ゆっくりしていきなよ 3
「最近面白くて勉強になると思ったのはこのシリーズじゃな」
「ええっと……過去にやらかして業績悪化して倒産した会社の説明してるんだね」
ユウが見たモニターの中では、先ほどと同じ黄色と紅白の生首がやらかした企業についての説明をしていた。
その動画は事前の知識がないユウでもスッと説明の内容が入ってくるほどに分かりやすく作られている。
その為に20分弱の動画の中で、マオに説明を求める事なく見終わることが出来たのであった。
「へぇ……これ、潰れた原因をちゃんと洗い出して視聴者に伝えてるの凄いね。
おかげで最後まで楽しく見れたよ」
「他にもオススメの動画があるから視聴してみるかの」
こうしてマオがオススメする投稿を何本か視聴するユウ。
それは最近話題のステーキ屋であったり、去年お騒がせした納豆関係の食堂だったりと様々である。
「こうして知ってみるとアレだね。
失敗した企業って社内コンプライアンスの意識が薄かったって感じかな?」
「うむ、そのようじゃな。
その時は問題ないと隠した事が後になって大事になったパターンも多いのう。
会社というものは短期的なものではなく長く続けていくものじゃ。
短絡的な方法ではなく、足場を固めてじっくりと腰を据えて行う事が必要なのであろうな」
何かを懐かしむような眼差しを見せながらそのように語るマオ。
「あ、ピーンときちゃった。
マオさ、いま自分が魔王だった時の事を思い出してたでしょ?」
かつて魔王だったマオは、無秩序であった魔国に法を定め、秩序を取り戻す政策を行なっていた。
力こそが全てという考えを改める為に少しずつ行動を起こし、じっくりと人々の価値観を変えていった彼女だからこそ思う事があったのかもしれない。
「ユウには何でもお見通しじゃな」
「まぁ、付き合いは長いしね。
それにその辺りの苦労はこっちの世界に来る時に散々聞いたわけだし」
かつてユウとマオが次元の壁を彷徨っていた頃、2人には時間があったのでお互いのことを散々に語り合ってきた。
特に遥かに長い時を生きているマオの方が自分の人生を語る機会は多かったのであろう。
当時は辛い旅路であったが、2人だからこそ乗り越えた今では良き思い出となっていた。
「そうじゃったな……ならば、妾が今何を考えておるか分かるかの?」
「ちょっと待ってて……これでしょ?」
ユウが一旦キッチンに戻っていき、帰ってきた頃には手にグラスとウイスキーを持ってきていた。
「よく分かっておるではないか」
「マオってあっちの事を思い出すと直ぐに飲みたい気分になるもんね。
今日は特別に好きなおつまみも作ってあげるよ」
「では、クリームチーズを生ハムで巻いてもらおうかの。
オリーブオイルも忘れずにな」
「はいはい、仰せのままに」
こうして動画鑑賞を終えた2人はリビングに向かい、昔話に花を咲かせるのであった。
こちらで話題にしている動画は、しくじり企業などで検索をしていただければ直ぐに見つかると思います。
初心者でも分かりやすく経済の事が勉強でき、詐欺やブラックな企業から自衛するための考え方なども学ぶ事が出来ておすすめです。




