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ヤバい奴が異世界からやってきました  作者: Puney Loran Seapon
第19章 新潟市中央区紫竹山
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第19章幕間

 新潟県内、某所にある廃屋。


 そこに、指名手配中の久世浩一郎――人工レイパーを創り出し、一時期『StylishArts』を乗っ取った張本人だ――がいた。


 ULフォンが普及する中で珍しい、書類による報告書を眺めていた久世。


 文明の利器に頼れば、警察に勘付かれる可能性がある。それを防ぐために、久世は敢えてアナログなやり方を用いていた。


 すると、


「……ついに、見つけた」


 久世は誰もいない空間に、ポツリとそう漏らす。


 ……否、誰もいない、というのは間違いだ。


 物影に、実はもう一人いる。


 以前、三条市下田地区の廃屋で、レーゼ達を襲った、のっぺらぼうの人工レイパーだ。


 久世はその人工レイパーに向けて、話していた。


「私はこれを、ずっと探していた。……どうやっても想定通りのパワーが出せない人工レイパーだが、ようやくまともな改良になるかもしれん」


 そこまで呟くと、久世は床に報告書を放り投げる。


 報告書の下の方に添付された写真。


 画像は荒いものの、映っていたのは雅達の前に現れた、あの般若のお面だ。


「原初の力を手に入れる為には、『これ』がどうしても必要だ……。他の人間が――特に、私を邪魔しにきたあの連中が、『これ』の特異性、異常性に気がつくより先に、計画を先に進める必要がある。……さて、そろそろ次の隠れ家に移動しなければならない頃か。行くぞ」


 久世の言葉に、のっぺらぼうの人工レイパーは控えめに頷く。


 そして外に誰もいないことを確認すると、彼をおぶり、廃屋を後にした。


 その数分後。


 廃屋から突然炎が上がり、他の人が気がついた時には、全焼してしまっていたのであった。




 ***




 時は、雅達が般若のお面を着けたレイパーに襲われるよりも前。


 昼の十二時三十分。


「ただいま戻りました――って、あら? 珍しい」


 希羅々が家に戻ると、玄関でばったり、父の光輝と会う。


 一日のほとんどを会社で過ごしている彼が、こんな時間に家にいることに、希羅々は内心、自分の発した言葉以上に驚いていた。


「希羅々か。いや、さっき電話で(てる)に『働き過ぎだ』と叱られて……」


 照というのは、光輝の妻。つまり、希羅々の母親である。


 年中仕事で忙しい光輝。照から度々『少し休んだらどうか』と忠告されているのだが、その度に『大丈夫』と言って聞かないのだ。そんな彼に、照は一、二年に一度くらいの頻度で怒りを爆発させることがある。


 そうなれば光輝は平謝りし、即座に仕事を止めて家に帰るようにしていた。


「去年は何も言われなかったから、もしかするとそろそろ雷が落ちるかな、と思っていたんだけどね……」

「全く……そう思うなら、大人しく休みを入れていれば、怒られずに済んだものを……」

「止めてくれ、希羅々。娘にまで叱られたら、流石にメンタルが持たない」


 控えめに両手を挙げ、降参の意を示す光輝。どうやら本当に凹んでいるようで、希羅々も溜息一つ吐くだけで、それ以上は何も言わないことにした。


 そこでふと、父親に会ったら聞こうと思っていたことを思い出した希羅々。


「お父様、少し教えて欲しいのですが……『アサミコーポレーション』の令嬢の、浅見(あさみ)四葉(よつば)さん、ご存知ですわよね」

「うん? まぁ、パーティとかで何度か会ったことがあるから、知っているよ。彼女が、どうかしたのかい?」

「いえ、実は束音さんが、浅見さんと知り合い……知り合い? 知り合いだったことが今日分かりまして。最も、最後に会ったのは四年前らしいんですけど」

「……何で『知り合い』を三回も繰り返したのか気になったけど、置いておこうか。それで?」

「……先日、どうも街中で浅見さんを見かけたようで、声を掛けたみたいなんです。最後に会ってから随分長いこと経っているのに、顔を覚えていたんだとか。まぁ、束音さんらしいと言えばらしいですが」

「……ほぅ?」

「ただその時、妙な話を聞いていて……浅見四葉さんには、妹さんがいたでしょう? ほら、浅見黒葉(くろば)さん。束音さん、彼女のこともご存知で、街で会った時に『妹さん、元気ですか』と尋ねたら……浅見さん、『元気だ』と答えたんですのよ」

「……何?」


 希羅々の話に、光輝は眉を顰める。


 とても信じられない、と言わんばかりの顔に、希羅々は自分の記憶が正しいことを確信した。


 そして駄目押しのように、光輝は口から衝撃の真実が告げられる。




「それはおかしいな。浅見黒葉ちゃんは……四葉さんの妹は、三年前にレイパーに殺されたはずだ。僕は彼女の葬式に出席したんだ。間違いない」

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