メラン魔戦車孤軍奮闘、 住民の恨み……b
「出来る限り接近したら一発目を撃ったあと、走りながら射撃する行進間射撃という物をしちゃいます。こちらは建物の影に隠れながらなので多分撃たれる事は無いと思うけど……まあ頑張りましょう!」
魔導士の少女は緊張しながらもなんとか笑った。魔戦車は敵に察知されないぎりぎりまで肉薄する。
「緊張するけど……では撃ちます。回復職さん突っ走り、がんばってね」
「ええ」
「物理弾発射!!」
魔導士の少女が物理弾を発射すると、西門の前に並んだ7両程の魔戦車の真ん中辺りの車両の砲塔の根元に見事命中し、爆発が起こり炎を噴き上げ砲塔が飛んで行く。当然中の人々は即死である。
「あ、ああた、あた、当たっちゃった! 動いて全速力!!」
息を潜めていた魔戦車が全速力で走り出す。同時に派手に展開する物理防御と魔法防御魔法陣。
続けて二発目を発射する。吸い込まれる様に同じように砲塔の根元に命中し、爆発して飛び上がる敵の魔戦車。
「凄いですよ魔導士さん! 二発連続で命中しました!!」
駆動担当の回復職が目を見張って感動する。
しかし敵の魔戦車も反撃を開始して来る。しかし遮蔽物の家と家の間を走行している、魔導士の少女が乗る村の魔戦車にはなかなか当たらない。
「うわあ、凄い撃たれてる撃たれてる。こちらも続けて撃ち続けます」
敵が動き始めた為に次々に撃つ弾が当たらない。
ドンッ!
しかし突然関係の無い敵の魔戦車が一両爆発炎上する。義勇軍のみんなが混乱に乗じて肉薄し、魔法瓶を複数放り投げたのだった。ここから乱戦が始まった。
魔戦車隊の混乱を見て、再び城内に逃げ込む敵兵達。義勇軍はあたかも自分達の城に攻め込む様な立場になっていた。
「あっ! 皆さん出て来ちゃった! こういう時どうするの? 味方を撃ったりしないのかな!? わからなくなって来ちゃった」
「と、とにかく見極めて、端っこのヤツから撃破して行きましょう」
魔法剣士の少年が叫ぶ。
「う、うん近くに味方がいませんように!」
魔導士の少女が叫びながら撃つと今度も命中した。これで敵軍の魔戦車は残数半分を切った。
「敵軍だ! 敵の正規兵が戻って来た!!」
西面の門前の脱出中のニナルティナ魔戦車隊への奇襲による混乱で、一旦城内に戻ったニナルティナ軍残存兵士達だが、そこで新たな敵に直面していた。
北の偽装魔ローダー発掘現場へ向かっていた正規軍が兎幸の説得を信じ、主に騎馬隊が猛烈な速さで引き返し北面の門から城に入り残存の敵兵を狩りながら、ようやくこの混乱の現場にまで到達していたのだ。
つまり空の城に攻城戦をしていたニナルティナ兵が、敵の城の中で北と西から挟撃されている様子を『敵襲敵襲』と言っている、非常に逆転したややこしい状況になっていた。




