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ヤバい奴が異世界からやってきました  作者: Puney Loran Seapon
第17章 新潟市中央区
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第144話『窒息』

 一方、その頃。


 新潟市西区小針の通りを、志愛と真衣華が走っていた。


 二人は昨日、志愛の家でお泊り会をしていたのだ。次の日、二人で一緒にダラダラアニメを見ていた中で魔法陣が発生したというニュースを聞き、魔王種レイパーの仕業だとすぐに分かったため、魔法陣が発生したという現場に急行していたのである。


 すると、


「……ン? 真衣華、ちょっとストップダ!」

「志愛ちゃん?」


 小学校の近くを通りかかったところで、志愛が不意に立ち止まる。


 グラウンドで、女性が倒れていた。


 慌てて横にある入り口から中に入り、駆け寄ってみれば、倒れている人の側には刺股型アーツが転がっている。


 近くの地面には、何かと格闘したような跡が残されていた。


「……死んでいル」


 女性の首元で脈を測った志愛が、そう呟いて首を横に振る。


 真衣華は顔を一瞬歪めるが、すぐに斧型アーツ『フォートラクス・ヴァーミリア』を出し、自身のスキル『鏡映し』で二つに増やすと、それを構えて辺りを見渡す。


「……レイパー、いないよ。もう逃げちゃったのかな?」

「分からなイ。一応、他にも見て回ろウ」


 志愛も側に落ちている刺股型アーツを拾うと、右手に嵌った指輪が光を放つ。


 すると刺股が一瞬で姿を変え、棍型アーツ『跳烙印・躍櫛』になった。


 二人が校舎の外を見て回ると、他にも死体をいくつか発見する。恐らく教師だろうと思われた。


 それでもレイパーの姿は無いので、二人は意を決して校舎の中へと入り――息を呑む。


 玄関に、何人もの女学生が倒れていたのだ。


「コ、これハ……」

「偶々学校に来ていたのかな……? ひどい……」


 二人で手分けして生存者がいないか確認するも、結果は言うまでも無い。


 小学生はレイパーと遭遇した際、周りの子と団結して身を守ることと逃げることを最優先にするよう教えられているので、戦闘力は高くないのだ。このように倒れている場合、生きている確率は限りなくゼロと考えて良い。


 不自然なのは、どの死体にも外傷が無いこと、そして唇が青くなっていることだった。


「……これって、チアノーゼだよね? 窒息させられたのかな?」

「首を締められたって感じじゃないナ。何があったんダ?」


 敵の正体が見えず、困惑する二人。


 すると、何かが倒れるような音が聞こえてきた。


「何ダッ?」

「体育館からだね! 行ってみよう!」


 二人は顔を見合わせ頷くと、音のした方へと走り出す。


 すると、そこには十数人の女学生とアーツが転がっていた。全員死んでいる。


 奥の方で倒れている娘は、体を痙攣させていた。先程倒れたのは彼女だろう。


 慌てて駆け寄るが、二人が声を掛ける前に息絶えてしまった。


「……そんな」

「クッ……!」


 奥歯をギリっと鳴らし、辺りを見回す志愛。


 しかし、だ。


「……誰もいなイ?」


 てっきりレイパーがいるものだと思っていたが、それらしい影は全く無い。


 どこかに隠れているような気配すらも感じないのだ。


 音が聞こえてから、ここまで来るのに僅か数十秒。全く影も形も無いというのは妙な話だ。


「……ねえ、この子達も窒息させられてる。何かおかしいよ」

「一体、どうやっテ……」


 どうにも不気味な予感がして、助けを呼ぼうと真衣華がULフォンを起動させようとして――眉を寄せた。


「あ、あれ? ULフォンが使えない?」

「そんなはずハ……。エッ? 私もダ……」


 そこで、二人はあることに気がつく。


 死んでいる子達は、レイパーに襲われている間、誰も助けを呼ぼうとしなかったのか、と。当然、こういった時すぐに助けを呼べるように、幼稚園児や小学生ですらULフォンを使えるのが今の時代だ。


 さらに、ここで死んでいるのは全員学生。教師と思わしき人物は外で殺されていた。


「まさか、レイパーの能力かな? 通信を妨害されているのかも。それで先生達は外に脱出して助けを呼ぼうって思ったけど、殺されちゃったんだ……!」

「なるほド、筋は通っていル……」


 言いながら、ジワリと嫌な汗が背中を伝うのを感じる志愛。これでは自分達も助けが呼べない。


 そんな中、


「通信を妨害する能力がどの辺りまで適用されているのか分からないけど、早くここを出よう。敵がどこにいるのかも分からないんじゃ、私達が不利すぎる」

「随分冷静だナ……。頼もしイ」


 焦る様子も無く、次の行動を素早く提示する真衣華に、志愛は素直に舌を巻く。


 真衣華はフッと笑うと、


「まぁ、前にもこんなことがあったからね」


 以前、阿賀野でのことを思い出しながらそう言った。人工種キリギリス科レイパーが持っていた通信遮断機のせいで、今のようにULフォンが使えなくなったことがあったのだ。


 すると、


「……ン?」

「あれ?」


 突然、二人の視界にピンク色の靄がかかる。


 気のせいかと思って目を擦るが、靄は消えず。


 と、次の瞬間、


「――っ!」

「ッ?」




 突然、二人は息が出来なくなった。

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