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ヤバい奴が異世界からやってきました  作者: Puney Loran Seapon
第20章 カームファリア
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第175話『蔦女』

 一方、優とライナはというと。


 二人は一ヶ所に固まり、周りを囲むようにして襲ってくる大量の蔦を、片っ端から倒していた。


 ライナが鎌型アーツ『ヴァイオラス・デスサイズ』を振り回して蔦を斬り刻み、優が弓型アーツ『霞』で蔦の根元を抉る。


 さらにライナのスキル『影絵』によって創り出された大量の分身ライナが二人を援護し、徐々に敵は数を減らしていった。


 そしてそろそろ、ここら一帯にいた大量の蔦が、片手で数える程しかなくなってきた頃。


「……?」


 これまで激しく二人に襲いかかってきていたはずの蔦が、ピタリと動きを止める。


「何? 何なの?」

「……ユウさん、気をつけて」


 敵の様子に優が眉を寄せると、ライナが身に纏う空気を一変させた。


 ライナの明らかな警戒の色に、優は唾を呑み込む。


 そこで優も気が付く。


 自分達に近づいてくる、新たな敵の存在に。


 二人の肌から、嫌な汗が滲み出る。それ程までに、その敵の強大さに呑み込まれていた。


 まだ、敵の姿は見えない。


 いつ現れるのか――と、いよいよ二人の緊張が最高潮に達した、その瞬間。


 地面からさらに大量の蔦が出現し、周りにいた大量の分身ライナを一人残らず全て捕まえてしまう。


 呆気に取られる中、あっという間に全滅する分身ライナ達。




 そしてその一瞬の内に、敵は優とライナの背後を取っていた。




 二人がそれに気がついたのは、後ろから首根っこを捕まれた時。


 慌ててライナが三体の分身ライナを創り出し、優が近距離から我武者羅に矢型エネルギー弾を放つ。


 優の攻撃で僅かに手の力が緩み、分身ライナがそいつに攻撃したことで完全に首を掴んでいた手が離れたことで、二人は何とか敵の拘束から抜け出し、急いでその場を離れる。


 頭が半ばパニック状態になる中、振り向き、自分達を襲った敵の姿を初めて見て――二人は本能的な恐怖に思わず後ずさる。


「セホヘグエゾト。ルケタコネジソトモトモノタヘコヒニカオッノ……。マヤモレソ、ヨノヘボデメデメテロレニユヘニンアル」


 そう言ったのは、全身緑色の、人型のレイパー。身長は百七十センチ程度か。


 特筆すべきは、頭の天辺から足のつま先まで、蔦で覆われていることだろう。人間の目に当たる部分だけは蔦が僅かに除けられ、赤い瞳を覗かせている。


 こんな風貌だが、頭から垂れている蔦はまるで髪の毛のようであり、その形状や凹凸のある体を見るに、女性のようなフォルムだ。


 分類は『人型種アイビー科レイパー』か。


 優もライナも直感する。


 今まで自分達を襲っていた大量の蔦は、こいつが操っているのだと。


 そして――これまで戦ってきたレイパーとは、明らかに次元が違う強さだということを。


 カームファリアは険しい山に囲まれ、レイパーですら襲い辛い街だ。


 しかし裏を返せば、カームファリアまで来たレイパーは、相当に強いということになる。


 カームファリアのレイパー出現件数は、他の街に比べて四割程度。


 だがレイパー一体あたりの犠牲者数はトップクラスなのが、カームファリアだ。


 結果、総合的に見れば、レイパーによる被害は他国と比べて八~九割程度までしか抑えきれていないのが現状である。


 ライナが鎌を構えてレイパーに突撃するのと同時に、優が弓の弦を引き絞り、白い矢型のエネルギー弾を放つ。


 さらにはレイパーに群がるように、四十を超える分身ライナが現れ、一斉に襲いかかった。


 しかし、


「っ?」

「ちぃっ!」


 二人と分身達の攻撃は、レイパーに届かない。


 地面から大量の蔦が現れ、レイパーの代わりに彼女達の攻撃を受けてしまったからだ。


 しかもすぐさま別の蔦が地面から生えてきて、その身を分身ライナに叩きつけて消滅させてしまう。


 それだけではない。


「きゃっ!」

「しまっ――」


 地面から生えてきた細い蔦が素早く優とライナの体を絡めとり、動きを封じてしまった。


 その拘束は強く、二人が力を込めてもびくともしない程だ。


 おまけに蔦が締まることで、二人の手からアーツが零れ落ちてしまう。


 ヤバい、と思った時には、もう遅かった。


 彼女達の首に、蔦が巻きつき――ゆっくりと締め上げていく。


「ホロ、ケヒニラムイ……。メケノネタムウヘクモラユ……」


 抵抗出来ないまま死を待つしかない優とライナが、その顔を絶望に染めるのを見て、レイパーは満足そうに頷くのだった。




 ***




 一方、時は少し前に遡る。


 雅とレーゼは、別の場所で蔦の大群と格闘中だ。


 カームファリアのバスターと協力しながら、何とか蔦の数を減らしているのだが、それでも次々地面から生えてくる蔦に苦戦を強いられていた。


 既にバスター側は三人が殺され、このままでは犠牲者は増えるのは目に見えている。そんな状況が理解出来てしまうからこそ、雅やレーゼ、他のバスター達は神経を擦り減らしながら戦っていた。


「くっ、また増えて……」

「ほんと、キリが無いわ!」


 さらに現れた巨大な蔦。その数三十本。


 これでこの場の蔦は、全部で八十本を超える。


 尋常じゃ無い数に、雅とレーゼが顔を強張らせた、その時。




 空から巨大な火球が降ってきて、蔦の半数以上を一気に焼き尽くした。




 さらに続けざまに聞こえてくる、蔦が斬り裂かれる音。


 そして、


「タバネ! 構えよ!」


 その言葉が聞こえてきたと思ったら、空に雷雲が立ち込める。


 何が起こるのか、雅が一瞬で理解したその瞬間、彼女に雷が落ちた。


 だが、雅が感電死することは無い。


 髪の毛を逆立て、抑えきれない電流が体から迸るも、その瞳は強い力に溢れていた。


 雅が『共感(シンパシー)』を使い、リアロッテのスキル『帯電気質』を発動し、身体能力を大幅にアップさせたのだ。


「ありがとうございます、シャロンさん!」


 雅は空に向かってサムズアップをしてみせる。


 そこにいたのは、シャロン。その背中にはミカエルも乗っていた。火球はミカエルの魔法だ。


 そして、


「マイカ! 助太刀に来てくれたのね!」

「うん! こっちは任せて!」


 真衣華が二挺の斧型アーツ『フォートラクス・ヴァーミリア』を振るい、襲いかかる蔦を次々に叩き斬っていた。


「レーゼさん! 一気に行きますよ!」

「ええ!」


 雅とレーゼは気合を入れ直し、果敢に蔦の大群へと立ち向かう。


 他のバスターも、三人の助っ人に希望を持ったようで、僅かながら動きが変わっていた。


 地上では雅とレーゼ、真衣華、バスター達が。


 上空からはシャロンのブレスとミカエルの魔法が、蔦に向かっていく。


 敵も負けじと数を増やしていくが、それでも明らかに雅達が押していた。


 雅の斬撃を、蔦が身を反らして躱したことで、雅は愛理のスキル『空切之舞』を発動。


 それにより瞬発力が上がり、『帯電気質』のスキルの効果も相まって、超高速で動き回る雅。


 レーゼ達すら唖然とするスピードで次々に蔦を斬り落としていき、最後の一本はレーゼの、虹の軌跡と共に放たれた見事な斬撃がクリティカルヒットし、ついに蔦が全滅した。


 ――数分後。


「皆さん! ありがとうございます!」

「どういたしまして。でも、間に合って良かったわ」


 雅がペコリとお辞儀すると、ミカエルが胸を撫で下ろしてそう返す。


「他の場所でも蔦が暴れていて、そっちを片付けて、それでこっちに来たんだ。そしたら敵が多くてビックリしちゃった」

「そっか。他の場所にも蔦が……。まぁ、そうよね」

「取り敢えず、儂らはまた別のところに行く。お主らも来るか?」


 シャロンからそう提案され、レーゼが頷きかけた、その時。


 雅のULフォンに、メッセージが届く。


 優からだった。


 何かあったのだろうか……と不安を覚えながら雅がメッセージを確認するも、そこに文章は無い。優は何も書かずに、雅に連絡を寄越したのである。


 しかし、それを見た雅の顔が青褪める。


 これは、二人の間で昔から決めていたルール。




 文章の無いメッセージは、自分の命の危険を知らせる合図だった。




「さ、さがみんっ? 場所は……近くだ! ごめんなさい! 私、行かなきゃ!」

「待ってミヤビ! 私も行くわ!」


 いきなり走り出した雅を、レーゼも慌てて追いかける。


 ミカエル達も追おうとするが、その時、別の場所から悲鳴が聞こえ、思わず動きを止めてしまう。


「ええっ? そんな! またっ?」

「くっ……仕方ない! アストラム! タチバナ! 儂らはあっちじゃ! 向こうは二人を信じよう!」

「なら――ミヤビちゃん!」


 ミカエルが杖型アーツ『限界無き夢』を振るい、離れていく雅に声を掛けると同時に小さな火球を飛ばす。


 その意味に気が付いた雅は、剣銃両用アーツ『百花繚乱』でそれを受けると、刃に炎を宿す。『ウェポニカ・フレイム』のスキルを発動させたのだ。


「蔦は炎に弱いわ! それで何とかして!」

「はい! ありがとうございます!」


 ミカエルの精一杯の援護に、雅はお礼を言いながらも足は止めない。


 そのまま雅とレーゼは、離れていくのであった。

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