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遭難事故の結末

目が覚めて辺りを見渡す。


畳の部屋に布団が敷いてあり、自分が寝ていたのはこの布団である。


入口らしき扉と反対の方向には襖がある。


身体が問題なく動くことを確認してからそちらに向かい襖を開けた。


「うわっ……何という景色だ」


その先には小さなスペースがあり、更に奥の方はガラス張りになっていて外の景色が一望できた。


自分が割と高いところにいる事を認識しつつ、下を見下ろすと、あちこちに氷で出来た建物があるのが分かった。


この景色だけ見るならば、まるで海外の豪雪地帯の観光地のようである。


そこでふと気付く……自分がいつの間にか浴衣に着替えさせられていた事に。


「とりあえず外に出てみるか」


建物内は暖かいのでこのままでても問題ないだろう。


そう思って外に出てみると、やはりここは旅館らしく、廊下と他の部屋に通じる扉が無数にあった。


だが、旅館にしては恐ろしいほどに人の気配を感じない。


「まさか妖怪のお宿にでも迷い込んじまったかな」


そんな事はあるまいと思いつつも下に降りる階段を見つけて降りていく。


どうやら先ほどまで自分がいたところは3階らしく、下に降りると2階という文字と地図があるのを見つけることが出来た。


2階は食堂や温泉があるらしい……のだが、食堂には誰もおらず、明かりも無い。


温泉は少し気になるが、とりあえず自分をここまで連れてきた人がいるであろうから探して動く事にした。


一階まで降りると何やら声が聞こえてきた。


そちらの方に近寄ってみると、女性と思わしき人物がモニターの前で話しているのが分かる。


「あ……!?」


「申し訳ないが彼女に声をかけるのは遠慮してもらえるかな?」


声をかけようとしたのだが、突然目の前に現れた女性が行く道を塞いだ。


「す、すまない……助けてもらったことのお礼を言いたかっただけなんだ。

後はここが何処なのかと言うことも」


「お礼は受け取っておこう。

残念ながらここの事はまだ明かせないんだ。

建築中の観光地……とだけ言っておこう」


「そうなのか……それにしても本当に助けてくれて感謝している。

凍傷になっていた指まで元通りになっているなんて奇跡としか言いようがない。

このお礼は必ずさせてもらうよ」


「それならば目が覚めたら自分は雪女の里に招かれたと宣伝してくれればいいさ」


「それはどういう……うっ!?」


「おやすみ……目が覚めたら安全な場所さ」


女性が自分の額に指を押し当てる……すると、突然身体の温度が下がっていくのを感じた。


そして、それと同時に自分の意識がまた無くなっていく。


最後に見た光景は色白の美人が小さく微笑む姿であった。


……結局、この後目を覚ました俺はスキー場の休憩所の中であった。


服装は元通りになっており、荷物も全て無事であった。


あれは夢だったのだろうか?


そう思おうとしたが、あれは現実感のある出来事であった。


それから言われた通りに遭難話をする時に雪女の里に招かれたという話をした。


野次馬的にこの話が知れ渡り、みんなは信じないながらも面白がってくれていたのだが……ある日のこと。


「おーい、お前が言っていた雪女の里ってこれの事か?」


友人が一枚のチラシを持ってくる。


そこには自分が倒れていたスキー場の上の方に新たに宿泊施設が出来たこと。


その宿泊施設が雪女の里である事が書いてあった。


更にチラシに載っていた目玉スポットの氷で出来た建物はあの時見たままのものであった。


「なぁ、折角だし行ってみないか?」


「ああ、そうだな。

今度は防寒対策をしっかりして……な」


こうして友人と予約を取って宿に泊まると、あの時俺に説明してくれていた美女が出迎えてくれた。


彼女に改めてお礼を言おうとしたのだが、頑なに拒否し初めましてを繰り返す事から、この話題はしない方が良いのだろうと感じた。


こうして一連の遭難事故に一応の決着をつけた俺は雪女の里と呼ばれる観光地を満喫するのであった。


余談であるが、美人の女将と従業員達が最高のサービスをしてくれるこの旅館……俺と友人はまた来ようと誓ったのだが、それからは人気が爆発して一向に予約が取れないでいるのが困ったものである。

もう気付かれていると思いますが、前回の冒頭に出てきたのはユウとマオ。

雪女の里はネコリとセシムが冬の間預かる予定になっている宿泊施設です。

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