今年もやっぱり大爆発 1
「今年はどうなるんだろうね?」
「ポスターを見る限りではオールスター感が凄いのう。
これはかなり気合を入れて作っておるのではないか?」
平日のお台場……2人はとある映画を見にこの場所へとやってきていた。
その映画は毎年、春頃に前後に放映されており、この時期定番となっている国民的人気アニメであった。
「初週だから4DXあって良かったよね」
「これは4DXで見なければなるまいよ」
この世界に来てから春にその映画を4Dで観た2人は、この作品こそが最もこの特殊なスクリーンに相応しい作品であるという確信を持っていた。
なぜならば……
「ラストの揺れ方がヤバいんだよね。
座ってる人の事を一切考慮してなくて」
「ワイルドなクルマの映画よりも揺れるからのう。
現状、国内、国外問わずに1番激しく揺れる映画シリーズではないかの?」
そう、2人が話す通りにこの映画の揺れは下手なアトラクションを遥かに凌ぐほどに激しい。
特に毎回ラストは爆破の連続と主人公の「いっけええええ!!」が有名なのだが、そのシーンの揺れかたは異常なのである。
ここで4DXについて知らない人のために解説しておくと、4DXとは場面に合わせて匂いや煙、照明や水が飛び出してくる。
そして1番のポイントは場面に合わせた座席の揺れであり、例えば爆発が起きた時。車で悪路を走る時。肉弾戦のバトルをしている時。
そんな様々な場面に合わせて座席が動く仕組みになっている。
この他にも特殊なスクリーンとして左右の壁もモニターになり、270度の絶景を齎すスクリーンX。
座席にスピーカーが取り付けられており、圧倒的な音響を楽しめるプレミアムシートなど様々な特別を演出するものがある。
その中でも2人は4DXの大ファンであり、新作の映画は常にこの座席で観ているのだ。
そんなあらゆる作品を4DXで観てきた2人が大絶賛し、1番揺れるという評価を下した映画。
それがこの国民的探偵アニメだったのである。
「ポップコーン食べる?」
「あの揺れではのう……今日はドリンクだけで良いわ」
「僕もドリンクだけで良いかな。
Mサイズ二つで……あ、4DXなんでトレーは大丈夫」
通常の映画用にトレーを用意した店員に断りを入れるユウ。
座席が揺れるのでトレーは使えないので、一言断りを入れるのがマナーなのである。
「マナーは大事じゃよな」
「紳士を作るからね」
とある映画のセリフを引用しつつ、荷物をロッカーに預ける2人。
これも揺れが激しいため、なるべく物を少なくして鑑賞するというのがマナーなのである。
こうして鑑賞の準備を整えた2人はいざ、指定された席へ……
「あ、先にトイレ行ってくる」
「妾も済ましておくかのう」
上映中に席を立つのも良くはないので、事前の準備は大事である。




