


 雅が希羅々のスキル『グラシューク・エクラ』で呼び出したものである。


 巨大な切っ先が、辺りの木を破壊しながら向かうのは、レイパーの腹部。


 レイパーは急いで起き上がり、巨大な剣が自身を貫く寸前で、その場を跳び退いて攻撃を躱した。


 レイパーの代わりに抉られた地面から、大量の土が舞い上がり、レイパーの視界を妨げる。




「――今です、さがみん!」

「ええ!」




 先の『グラシューク・エクラ』を躱されること等、二人は想定済み。


 真の狙いは、レイパーとの距離を十分に離すことだったのだから。


 雅と優は、勝負に出る。


 百花繚乱が刃の先から縦に割れ、ガーデンズ・ガーディアの銃身に、上と下からはまり込む。


 優がグリップを握り、雅が重くなった銃身を支えると、銃口にエネルギーが集まっていく。


 白と桃色のマーブル模様のエネルギーだ。二人のアーツの力が、一つになったのである。


 エネルギーが、円錐型の弾丸となったところで、流石のレイパーも自らの不利を悟ったのだろう。


 一度優に目を向けた後、黒いジャグリングボールを取り出すと、地面に叩きつける。


 辺りに立ち込める黒煙。


 燃えていく林が生み出す煙も相まって、レイパーの姿は完全に見えなくなってしまった。


「マズい! あいつ、逃げる気です!」

「いや、もう逃がさない!」


 優がそう叫んだ刹那、百花繚乱と合体したガーデンズ・ガーディアが淡く光り、優の眼が赤く染まる。


 優には、煙に紛れて逃げるレイパーの姿が、はっきりと見えていた。


 勘では無い。いや寧ろ、直接見たよりもはっきりと、敵の居場所が分かったのだ。




「――そこだ!」




 レイパーの背中目掛け、優は引き金を引く。


 真っ直ぐに飛んでいったエネルギー弾は、煙を吹き飛ばし――レイパーの背中の真ん中に着弾する。


 まさか攻撃を当てられるとは思っていなかったレイパー。今の攻撃を視認しているはずもない。優が弓型アーツ『霞』から授かったスキル『死角強打』の効果が乗った弾丸は、レイパーの体を容易に貫いた。


 一瞬つんのめったレイパーは、貫かれた傷口を、手で押さえる。


 しかし、溢れる血は止まらない。


 徐に優の方に顔を向けるレイパー。




「マ、マタラヤトザカキィ……!」




 断末魔のようなその言葉と共に、ついにピエロ種レイパーは爆発四散するのだった。

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