表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤバい奴が異世界からやってきました  作者: Puney Loran Seapon
第19章 新潟市中央区紫竹山
206/669

第164話『協力』

 今まで雅達はレイパーの事件に首を突っ込んでいたのだが、これは黙認されていただけであり、本来ならば問題だったことだ。


 特に優一や優香は、レイパーに関する様々な情報を色々雅達に教えてしまっていた。上にバレれば罰を受けても文句は言えない。


 そしてこれはレーゼやライナも同じことだ。一般人である雅達を戦いの場から遠ざけなければならないのに、彼女達と手を組み、レイパーと戦っていた。


「本当なら、もっと早くこうなるべきだったのよ」


 優香と優一の立体映像が消えた後、から揚げを小皿に取りながらレーゼは言う。


 二つの世界が融合した後、レーゼは自分の所属しているノースベルグのバスター署に訪れ、これまで自分が行方を晦ましていた件について、上司に報告に行っていた。丁度、雅とセリスティアがセラフィ達の様子を見に行った日のことである。


 その際、レーゼは二つの話を上司にしていた。一つは、日本で生活していた際に起きた人工レイパー事件を解決したいということ。


 そしてもう一つが、今後の自分の仕事のサポートとして、一般人の雅達の手を借りたいということだ。


 最初の話は了承されたものの、後の話は流石にすんなり許可が下りるはずもなく、実はレーゼは上司と大いに揉めていた……最中だったのだが、そこに先日の魔王種レイパーの事件だ。


 最終的には逃がしたとは言え、レーゼが雅達の協力を得て魔王種レイパーを撃退した事実は確かな物であり、そこでようやく、上司からの許可が下りたという訳である。


 勿論、レーゼも非常に悩んだ。


 レイパーとの戦いなんてものは、バスターや警察だけの仕事であるべきだという気持ちは強い。可能ならば、雅達には戦いとは無縁の生活を送って欲しかった。


 しかし、一方で現実はどうか。レーゼ独りでどうにか出来たレイパーがいたかと言われれば、答えには困窮してしまう。


 いや、誤魔化さずに言おう。いなかった。


 レーゼは雅と遭ってからの数ヶ月で、自分の能力と向き合い、自分にはまだまだ力が足りないという結論を導き出した。


 一緒に戦う仲間の存在は、必要不可欠だ。


 レーゼ自身も、気が付いた時に驚いたが、共に死線を潜り抜けた雅達のことを、随分と信用している。


 正直に言おう。


 本来なら守るべきはずの人達にも拘わらず、『その力を借りたい』と、レーゼはそう思ってしまった。


 さらに雅達が、自分を大事に思っていることも、レーゼは知っている。


 自分がどんなに止めたとしても、レーゼ自身が危険な戦いに身を置く限り、彼女達はきっと助けになろうとするだろう。しかしレーゼを助けようとすれば、大きな危険に巻き込まれてしまう可能性は高い。


 皮肉なことだが、レーゼが人を守るために戦おうとすればするほど、レーゼにとって大事な人達が危険にさらされてしまうのだ。


 ならばいっそ、彼女達を近くに置き、その動向を把握出来るようにしておく方が、すぐに助けられる分、却って安全だろう。


 レーゼが雅達に、自分の仕事に協力を要請したのは、こういう意図あってのことだった。


「上司からは『仕事の協力なら、身内のバスターでも良いだろう』って言われたけど……断っちゃった。あなた達の方が信頼出来るしね」


 ということにしてある。勿論、これも嘘の無い気持ちなのだが。


「レ、レ……レーゼさぁん!」


 レーゼの言葉に感動した雅が、思わず彼女に抱き付こうとした――が、雅の顔面をレーゼが鷲掴みしたことで阻止されてしまう。


 そして、ひどく冷たい目で一言、


「セクハラすんじゃないわよ」


 そう言い放つ。


 彼女は見ていた。飛びつこうとした雅の手がワキワキとしていたことを。


 抱きつかれれば、体をあちこち触られること必須だ。


 しかし、雅は諦めない。


「えー、いいじゃないですかー! 減るもんじゃないですしー!」

「受け入れたら女として色々問題なの!」

「ちょっとだけ! ちょっとだけでも!」

「駄目ったら駄目っ!」


 最早セクハラしようとするのを隠す気が無い雅に、レーゼが大きな声を上げる。


 そこまで言われてしまえば、雅も渋々といった様子で引き下がった。




 ***




 誕生日会が終わり、その夜。


 午後十一時を回った頃、相模原家の前では、優が立っていた


 昼間ずっと照り続けていた太陽の熱がまだ逃げず、夜だというのに割と暑い。


 額にほんのり汗を滲ませていた優だが、特段気にもしていない様子。遠くから歩いてきた雅を見て笑みを浮かべると、早く来いと言わんばかりに手招きする。


「おっそーい」

「ふふ、ごめんなさい、さがみん。シャロンさんやセリスティアさんが、中々寝付かなくて……」


 今日は優の誕生日。特別な日だ。


 そういう日は、二人で夜の街を散歩する。四年前から始まった、ちょっと危険な、二人だけの秘密のお楽しみ。


 一ヶ月ちょっと前に雅の誕生日があった日もやったことだった。


 雅からは、ほんのりとスズランの香りがする。以前、優がプレゼントした香水で、それをちゃんと付けてきてくれたことが、優も嬉しかった。


「あー、セリスティアさんは夜更かししそう。シャロンさんは意外だけど」

「結構夜型っぽいですよ。朝起きるのがちょっと遅いですし」


 異世界組は、日本にいる間は雅の家に泊まっている。シャロンと一緒に生活してまだ数日だが、彼女が夜型だというのは、初めて見る一面だった。


「あ、でもドラゴナ島の時は、シャロンさんは珍しく早く起きていたんですねぇ。あの魔王みたいなレイパーの気配を感じたからかな?」


 そんな会話を皮切りに、二人は適当に歩き始める。


 行き先は、優の希望により、新潟駅方面に向かいつつ、頃合を見て適当に帰ってくるコースだ。


「ふーん。あ、そう言えば、ミカエルさんやノルンちゃん、ファムやライナさんも結構夜型じゃない? フォルトギアの時、そんな感じだったし」

「あの四人も、理由が無ければ結構早く寝るタイプみたいです。特にライナさんなんか、今日は九時くらいに布団に入ってました。なんか、寝れる時にちゃんと寝ておかないとって。ほら、仕事が仕事ですし」

「あー、『ヒドゥン・バスター』だっけ? 隠密系の任務をこなさないといけない仕事だから、生活とか凄く不規則になりそう……」

「状況によっては何日も徹夜しないといけないみたいだから、大変ですよねぇ」


 因みに名前が上がらなかったレーゼは、特に理由が無ければ十時半には就寝するタイプである。彼女も仕事の関係で、場合によっては遅くまで署にいないといけない時があり、ライナと同様に『寝られる時にしっかり寝ておく』タイプだ。


「愛理ちゃんは絶対まだ起きてますよね。希羅々ちゃんは寝てるかな?」

「えー、どうだろう? 希羅々は起きる時間はいつも同じっぽいだけで、寝る時間はマチマチじゃない? フォルトギアで遅くまで作戦会議した時あったじゃん? あの時は割と平気そうだったけど、普通の日は結構早めに寝ていたみたいだし」

「……結構良く見ていますね」

「目に付くんだから仕方無いじゃない。……志愛は日付が変わるまで起きているタイプだって言っていたし、真衣華もアーツ弄りに夢中になって、結構夜更かしする日が多いみたいだよ?」


 内容があるようで、特に意味の無い雑談。


 こんな話でも、夜にこっそり抜け出して喋っていると、普通に会話するよりずっと面白くなるから不思議なものだ。


 その後も適当に喋くりながら、コンビニの前を通り過ぎた二人。


 しかしそこで、雅がふと足を止めた。


「ん? どうしたの、みーちゃん?」

「あれ? あの子……」


 雅の視線の先には、女性。


 背中まで伸びた、ハーフアップアレンジがされた黒髪の娘だ。歳は雅達と同じくらいの年頃である。


 こんな時間に、高校生くらいの子がコンビニに来るのは珍しい。彼女の手には、今買ったであろうカップアイスがあり、コンビニの外壁に寄りかかりながら黙々と食べていた。


「……おー、何々? 今時珍しい不良? 遅い時間に出歩くとか悪い子ね」

「さがみん。それを言ったら、今の私達も人のこと言えませんよ。――あの子、私の知り合いです。浅見(あさみ)四葉(よつば)ちゃん」


 雅の言葉に、優は目を丸くするのだった。

評価や感想、いいねやブックマーク等、よろしくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ