ファームファンタジー(仮)5
「な、な、な、なんじゃ、これは!?」
「え、なにが?」
マオの牧場と比べてあり得ない程に拡充されたユウの牧場を見て度肝を抜かすマオ。
「全部じゃよ、全部!
ゲーム内で何日経過すればこうなるのじゃ?」
「ええっと……いま40日目かな」
「は……嘘じゃろ?
妾は30日じゃがこんなもんじゃぞ」
そう言われてユウがマオの牧場に案内されると、初期の頃からほとんど変わっていない状況に愕然とする。
「え……嘘でしょ……何でこんなに変わってないの?」
「そんな事言われてもの……」
「ヒャッハー!
新人を早速いびりにやってきてあげましてよ!」
マオの牧場の様子を見ている時、唐突にモヒカンに棘のついた肩パッドを付けたキャラクターがやってくる。
「ぬ、あれは何じゃ?」
「あ、あれは新人いびりに定評のある天先輩だよ!」
「その通りですわ!
早速、貯め込んだお宝をちょうだ……え、何ですの、これ?」
釘バットを振り回しながらやってきたのは、ユウ達の先輩であり、くじよじの初期メンバーでもある天照子であった。
彼女はこの明らかにヒャッハーなキャラクターを使って、オンラインに繋げた事務所のメンバーに現実の厳しさを教える事を生業としていたのだ。
ユウも最初に襲撃を受けたのだが、卓越したゲームセンスによってオンラインに繋がれた頃には天さんを易々と返り討ちにし、ついでに相手側に乗り込んできて軽い略奪をしてきたりしている。
そんな様子から、くじよじの山賊。歩く無法地帯。ヒャッハーの化身と言った不名誉なあだ名が付けられていたのである。
だが……そんな彼女ですら牧場の様子を見て戸惑う……そのレベルでマオの牧場の様子は酷かった。
「あの……ひょっとして既に誰かに襲われたのかしら?
あ、ユウちゃんがいるから犯人はユウちゃんね!」
「僕がマオに危害加える訳ないでしょ。
それにここは既に同盟組んであるし。
っていうか、口調どうしたの?
天さんってもっとこう……砕けた話し方かじゃなかったっけ?」
「実はこのモヒカンキャラにお嬢様言葉で話してたら面白くないかしらってやってみたのですわ。
自分の元々の口調が分からなくなってしまいましてよ!」
「そんなの自業自得じゃない」
ワイワイと言い争いをする2人の横でマオのキャラクターは画面越しに本人の落ち込み具合が分かるほどに沈み込んでいた。
「の、のう……妾の牧場はそんなに酷いのかの?」
「正直言って逆に感心するレベル」
「ここまで酷い場所は見たことがありませんわ!」
落ち込むマオを尻目に2人は1番傷つくであろう、率直な感想というカードを切るのであった。




