ドラゴン達との戦い
「えーい、とにかくドラゴンに向かって撃て! 撃ちまくれ!!」
中州周辺に着地してきた数匹の巨大なサーペントドラゴン達に向かって、正規軍の魔戦車や魔導士、魔銃を持った兵士らが闇雲に撃ち始めた。
一旦着地して以降は飛翔しない様だが、ドラゴンの巨大な体の硬い鱗には傷一つ与えている様には見えない。
その内の一体のドラゴンが大口を開け、開いた喉の奥に赤い光が輝いたかと思うと、次の瞬間には巨大な炎が吐き出され、容赦無く兵士に浴びせかけられる。
「ぎゃー」
「熱い!!」
一瞬にしてリュフミュラン正規軍が占拠した、ニナルティナ中川の中州は阿鼻叫喚の地獄と化した。さらに蹴られ転がされ、踏まれ潰される魔戦車。全く歯が立ちそうに無い。
「なんて事!? とにかく魔ローダーを盾にしてあの攻撃を防ぐわ」
そう雪乃フルエレが言うと、全高二十五メートルの魔ローダーの身体でサーペントドラゴンの前に立ちはだかり、炎攻撃を防ぎにかかる。
ドラゴンの炎の直撃を食らってもびくともしない魔ローダーだった。
しかし今この場に見えているだけでも五匹、それが港湾都市全体で五十匹という話なのだから、こんな事をしていても全く話にならない。
「兎幸ちゃん! あれを倒す方法はあるの? 教えて早く教えて!!」
いつものフルエレの、切羽詰まるとテンパり焦りまくる状態が出て来る。
「雪乃落ち着いて……安心して、兎幸あれの事良く知ってる……氷のモンスター族館にも展示してる……倒し方知ってる」
「早く! 早く言って!!」
その間にも巨大なサーペントドラゴンが部隊に襲い掛かろうとし、後退しつつ魔戦車が応戦する。
剣や槍と言った巨大な専用武器を何も持たないフルエレの魔ローダーは、取り敢えず炎を吐きだそうとしたドラゴンの一体に殴りかかって倒すが、すぐに起き上がる。
その間にも違うドラゴンが部隊に襲い掛かり、今また襲い掛かる別のドラゴンの首を掴んで羽交い絞めにするが、同時に別のドラゴンに肩を噛まれるという入り乱れた酷い状況だった。
幸運な事に今の所ドラゴンの強い顎による噛みつきや鋭い爪の攻撃は当たっても、人型魔法機械の魔ローダーにはダメージを与えていなかった。
「このドラゴンは……首の付け根に柔らかい炎袋があるの……そこを鋭い物で突いて……炎袋を破けば、炎を吐こうと……した時に体内に……炎が充満して自爆するの」
「分かった! やってみる!!」
言うな否や、魔ローダーは助走をかけ、大口を開けた一体のサーペントドラゴンの首の付け根辺りに、思い切りガントレットの尖った指先の手刀を突き刺した。
鈍い音と共に掌の半分程まで突き刺さる。それをズクッと抜き取ると、濃い緑色の血が流れ落ち一瞬ドラゴンは苦しそうな顔をしたが、すぐに体勢を立て直し、大口を開き炎を吐こうとした……
が、次の瞬間首の根元辺りが大きく膨らみ突然自ら炎に包まれ自爆した。ドスーンという轟音と共に地響きをたてて倒れる巨体。喜ぶ兵達。




