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ヤバい奴が異世界からやってきました  作者: Puney Loran Seapon
第23章 中央区京王~山二ツ
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第200話『蛇鼠』

 レーゼ達の行く手を阻んだのは、二体の細身のレイパー。


 どちらも頭部が歪な形状をしていることから、人工レイパーと分かる。


 一体は蛇のような顔をした、長い尻尾を持つ人型の人工レイパーだ。特徴的なのは、左腕が鰐の頭のような形状をしていることか。あれが標的の胴体を嚙み千切るためのものというのは、レーゼ達にも容易に想像がつく。分類は『人工種蛇科レイパー』だろう。


 もう一体は、リスのような頭をした、人型の人工レイパー。背中からは蝙蝠のような羽が生えている。分類は『人工種リス科レイパー』か。しかしこちらは人工種蛇科レイパーと比べると、どのように攻撃をしてくるのか予想が出来ない。


「キララとマイカはリス頭の方をお願い」


 レーゼはそう指示しながらも、ライナへと目配せしつつ、右手で剣型アーツ『希望に描く虹』を構えながら人工種蛇科レイパーの方へとジリジリと近づいていく。


 そして左手でライナに指示を出すと同時に、一気に人工レイパーへと接近すると、眼前目掛け、横に一閃を放つ。


 人工レイパーは一歩だけ後ろに退がりそれを躱すが、レーゼにとってそれは想定内の動きだ。


 人工レイパーが反撃と言わんばかりに鰐の腕を伸ばしてくる。噛み付き攻撃だ。


 レーゼは後ろに跳び退いて攻撃を回避するが、人工レイパーの攻撃は止まらない。


 二発、三発……と鰐の口が襲い掛かってくるが、回避に徹すれば避けられない速度では無い。


 敵の攻撃を躱しつつ、レーゼは少しずつ後ろに移動していく。


 そして六発目の攻撃で一気に横に跳び退いた。


 鰐の口が向かう先は、棚の柱。レーゼは攻撃を避けながら、ここに誘導していたのである。


 鰐の口が柱に噛み付けば、僅かでも隙が生まれるはず。その瞬間に攻撃を仕掛けることが、レーゼの狙いだった。


 だが――


「っ?」


 レーゼの目論見は外れた。鰐の口は、柱を容易に嚙み砕き、少しの隙すらも生まなかったのだ。


 背中に嫌な汗が伝うレーゼ。


 ぼろいとは言え、金属で出来ていた棚だった。それが簡単に噛み砕かれたとなれば、自分のスキル『衣服強化』と、防御用アーツ『命の護り(サーヴァルト・イージス)』を併用しても、ただで済むとは到底思えなかった。


 七発目の人工レイパーの攻撃が迫り、レーゼは少し大袈裟な動きでそれを躱す。


 その時だ。


 人工レイパーの背後に、誰かが迫る。


 ライナだ。いつの間にか背後に忍び寄っていたのである。


 ライナは鎌型アーツ『ヴァイオラス・デスサイズ』で敵の背中を思いっきり斬り付けた。


 しかし……フードの下で、ライナは顔を歪める。


 細身の割に体は頑丈で、傷が付かなかったのだ。


 人工レイパーは蛇の尻尾を振り回し、ライナに叩きつけて吹っ飛ばす。


 思わず彼女の名前を呼びそうになったレーゼだが、ライナがヨロヨロと立ち上がったことで、寸前で堪える。今の一撃は、ちゃんと鎌で防いでいたのだ。


 それでも、レーゼもライナも少しずつレイパーから距離をとっていく。


 今の攻防で、二人は理解した。


 こいつは、自分達だけでどうにかなる相手では無い、と。




 ***




 一方、人工種リス科レイパーと戦う希羅々と真衣華は。


「やぁぁぁあっ!」


 気合を込めた声を上げ、人工レイパーに迫る真衣華。その両手には、斧型アーツ『フォートラクス・ヴァーミリア』が二挺。彼女のスキル『鏡映し』で、アーツを増やしたのだ。


 加えて真衣華のもう一つのスキル『腕力強化』も発動。


 威力の上がった攻撃を、Xの字を描くように人工レイパーに放つ。


 だが、人工レイパーはそれを跳んで躱した。真衣華の攻撃は決して遅くは無く、リーチもある。


 それをやすやすと回避するあたり、随分と身軽な相手だ。


 しかし、人工レイパーが真衣華の背後に着地した、その瞬間。


「はっ!」


 鋭い声と共に、針のように細く、鋭い突きがレイパーへと襲い掛かる。


 希羅々が、人工レイパーが着地する瞬間目掛け、レイピア型アーツ『シュヴァリカ・フルーレ』で攻撃を放ったのだ。


 レイピアの突きは、吸い込まれるようにレイパーの喉元へと向かっていく。


 強烈な一撃が決まる、と希羅々が確信した、その刹那。


 レイパーの姿が消えたと思ったら、突如腹部に鉛のように重い衝撃が走った。


 レイパーが突きを躱し、希羅々の懐に入り込んで、膝蹴りのカウンターを喰らわせたのだ。


 念の為に命の護り(サーヴァルト・イージス)を発動させたことで致命傷にはならなかったが、それでも骨が砕けたと錯覚しかねない痛みと共に、希羅々は吹っ飛ばされる。


「希羅々っ! ――っ?」


 思わず希羅々に気を取られてしまった真衣華。そんな彼女に、人工レイパーは迫ると、素早い横蹴りを連続で放ってくる。


 まるでマシンガンのような蹴りの嵐に、真衣華はアーツを盾にして受けるしかない。それでも、すぐに手が痺れ、アーツを落としてしまいそうになる程の衝撃が襲い掛かってきていた。


 こんな防御、長く持つはずは無い。


 真衣華は攻撃を受けながらも、敵の様子を伺う。


 そして人工レイパーが蹴りを放つために足を後ろに引いた瞬間を狙って、攻撃に転じた。


 それが敵がわざと見せた隙だとも知らずに。


 真衣華の斧の一撃が、弧を描きながら人工レイパーの脇腹へと向かっていくが、威力が乗り切る寸前で、人工レイパーは手で斧を掴み、受け止めてしまう。


 反撃が来る、ヤバい――と真衣華の顔が青褪めた、その時。


「真衣華から離れなさい!」


 その声が響いたと思ったら、天井を突き破って巨大なレイピア――見た目はシュヴァリカ・フルーレだ――が出現した。


 レイピアのポイントは、人工レイパーを真っ直ぐに狙っている。希羅々のスキル『グラシューク・エクラ』である。巨大なレイピアを召喚する、希羅々必殺の一撃だ。


 吹っ飛ばされた希羅々だが、上手く受け身を取っていたために、すぐに反撃に移れた。


 人工レイパーも、見ただけでその威力を悟ったのだろう。真衣華を突き飛ばすと、すぐさまその場を跳び退いた。


 降り注ぐ天井の欠片と共に、標的を失った巨大なレイピアは床を砕く。


 敵を仕留めるには至らなかったが、何とか真衣華を救い出せたことに、希羅々は少し胸を撫で下ろした。


「真衣華っ? 怪我はっ?」


 希羅々はすぐに真衣華のところへと駆け寄り、そう尋ねると、真衣華は首を横に振る。


「ありがと希羅々。でも、どうする? ちょっと手に負えないよ、あの人工レイパー……!」


 遠くからゆっくりと近づいてくる、人工種リス科レイパーに、二人は揃って顔を強張らせるのだった。

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