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ヤバい奴が異世界からやってきました  作者: Puney Loran Seapon
第24章 新潟市中央区②
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第208話『腕撃』

 ピエロ種レイパーを逃がした後、それを探してあちこち飛び回っていた四葉。


 そこで偶然、真衣華達が人工レイパーに苦戦しているところを目撃した。


 目的の相手では無いが、レイパーが人を襲っているとなれば助けないわけにはいかない。


 故に助太刀に入ったのだが、四葉は人工種ボンゴ科レイパー特有の歪な頭部を見ると、眉を顰める。


「普通のレイパーじゃない? 何、こいつ?」

「気を付けて! 来るよ!」


 人工レイパーの目は、新たに現れた四葉へと向けられていた。


 真衣華に警告されるまでもない。四葉は身に着けている銀色のアーマー、装甲服型アーツ『マグナ・エンプレス』のあちらこちらから、薄らと煙を噴出させると、腕を上げ、腰を落として戦闘の構えを取っていた。


 一気に四葉へと飛び掛かり、拳を振り上げてくる人工レイパー。


 だが、攻撃されるより速く、四葉は敵の懐に入り込むと、腹部に強烈な膝を打ち込む。


 さらに、今の攻撃で怯んだ人工レイパーへと、四葉は声を張り上げながら掌底や蹴りを叩き込んでいく。


 だが、


「っ!」


 パンダのような毛皮が想像以上に分厚く、衝撃が吸収されてしまったからか、四葉の攻撃は、彼女が思った程効かない。


 人工レイパーは乱打を受けながらも腕の一振りを放ってくる。それを胸部に受け、四葉は大きく吹っ飛ばされてしまった。


 地面に叩きつけられる際の衝撃に備え、四葉が体を強張らせた、その時。


「おっと、あぶねぇ!」

「っ?」


 横から飛び込んできたセリスティアが、空中で四葉をキャッチする。お姫様抱っこするような形だ。


 さらに、人工レイパーの両側から真衣華と志愛が斧と棍で、背後からは愛理が刀で攻撃を仕掛けるが、レイパーは両腕と角で、三人の攻撃を受け止める。


 拮抗する、三人と人工レイパーの力。


「大丈夫か?」

「え、ええ」


 吹っ飛ばされた四葉に、心配の声を掛けるセリスティア。まさか助けられるとは思っていなかった四葉の反応は、ぎこちない。


「っ、離れて!」

「っ? ちぃ!」


 だが、人工レイパーが吠え、強引に角と腕を振り切って愛理達三人を撥ね飛ばし、こちらへと突進してくるのを見て、咄嗟にセリスティアに指示を出す。


 四葉を抱えたまま、その場を跳び退くセリスティア。


 人工レイパーは標的を逃さんと彼女の動きに喰らいつき、それを見たセリスティアは顔を顰める。


「この野郎!」

「あなた、足に力を入れなさい! 早く!」


 抱えられたまま、四葉は左手を敵に向けていた。


 セリスティアが困惑しながらも、指示通りに踏ん張る。


 迫り来る人工レイパーを引きつけてから、四葉は掌から衝撃波を放った。


 勢いよく放たれた衝撃波を、人工レイパーは避けられるはずも無い。もろに直撃し、仰向けに吹っ飛ばされていく。


「よしっ!」

「ちょっと! 何時まで抱えている気っ? 早く降ろしなさい!」

「お、おう!」


 バイザー越しに、ギロリと睨む四葉に、セリスティアはたじろぎながらも、彼女を放り投げる。


 顔を強張らせる四葉。確かに降ろせとは言ったが、投げ捨てられるとは思っていなかったのだ。


 一方、吹っ飛ばされた人工レイパーへは、真衣華が飛び掛かっていた。


 起き上がろうとする人工レイパーに、二挺の片手斧型アーツ『フォートラクス・ヴァーミリア』の斬撃を叩きつける。


 真衣華の二つ目のスキル『腕力強化』により、腕の力を大幅に上げた、強烈な攻撃だ。


 だが人工レイパーは角を振り回して真衣華の攻撃を防ぎつつ、反撃のタイミングを伺っていた。


「こ、このぉっ!」


 そして中々攻撃がクリーンヒットしないことに焦った真衣華が、腕が痺れるのも構わず、アーツを振り下ろしてしまう。


 力が上手く乗らない一撃は、大振りで隙だらけだ。


 その瞬間を狙い、人工レイパーが大きく角を振って、真衣華の攻撃を撥ね飛ばしつつ、立ち上がる。


 大きく後方によろめいた真衣華。そんな彼女の腹部へと、人工レイパーの強烈な拳が叩き込まれた。


 咄嗟に防御用アーツ『命の(サーヴァルト・)護り手(イージス)』を発動したことで、致命傷にはならなかったものの、真衣華の骨が音を立てて軋むレベルの一撃だ。痛みに大きく顔を歪めながら、真衣華は吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられた後、転がっていく。


「マイカ!」

「ファルトさん! 来ます!」


 人工レイパーは次に、倒れた真衣華に気を取られたセリスティアへと狙いを定め、角を向けて勢いよく突進していく。


 だが、


「にゃろう!」


 セリスティアは人工レイパーのタックルが当たる直前で、スキル『跳躍強化』を発動させて大きく飛び跳ねた。


 そして、セリスティアの後ろには、志愛。そのもっと後ろには、愛理。


 志愛は素早くしゃがみながら、人工レイパーの足を、棍型アーツ『跳烙印・躍櫛』で払う。


 セリスティアに攻撃を透かされ、一瞬意識が逸れたところに、隠れていた志愛のこの行動。


 必然、足元に衝撃を受けた人工レイパーは空中に投げ出される。


 隙だらけになったところを逃さず、放たれる愛理のアーツ『朧月下』による縦一閃。


 しかし人工レイパーは慌てながらも、空中で体を捻り、紙一重でそれを躱す。


 その瞬間、愛理のスキル『空切之舞』が発動。


 このスキルは、当てるつもりの攻撃が躱された時、敵の死角に瞬間移動するスキルだ。


 愛理とて、先の一撃が躱されることは想定していた。


 故にギリギリのところで攻撃を避けられても、慌てることは無い。落ち着いてスキルを発動し、瞬間移動した先は、空中を飛んでいく人工レイパーの真上。


「せぁぁぁあっ!」


 刀を思いっきり振り下ろすと同時に、今度こそ絶対に命中すると確信する愛理。


 だが、人工レイパーも負けてはいなかった。


 愛理の気配が自分の死角に移動したことを悟り、勘を頼りに頭を振って、捻じれた角で、愛理の刀を受け流していく。


 まさかこの一撃を受けきられるとは思っていなかった愛理は、この時、本能的に命の(サーヴァルト・)護り手(イージス)を発動した。


 彼女の予感が正しいことを示すように、人工レイパーは腕を振り、愛理の脇腹へ叩きつけ、彼女を吹っ飛ばす。


 流石にこのような反撃をすれば、人工レイパーは受け身が取れない。しかし、もろに体を地面に打ち付けたものの、その衝撃は分厚い毛皮が吸収してしまう。


 何事も無かったかのように立ち上がった人工レイパーだが、その刹那、


「こっちよ!」


 マグナ・エンプレスの飛翔能力により、上空に舞っていた四葉の声が聞こえ、それから殆ど間も置かず、彼女が放った衝撃波が人工レイパーに直撃する。


 衝撃波程度の威力では、タフな人工レイパーを軽く怯ませる程度の効果しか無かったが、それで十分。


「うぉらぁっ!」

「ハァッ!」


 人工レイパーの右側から、セリスティアが爪型アーツ『アングリウス』の先を向けながらのタックルと、志愛の跳烙印・躍櫛による突きが同時にヒットし、人工レイパーをよろめかせる。


 さらに続けて、四葉が急降下し、勢いを付けたドロップキックが人工レイパーの背中に命中し、敵を大きく吹っ飛ばす。


 飛んでいった人工レイパーの先にいるのは、二挺のフォートラクス・ヴァーミリアを掲げた真衣華。


「今度こそぉぉぉおっ!」


 スキル『腕力強化』を発動させた彼女は、向かってくる人工レイパーにタイミングを合わせ、Vの字を描くように、強烈な攻撃を放った。


 愛理の攻撃を避けた時のような、アクロバティックな躱し方が、二度も成功するはずもない。


 人工レイパーは何とか体を捻ろうとしたが、真衣華の攻撃は命中。斧の刃に激しい抵抗がかかりながらも、毛皮ごと肉体を抉りとる。


 体に大きな傷を負わされながら、真衣華の遥か後ろのコンクリートへと体が叩きつけられた人工レイパーは、そのまま爆発するのだった。

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