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ヤバい奴が異世界からやってきました  作者: Puney Loran Seapon
第14章 フォルトギア
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季節イベント『子供』

子供の日なので、こういったネタを。

 ある日、ウェストナリア学院のアストラム研究室にて。


「あら? 何かしら、これ?」


 最近のアーツの研究データを纏め、論文を作成していたミカエル。色々必要な書類があり、研究室の奥を漁っていたら、中サイズの木箱が出てきた。


 蓋を開けてみると、入っていたのはコルクで栓をされたフラスコ。赤い液体が入ったものだ。


 何時、どこで、誰から貰ったものかは分からず、ミカエルは首を傾げる。


「まぁ、いいわ。後で考えましょう」


 そう呟きながら、ミカエルはそれを近くにある本の山の上に乗せるのだった。



 ***



 二時間後。


「師匠、ちょっと休憩されてはどうですか?」


 ずっと書類を探し続けるミカエルに、弟子のノルンが心配そうな声を掛ける。


 言われた本人は「もうちょっとだけー」と言うが、無理矢理にでも休憩させないとずっと作業しっぱなしになることをノルンは知っている。


 後ろから羽交い絞めし、引き摺るようにしてソファの方までミカエルを運ぶノルン。


 抗議の声を上げ、ジタバタするミカエル。


 だが、ミカエルは忘れていた。近くに置かれた本の山の上に、木箱を置いていたことを。


 偶然にも腕が本の山に当たり、上にあった木箱がミカエルのところに落ちてしまう。


 運の悪いことに、コルク栓が抜け、中身が零れてミカエルの服を汚してしまった。


「きゃっ!」

「あ、師匠っ? ごめんなさい! 大丈夫ですかっ?」

「え、ええ……私が悪いの。ノルンもごめんなさい。ちょっと待っていて」


 服には赤い染みが広がり、慌てて脱いで水に漬けにいくミカエル。


 すると、


「えっ? ちょ、きゃあっ?」

「師匠っ?」


 染みに水が触れた瞬間、煙が出て、それを吸い込んだミカエルの悲鳴が轟く。


 一体何が……と思ったノルンの目に、信じられない光景が飛び込んできた。


「え? え? え? ……し、師匠?」

「の、のるーん……」


 そこにいたのはノルンの敬愛する師匠……のはずだが、どこか様子がおかしい。


 まず、背が低い。元々背の高い人では無いが、それでもノルンよりは高かったはずだ。


 しかし今はノルンよりも頭一個半くらい小さい。


 それに、胸も小さくなっている。ボン、キュッ、ボンを地で行くスタイルだったはずだが、今はノルンと大差無い体つきだ。


 そして肌が瑞々しい。これは……


「し、師匠? まさか……子供になっちゃったんですかっ?」

「うぅ……そうみたい」


 見た目からして、五歳といったところか。シクシク泣き出すと、さらに幼く見える。


 よちよちとノルンの方へと歩いていくミカエル。しかし――


「あっ? 師匠危ない!」

「きゃぁ!」


 足元に散らばった本に躓き、転びそうになり、間一髪のところでノルンに抱き止められた。


「あ、ありがとぉ……のるん」

「お、おぉ……」

「のるん?」


 舌足らずな発音で、ノルンを見上げるミカエル。


 すると、ノルンが急にミカエルのほっぺを触りはじめた。


「の、のるん?」

「す、すごぃ……」


 もちもち、ふわふわ。


 抱きしめると、子供特有の温もりがある。


 ヤバい、可愛い。


 ノルンはそう思った。



 ***



「ふーん。で、その後どうなったの?」

「二時間くらいしたら、元に戻った。なんか、一時的な効果だったみたい」


 次の日。ノルンがファムに、昨日の出来事を話すと、ファムは呆れと困惑の入り混じった微妙な顔をする。


 因みにあの薬は『若返り薬』という、オートザギア――ミカエルの故郷だ――で流行っているジョークグッズだったことが後で分かった。中の薬品と水を混ぜると煙が出て、それを吸い込むと二時間だけ十五歳若返る。


 数年前、ミカエルが知人から貰い、後で使ってみようとしまっておいたのだが、そのまま忘れてしまっていたらしい。


「それにしても、災難だったね。でも、ミカエル先生の子供姿……ちょっと見てみたかったかも」

「可愛かったなぁ。もちもちふわふわって感じで、目を離すとすぐ転びそうになって……。高いところの本がつづかないから『のるーん、だっこぉ』とか言ってきて、もう凄いの。子供が出来たら、あんな感じなのかな?」

「……ノルンは、子供欲しいの?」


 何故か緊張の面持ちでファムが聞くと、ノルンは「うーん」と軽く唸りながら、悩んだ顔をする。


 これまで特段そういった願望は無かったが、昨日幼女化したミカエルと一緒に過ごせばそう言った感情も芽生えよう。


 とは言え、子供なら何でも良いかと聞かれるとそういうわけでもない。


 どんな子供が欲しいかと思えば、それ即ち……


「し……師匠によく似た子供が欲しいなー……なんて……」


 恥ずかしそうに顔を赤らめ、やんやんしながらノルンはそう言った。


「……は? 今なんて?」

「ちょ、ファム! 二回も言わせないでよー!」


 一瞬呆然としたファムだが、すぐに顔を真っ赤にし――




「ノ、ノルンのばかー!」




「ちょっ? ファムっ?」


 何故かファムがプンスカ怒るのだった。

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