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ヤバい奴が異世界からやってきました  作者: Puney Loran Seapon
第23章 中央区京王~山二ツ
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第198話『犠者』

 四葉が去ってから五分後。


 雅は相模原優に電話して、今戦ったレイパーについて話をしていた。


「さがみん、どうですか? カームファリアで戦ったレイパー、こんな相手でした?」

『うん、こいつだね。今シャロンさんにも確認してもらったけど、間違いないって。でも最近起こっている殺人事件が、こいつの仕業だっていうのは本当なの?』

「はい。証拠がありました。あの変死体は、お面を付けたレイパーの仕業です」


 雅は手に持った紙を見ながらそう言う。これはピエロ種レイパーが逃げた際に落としていったものだ。四十六個のマス目が書かれており、これは死体の隣に置かれたものと同じものだった。


 しかし雅は優の話を聞いて尚、首を傾げる。


「でも、変ですね……。なんでカームファリアで活動していたレイパーが、日本に来ているのでしょう?」

『遠く離れた土地だもんね。断定しておいてあれだけど、私も俄かには信じられないっていうか……正直、驚いた』


 優やシャロンに撃退されたことを逆恨みして追いかけてきた、というのなら分かるが、それにしては他の女性を襲っているのは妙だ。死体の隣に暗号めいた紙を残しているなら、衝動的な殺人とは思えない。


「理由は不明ですけど、日本に来ているっていうのは間違いないですもんね。何とか見つけ出して倒さないと……。あ、そう言えばさがみん。今どこにいます?」

『ん? あぁ、家。アーツの状態があんなんだし……』


 カームファリア滞在中、ついに中の部品が壊れてしまった優の弓型アーツ『霞』。今はもう、弦を引いても矢型のエネルギー弾の装填に時間が掛かり、正直使い物にならない状態だ。


『レイパーに襲われるとヤバいから、しばらくは自宅待機かな? 今はシャロンさんが護衛してくれている。愛理や志愛、セリスティアさんも来るよ』

「そっか。……念のため、さがみんもシャロンさんも、誰かの側を離れないようにしていて下さい。私も、逃げたレイパーを一通り探したらそっちに行きます」

『うん。分かった。……ところでみーちゃん。なんかあった? ちょっと元気無いみたいだけど』

「……あー、実は、四葉ちゃんに怒られちゃって。まぁそっちは大丈夫です。それより、レイパーを何とかしないと。じゃあ、一旦切りますね」

『え、ちょっとみーちゃん――』


 優が何かを言いかけていたが、雅は構わず電話を切る。


 四葉との一件について、これ以上話をすると、頭の中がグチャグチャになりそうだったのだ。


 雅は一度だけ大きく息を吐くと、自分の頬をバチンと叩き、隣に立つ伊織へと顔を向ける。


 彼女は優一やレーゼ達に状況の報告をしていたが、丁度良いタイミングで話が終わったようで、通話を切った。


「レーゼさん達、なんて言っていました?」

「レーゼちゃんは、仲間と一緒に逃げたレイパーを探すみたいっす。そんで、相模原警部から話があったんすけど、なんか今回のレイパー、三日前に中央区の区役所に忍び込んだみたいっすよ? 監視カメラに姿が映っていたらしいっす。でも、誰も殺さずに去ったみてーで……」

「ええっ?」


 区役所に忍び込んだというのも驚いたが、誰も殺さなかったというのがさらに雅を驚かせる。


 伊織も同じ気持ちのようで、顔を顰めた。


「なんか不気味っすよね。人を殺すつもりで侵入したけど止めた、なんてタマじゃなさそうですし……。絶対何か理由があるはずなんすけど……」

「うーん……。でも言われてみると、あのレイパー、無差別に人を殺したりはしていないですよね。もしかして、何かルールでもあるんでしょうか? ほら、このマス目の書かれた紙を置いているわけですし」

「被害者の名前とか、殺した場所とかが入る感じっすかね? ええっと……」


 難しい顔で唸りながら、伊織はULフォンを操作してウィンドウを出現させる。


「一人目が和渕(わぶち)直音(すぐね)さん。東区のアパレルショップ店員。殺害場所は古町。

 二人目が室家(むろけ)(てる)さん。小学校四年生。殺害場所は同じく古町。

 三人目は和田(わだ)()(もり)いをらさん。東万代町に住むお婆さん。自宅近くで殺害。

 四人目は(ぬま)(づる)氷雨(ひさめ)さん。女池の飲食店勤め。殺害場所は桜木インター近く。

 そんで五人目が今回の榎本(えのもと)あんなさん。京王で殺されたっすね」


 そう言いながら情報を整理していくが、雅も伊織も首を傾げるばかりだ。


「マス目が五マスから八マスっすから、入るとしたら名前っぽそうっすけど、どこに何が入るのやら……」

「クロスワードパズルっぽく埋めていけなくはないですけど、残りのマスに何が入るのか分かりませんねぇ」

「他に共通点っつーと、全員が中央区に住んでいるってことくらいっすかね? 年齢もバラバラ……強いて言うなら二十代がちょっと多めっすけど……」

「でも、もしマス目に人の名前が入るのなら、後四人殺されるってことですよね? ……しまった。あの人の名前、聞いておけば良かった」


 雅と四葉が来た時に、レイパーに襲われていた女性。状況的にその場から逃がしたが、レイパーの狙いが彼女なら、すぐにでも保護しなければならない。


 こんなところで敵の目的や行動を推理している場合では無かったと、雅は悔やみ、拳に力が籠る。


「まだそんなに時間は経ってねーっす。今から探せばきっと見つかるはずっすよ! さぁ、乗るっす!」


 伊織は白バイに乗りながらそう叫ぶと、雅にヘルメットを投げて寄越す。


 サイドカーに乗った雅の先導の元、伊織は襲われた女性が向かって行った場所へとバイクを走らせる。




 その十分後だ。


 レイパーに襲われていた女性――小暮瀬奈(おぐれせな)が、死体で見つかったのは。


 瀬奈の顔は赤子のように幼く変貌しており、全身は焼かれ、マス目の書かれた紙が側に置かれており、明らかにピエロ種レイパーの仕業だった。

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