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ヤバい奴が異世界からやってきました  作者: Puney Loran Seapon
第22章 カームファリア②
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第187話『脱走』

 八月十日金曜日。朝四時十五分。


 カームファリアに滞在する雅達が宿泊している宿の裏口にて。


「コ、これはまタ……」

「あー……」


 こんな朝早くに、宿泊客が滅多に立ち寄らないところに、二人の少女がいた。


 一人は、桃髪ボブカットの少女。いつもはムスカリ型のヘアピンを付けているが、今は無い。


 もう一人は、ツリ目の少女。いつもはツーサイドアップにしている髪も、今は下ろしている。


 雅と志愛だ。二人ともいつもと少し違うところがあるのが、今の事態の緊急性を如実に示している。


 そんな二人だが、揃って苦笑いを浮かべていた。


 その理由は……


「彼女ハ、なんでまたこんなところニ?」

「うーん……分かりません。でも、このところ毎日こんな様子みたいですよ?」


 二人がそんな会話をしながら見ているのは、床にうつ伏せで寝ている少女の姿だ。


 綺麗な白髪(しろかみ)は神々しく、寝顔は目を奪われる程に美しいその娘は……ラティア。


 先日新潟にて保護され、雅達によってここまで連れて来られた彼女は、何故か部屋ではないところで一夜を明かしていた。


「このところ毎日? アァ、そう言えバ、レコベラ草を採取しにいった日の朝モ、エントランスで寝ていたナ」

「ええ。次の日はミカエルさんと一緒の部屋にいたはずなんですけど、起きたらまたエントランスで寝ていたそうです。その次の日は真衣華ちゃんの部屋の入口」

「そしテ、今日は私や雅と一緒に寝ていたはずなのニ、気が付いたらこんなところデ……という訳カ」

「はい。日本にいる時はこんな感じじゃなかったんですけど……」


 一度くらいなら「寝ぼけていたのだろう」と笑い話に出来なくも無いが、こうも続くと流石におかしいと思わざるをえない。


「それにしてモ、よくラティアがいないことに気が付いたナ」

「抱き締めていましたからねぇ。温もりが無くなって、何となく目が覚めたんですけど……早く気がつけて良かったです」


 ラティアはアーツを持っていない。


 宿の中とは言え、こんな明け方に一人無防備な格好でいれば、万が一にでもレイパーに見つかればほぼ確実に殺されてしまうだろう。


 しかし、そうなる前にラティアを発見出来、雅も志愛もホッと胸を撫で下ろしていた。




 そのままラティアを抱え、雅達は部屋まで戻ったのだが……ここで、ラティアのこの奇行の理由をちゃんと考えなかったことを、後で激しく後悔することになる。




 ***




 その日の夜、午前一時三十八分。


 宿のエントランスの一角で、三人の少女が険しい表情で顔を突き合わせていた。


 それが誰かというと……


「おい! 見つかったか?」

「いえ、どこにもいません!」

「ラ、ラティア……一体どこニ?」


 雅に志愛、そしてシャロンである。


 因みに他の場所では、レーゼ達も慌しく動き回っていた。


 理由はただ一つ。




 ラティアが、姿を消した。




 今日は雅と志愛、シャロンが泊まる部屋にラティアもいた。四人でベッドに潜り、眠りに落ちること三十分。


 雅がふと目を覚ました時にはもう、ラティアはいなくなっていたのだ。


 慌てて他の皆を起こし、宿内を探し回ること十分。まだ、彼女は見つかっていない。


 前のように入り口や裏口で眠っているかとも思ったが、そこにもいなかった。


 すると、


「む?」


 シャロンが何かに気がついたのか、入口の扉まで近づいていき……「なぁっ?」という声と共に目を見開いた。


「あ、開いておる……。まさかラティア、外に出たのか?」


 宿の入口は、夜十時で閉まる。まさか閉め忘れた訳でも無いだろう。


 シャロンの言葉に、雅も志愛も顔を青くする。


 そこで、雅の頭に電流が走る。


「も、もしかしてラティアちゃん、今までずっと外に出ようとしていたんでしょうか? 出られなくて力尽きて、それで寝ちゃったんじゃ……」

「い、いや待てタバネ。理由はなんじゃ?」


 シャロンの質問に雅は黙り込む。


 だが、すぐに志愛が口を開いた。


「もしかするト、この間のレイパーが怖かったのかモ……」

「何?」

「ラティアはここに来て、とても怖い思いをしタ。希羅々の話ジャ、ひどい状態の死体も見たみたいでス。怖くて怖くテ、不安になっテ、それで逃げようとしたのかもしれませン」


 レイパーに襲われたことがトラウマになり、パニックを起こすようになる子供は偶にいる。


 特にこの間カームファリアに出現したレイパーは、どれも強力な相手ばかりだった。ラティアがそんな状態に陥っても不思議では無い。


 ラティアはあまり感情を表に出さない娘だ。だが、その気持ちはちゃんと行動に現れていたのだ。


「迂闊ダ。私達、もっとあの娘の気持ちを考えてあげるべきだったのニ……」

「……悔やんでも仕方あるまい。取り敢えず、外を探そうぞ。子供の足なら、まだそう遠くへは行っておらんじゃろ。――タバネ」

「ええ。もうレーゼさん達には連絡入れました。手分けして探しましょう!」


 夜中に子供が一人で出歩くなど、レイパーに遭遇する可能性を抜きにしても大問題だ。


 ラティアの身に何か起こる前に、早く見つけ出さなければならない。


 雅の言葉に頷くと、三人は宿の外へと飛び出るのだった。

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