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ヤバい奴が異世界からやってきました  作者: Puney Loran Seapon
第21章 ワルトリア峡谷
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第182話『老婆』

(っ! 重い!)


 何者かの奇襲を受け止めたレーゼは、真っ先にそう思う。


 腕に掛かる負荷は強烈で、吹っ飛ばされなかったのは偶然だった。


「何っ?」


 あまりに突然のことに、カベルナの驚愕の声が響く。


 襲いかかってきたのは、ワルトレオン……によく似た怪物。


 全体的に青白く、銀の鬣を靡かせているところは同じ。だが、体長は三メートルを超えており、前進の筋肉は見て分かるくらいに強靭だ。


 眼は赤く、禍々しい光を帯びており、前足から伸びる爪もかえしのような突起がついている。尻尾にも棘が生えており、ワルトレオンとは何かが違う生き物だった。


 明らかに、レイパー。


 分類は『ミドル級ワルトレオン種』か。


 同時に悟る。レコベラ草を採取しに来たバスター達を殺したのは、こいつだと。


「ハァッ!」

「レーゼさん! 気をつけて!」


 志愛がレイパーの横から棍型アーツ『跳烙印・躍櫛』を叩きつけ僅かに怯ませた瞬間、ノルンの放った風の球体が、下から抉りこむような軌道でレイパーの腹部へと直撃し、吹っ飛ばす。


 だが、その時。


「っ! レーゼさん! あれは……!」

「お面……?」


 レイパーの背中には似つかわしくないお面が貼り付いているのを見た雅とレーゼが、眉を寄せる。


「ミヤビの家の近くで戦ったレイパーが着けていたお面かしら? ここまで追ってきていたなんてね!」

「いえ、よく見て下さい! 見た目が違います!」


 八月四日。丁度、警察からラティアを引き取った日の夕方。


 雅とレーゼは、般若のお面を被ったレイパーと戦い……途中でやって来た浅見四葉と一緒に倒した。


 その際、般若のお面だけは残り、どこかへと飛び去ったのだ。


 レーゼは最初、その逃げたお面がまたやって来たのかと思ったのだが、雅の言葉で気が付く。


 確かにこのレイパーの体の右側面に着いているお面は……般若では無く、まるで泣いているお婆さんの顔を模したもの。


 つまり、『(うば)』のお面だった。


「何こいつ……? 前に現れた奴の亜種っ?」

「えっ? 何々っ? 訳分かんないんだけどっ?」


 事情を知らないカベルナが、金色のエストック型アーツ『セイクリッド・ラビリンス』を構えながら叫ぶ。


 それでも慌てること無く、アーツをレイパーに向けたまま、視線は外さない。


 希羅々や志愛、ノルンも同じだ。


「詳しい考察は後でス! とにかク、動き止めましょウ!」

「っ! 来ます!」


 ノルンがそう言った刹那、レイパーの姿が消える。


 否。気配はある。ただ素早く動き回っているだけであり、その速度が速いから、目で追えないだけだ。


 それでもノルンはスキル『未来視』で敵の動きを捕らえ、襲ってくる方向へと風の球体を飛ばして敵に直撃させる。


 レイパーは吹っ飛ぶことこそ無かったが、動きを止めた。そこを狙い、希羅々と志愛が同時に飛び掛る。


 だが――


「っ! 消えたっ?」

「どこダッ?」


 二人の攻撃がレイパーに届く前に、敵は再び動き出す。


 高速で走りまわるレイパーに、誰もが姿を見失ったその時。


「……来る!」


 今度は雅の『共感(シンパシー)』により、ノルンの『未来視』が発動。


 雅は咄嗟にレーゼの『衣服強化』のスキルを発動させつつ、左腕を上げて構えた刹那、そこにレイパーが口を開いて襲いかかってきた。


 恐ろしく鋭い牙が腕に突き刺さり、鎧並の防御力になった体にも関わらず、雅は腕が圧し折れてもおかしくない程の痛みに顔を顰める。


 ヤバい……と思った雅はさらに防御用アーツ『命の(サーヴァルト・)護り手(イージス)』も発動させて腕を守り、近距離からライフルモードにした剣銃両用アーツ『百花繚乱』を敵の体に押し付け、桃色のエネルギー弾を放つ。


 優の『死角強打』のスキルを使い、強化された一撃でレイパーが大きく吹っ飛ばされた。


 そしてレイパーが着地したところに、切断性に富んだ風のリングが迫る。ノルンの最大魔法だ。


 だが、それが直撃する直前、レイパーは高く跳躍してそれを躱す。


 標的を外した風のリングは背後の岩壁に命中し、その一角をスパっと切り落とされるのを見て、カベルナの驚愕の声が上がる中、雅はセリスティアのスキル『跳躍強化』を発動し、高く跳んだ。


 その高さは、レイパーさえも超える。


 狙いは、がら空きの背中だ。


 空中で素早く百花繚乱の柄を伸ばしてブレードモードに変形させつつ、志愛のスキル『脚腕変換』を使用。今、勢いよく地面を蹴った際のエネルギーを全て腕力に集め、強烈な一撃を放ち、地上に叩き落とした。


 地面にクレーターが出来る程の勢いで落下したレイパー。流石に効いたようで、起き上がる動きにはキレが無い。


「シア! 行くわよ!」

「はイッ!」


 好機を逃さず、レーゼは剣型アーツ『希望に描く虹』を、志愛は跳烙印・躍櫛を構えながら敵に接近。


 レーゼがレイパーの頭の下から、アッパーのような斬撃を放って敵の体をかち上げると、相手の喉にさかさず志愛の棍による突きが打ち込まれる。


 紫色の線で浮き上がる、虎の刻印。志愛の必殺の一撃が決まった証だ。


 その色と輝きから、志愛は確かな手応えを覚えていた。


 確実に倒せると確信した一発。


 だが――


「ッ! 何……ッ?」


 折角の刻印も、レイパーが静かに怒るような唸り声を上げただけで、瞬く間にかき消されてしまう。


「権さん、下がりなさい!」


 一瞬唖然としてしまった志愛の後ろから、レイピア型アーツ『シュヴァリカ・フルーレ』を握った希羅々が飛び出ると、レイパーの鼻先を鋭く突く。


 吸い込まれるような軌跡で放たれたその一撃は、丁度レイパーの神経が集中しているところへと命中。


 思わず一瞬怯んでしまうレイパー。


 そこに――


「これで決めるよ!」


 カベルナの声が響いた瞬間、レイパーの体の横に丸い穴が出現。


 丁度、お面が貼り付いているところのすぐ近くだ。


 そこから出てくるは、エストック型アーツ『セイクリッド・ラビリンス』を持ったカベルナの腕。


 視界の外からの一撃は、レイパーに躱す隙を与えない。


 エストックの先端がお面の角に直撃し……その衝撃で、姥の面がレイパーの体から剥がれる。


「よし! 何とかあのお面が取れたわ!」


 得体の知れない物を装備した敵があまりにも不気味だったカベルナ。


 故に彼女は冷静にタイミングを見計らい、お面を剥がすことに集中していた。それが上手くいった形である。


 地面に落ちるお面。


 後は破壊するだけ。レイパーは希羅々が引きつけている、今がチャンス……そう思い、お面へと駆け寄るカベルナ。


 だが……お面がカタカタ震え始めたのを見て、その行動が間違っていたと知り、顔を青褪めさせる。


「カベルナさん! 離れて!」


 お面の動向に気が付いた雅が警告するも、時既に遅し。


 お面は急に飛び上がり――


「きゃっ?」

「カベルナさんっ?」




 何と、カベルナの顔に貼り付いてしまった。




 レイパーとの戦いに集中していた他のメンバーも、異常に気が付く。


 一瞬の間。




 そして……顔を強張らせる一行の方へ、カベルナはアーツを構え、ゆっくりと歩き出すのだった。

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