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ヤバい奴が異世界からやってきました  作者: Puney Loran Seapon
第20章 カームファリア
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第171話『観光』

 八月六日月曜日。午後十四時六分。


 ここはサウスタリアの首都、カームファリア。


 サウスタリアはナランタリア大陸で最も面積の大きい国であるが、国土の半分は険しい山で占められている。カームファリアは、そんな山々を開拓して作られた都市だ。それ故に、他の街――シェスタリア等――へのアクセスは最悪だったりする。


 何故そんなところにある街を首都にしたのか。


 答えを一言で済ませるならば、『防衛の為』である。


 実は五十年程前までは、別の街が首都だったのだが、そこがレイパーの襲撃により完全に崩壊してしまった。その経験から、周囲を山に囲まれ、レイパーも中々攻めて来辛い場所に、首都を置くことになったのだ。


 事実、カームファリアのレイパー出現件数は、他の街と比べても四割程度しか無い。


 だがしかし。




 それが本当に良いのか……と聞かれれば、安直に首を縦に振れない事情もあるのだが。




 ***




 カームファリアの中央エリア。


 そこに雅、レーゼ、優、ライナがいた。


 ここにいない他のメンバーも、別のエリアを散策中だ。


 雅達がカームファリアに来たのは、先日新潟で保護された少女、ラティアを故郷に送り届けるためである。


 しかしラティアが喋ることが出来ず、文字も読めないため、これでは彼女をどこに送り届ければ良いか分からない。


 するとミカエルが、思考を読み取る魔法を研究している人がここにいると聞かされ、訪ねてみることにしたのだ。


 その研究者とは、今日の十八時に会う約束をしている。それまで、カームファリアを観光しようということになった雅達。


 人数も多いため、三チームに分かれることにした、という訳だ。


 因みにラティアは雅とは別チーム。「一緒がいいですよぉ!」と駄々を捏ねた雅だが、三人に無理矢理連れて行かれ、少し時間が経った今は落ち着いてきている。


「他の街との繋がりが悪いって聞いていましたけど、結構賑わっていますね」


 大通りに並ぶ店を見ながら、ライナが感嘆の声を上げる。


 アランベルグの首都、セントラベルグも割と開けていたが、ここも負けていない。


 近くの山で採取された良質な石を素材にした、三階建ての建物が多く見られ、各階に異なる店が入っている。同じような商品、サービスを扱っている店も割とあり、競争も活発なのだろうと思われた。


「周りには山。東の方へ行けば川があって、食料とかは結構色々採れるみたい。資源も豊富だし、案外他の所からの輸入に頼らなくても、問題無いみたいよ」


 と、レーゼ。これは昔、上司から聞かされた話だった。


「雰囲気も、何となくシェスタリアとは違いますね。上手く言葉では言い表せないんですけど……何と言うか、ここだけ別の国、みたいな異質さがあります」

「あー、分かる。建物の感じとか、何か違うもんね。雪もシェスタリアに比べると多いし」

「盆地ですしねぇ」


 日本は夏だが、ナランタリア大陸は冬の真っ最中。屋根や地面に積もる雪を見て、雅も優も、冬場の新潟の景色を思い浮かべた。


 シェスタリアは海沿いの街だからか、建物の外壁には塩害に強い素材が使われているのだが、カームファリアは屋根に積もった雪の重さで建物が潰れないよう、頑丈な素材を使っていたり、そもそも雪が積もらないように屋根が傾斜になっていたりする。


 そういった違いがちょこちょこと見られ、それが彼女達に、カームファリアが『別の国』だと思わせていた。


「さて、どこに行きましょう? 適当にこっちに来たけど、どこか入ってみる?」


 遊び(こういうこと)には疎いレーゼ。あちこちキョロキョロしながらそう尋ねる姿は、まるで迷子の子供のようだ。


「うーん……折角ですし、骨董品店でも見てみますか?」

「ライナさん、そういうの好きですねぇ」

「だ、だって気になるじゃないですか! 丁度あそこにありますし!」

「……もうチェック済みなんかい」


 ライナは顔を赤らめながらあたふたと指を差すと、優が苦笑いでボソリと突っ込む。


 だって見えてしまったんだもん、と言い訳するライナがおかしくて、雅もレーゼもクスリと笑ってしまった。


「も、もう皆さんったら!」

「ごめんごめん。でも、ああいうお店には入ったこと無いから、ちょっと興味があるわ。行ってみる?」

「おぉ、意外にもレーゼさんが興味を……。でもいいの? 私ら全然そういうの詳しくないけど?」

「いいんです! 見てるだけでも楽しいんですから! 難なら私が解説しますし!」

「ふふ! ライナさん、楽しそう。じゃあ、行きましょうか?」


 皆が乗り気になったことが嬉しいのか、グイグイと押してくるライナに、雅は優しい笑みを浮かべる。


 そして心なしかウキウキした足取りで先頭を進むライナの背中を見て、何となく、雅の手が自分の首元に伸びた。


 そこには、黒いチョーカー。これは、以前フォルトギアでライナとデートした時に貰ったものだ。スカイ・プロップのロゴが小さく入っている他は、普通のチョーカーである。


 普段チョーカーなんてしないから、首が何となくむず痒いが、しばらくすればきっと慣れるだろう。


 ライナに続くレーゼと優の後ろから、ちょっと遅れて雅が三人を追いかける。


 店に置いてあったのは古めかしい時計やら、土器何だかの破片。埴輪なのか土偶なのか、一見しただけでは区別がつかないようなものが多々あった。


 それが歴史的にどういった価値があるのだとか、雅達にはさっぱり分からなかったが、目を輝かせてうんちくを披露するライナを見ているだけで、充分に楽しめた三人。




 因みに年頃の女の子が骨董品店にやって来たことに、店主が大いに驚いたのは言うまでもないだろう。

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