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悪党とバカと不思議な黒猫  作者: 赤井"CRUX"錠之介


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24/33

誠、プロジェクトBを成功させる

 午後三時を過ぎた頃、ギャルトリオは例によって狂言町の大通りにいた。

 道端に設置されたベンチに座り、大声で笑い合ったり、スマホを見せ合ったりしている。その姿からは、今が楽しくて仕方ない……という気持ちが伝わっていた。

 そんな中、彼女たちの前に自転車が停まる。乗っているのは、自転車の配達員だ。それらしい制服を着てヘルメットを被り、サングラスをかけている。背中には、大きなリュックを背負っていた。

 配達員は、ギャルトリオをまっすぐ見つめ口を開く。


「あの、すみません。あなたたち三人にお届け物です」


 突然、そんなことを言ってきた。すると、大ギャルが訝しげな表情を浮かべ尋ねる。


「えっ、あたしらに?」


「そうなんですよ。はい、これです」


 言いながら、配達員は箱を突き出してきた。見れば、菓子折りの箱くらいの大きさである。しかし、どう考えてもおかしい。確かに、彼女たちは毎日ここにいる。だが、配達場所にこんな路上を選ぶだろうか。しかも、三人まとめてである。

 大ギャルは首を傾げ、差出人を見ようとした。が、小ギャルが近寄っていき受け取ってしまった。


「どうも、ありがとうございましたぁ」


 愛想よく言うと、配達員はペコリと頭を下げ去っていった。


「ちょっと、もらう覚えがあるの?」


 大ギャルが尋ねたが、小ギャルはとぼけた表情で答える。


「知らなーい。あたしたちの隠れファンか何かじゃない? とにかく開けてみようよ」


 言いながら、小ギャルが開けようとした時だった。

 突然、箱の上部が破れる。さらに、人間の頭のようなものが飛び出してきたのだ──


「う、うわあぁ!」


 小ギャルは、びっくりして箱を放り出す。中ギャルと大ギャルも、あまりのことに悲鳴をあげた。

 よく見れば、箱から飛び出してきたものは、人間の頭……によく似た人形の頭である。バネが付いており、ギャルトリオのみっともない姿を嘲笑うかのように、ゆらゆらと左右に揺れていた。

 と、そこに先ほどの配達員が現れる。ヘルメットをゆっくりと取り、背負ったリュックに放り込む。

 次いでサングラスを外し、これまたリュックに放り込んだ。

 そこから現れた顔は、見覚えのあるものだった。切れ長の涼しげな目、鼻筋の通った顔、それらのイケメン要素を台無しにする軽薄そうな口元。そう、小林誠だったのだ。


 途端に、ギャルトリオは立ち上がった。


「てめえ、あん時の紙袋オヤジじゃん!」


「お前の仕業かぁ!」


「ざけんじゃねえぞ!」


 ギャルトリオは口々に怒鳴るが、誠は高らかに笑う。


「ヒャッヒャッヒャッ! 思い知ったかギャルどもめ! これが大人の怖さじゃ!」


 そう言うと、またしても笑った。こうなると、さすがにギャルたちも黙っていられない。


「てんめえ、ふざけやがって! ボコってやるからそこにいろ!」


 大ギャルが怒鳴り、拳を振り上げ突進していった。この娘、身長は百七十センチを超えており体格もガッチリしている。喧嘩なら、誠よりも強そうだ。

 しかし、誠は自転車を走らせた。大ギャルのパンチが届く前に、あっさりと遠ざかっていく。


「ほらほら、追いつけるもんなら追いついてみろ!」


 嘲るように言いながら、誠はあっという間に逃げ去ってしまった。


「クッソー! あのオヤジ!」


「あいつ、今度見つけたらボコボコにしてやろうよ!」


「当たり前だ。もう許さねえぞ。今度は、あたしらがあいつを泣かす番だ」


 口々に言いながら、リベンジを誓い合うギャルトリオなのであった。




 一方、逃げおおせた誠は、路地裏で自転車を停めていた。


「いやあ、完璧に引っかかってくれたなあ。あいつらがバカで助かったよ。プロジェクトB、大成功だね」


 言いながら、誠はニヤリと笑う。


 このプロジェクトBとは……何のことはない、ただ単に自転車を使うからBなのである。そう、バイシクルのBなのだ。

 工場の中から、使わなくなった部品を密かに加工し強力なバネを作り、人形の頭と組み合わせてセットする……はっきり言えば、ただのビックリ箱である。ただし、遠隔操作が可能なものだ。

 ギャルトリオが顔を近づけたのを確認し、ボタンを押す。仕掛けが作動し、ギャルたちは完全にビビっていた。これで、誠の怖さを思い知ったことだろう。


「さあて、プロジェクトBも完了したことだし、仕事に戻るか」


 言いながら、誠は自転車を走らせる。工場へと戻っていった。



 その後、工場内では作業が始まったのだが……誠は上機嫌である。


「ハンハンハーン、ハハンハハーン」


 奇怪な鼻歌を口ずさみながら、体をくねらせ歩いていく。これには、外国人バイトたちも困ってしまった。


「誠、どうしただ?」


 ソムチャイが、そっと小声で尋ねた。


「んー? ソムチャイ、やはり人間には成功体験が必要だよ」


「何を言ってるだ? わけがわからないだ?」


「そうかそうか。お前はエリートだが、まだまだ知らないことが多いようだな。いいか、人間は成功体験を重ねることで、努力する喜びを知るのだ。というわけで、次の手を考えんとな」


「次の手? それはなんだ?」


「あいつらも、これで引っ込んでいるとは思えん。必ずや逆襲してくるはずだ。となると、それに対抗する手を考えんとな。さて、どう戦うかのう?」


 そう言うと、誠は歩き出した。下を向き、ブツブツ言いながら工場内を動き回っている。


「さて、今度あの大ギャルに捕まったら、ボコボコにされてしまうな。どうすればいいだろうか」


 そんなことを言いつつ歩いていた時だった。突然、後ろから肩を叩かれる。同時に、凄まじい殺気を感じた──


「小林誠……さっきから、ひとりで何をブツブツ言っているのだ? ついに頭がおかしくなったか?」


 言うまでもなく寅美である。誠は振り返り、いつものように適当に答えようとした。が、そこである考えが浮かぶ。


「いえ、まだおかしくなってないです。それより、寅美班長に相談があります」


「はあ? 相談? 何事だ?」


「今日、何か予定はありますか? なければ、一緒に帰りませんか?」


「は、はああぁ!」


 寅美の声から、怒鳴り声が出た。他の外国人バイトたちは、何事かと作業の手を止め顔を上げる。

 そんな状況にもかかわらず、誠は平気で話を進めていく。


「はあ、じゃないですよ。一緒に帰りませんか、と言ったのです。何か予定があるんですか? それとも、俺と帰るのは嫌なんですか?」


「べべべ別に、そそそそういうわけではない」


 寅美の顔は真っ赤である。喋り方もおかしく、声もうわずっている。外国人バイトたちは、ニヤニヤしながら会話を聞いていた。

 そんな状況下で、誠はさらに語り続ける。


「いいんですか? じゃあ、しばらくの間一緒に帰りましょうよ。最近、ヤバイ奴らに狙われちゃってましてね、ぜひとも寅美班長にボディーガードをやって欲しいんですよ」


「なんだとぉ!」


 怒鳴った直後、寅美は恐ろしい表情で立ち上がる。さらに罵詈雑言を浴びせようとした……が、その言葉を飲み込む。

 代わりに、こんな言葉が出ていた。


「狙われてるって、相手は何者だ?」


「実はですね、ギャルを怒らせてしまったのですよ。あいつ、すっかり怒ってまして……そこでですね、ぜひとも寅美班長にボディーガードをお頼みしたいのです」


 途端に、寅美の瞳に凶暴な光が宿る。


「そうか。お前は若い女と仲良くなった。が、しょうもないバカなことをしでかして相手を怒らせてしまった……要するに、痴話喧嘩の仲裁を私にしてくれというわけか」


 どうやら、とんでもない勘違いをしてしまったらしい。誠は、慌てて否定した。


「ちょっと! 何を言ってるんですか! ぜんぜん違いますよ!」


「違うも何もあるかぁ! このバカ者がぁ!」


 この後、寅美に誤解された誠は……いつもよりたっぷりと説教されたのであった。








 



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