ゆっくりしていきなよ 1
「ふむふむ……なるほどのう……」
とある日の事、ノートパソコンを立ち上げてサムネイル作成や編集などの作業をしつつ、デスクトップのモニターから流れてくる動画に耳を傾けていたマオは興味深げに頷いていた。
「マオ〜コーヒーと焼いたクッキー置いとくよ……って、何見てんの?」
差し入れを持ってきたユウがモニターで流している動画を見て尋ねる。
通常は同業他者の配信を流している事が多いマオであるが、その日は全く違うジャンルの動画を流していたのだ。
饅頭やら生首やら言われる頭だけの生き物に機械音声を使って喋らせる動画。
メインとなる2人が聞き手と語り手に分かれて様々な解説をする一大ジャンルである。
最初にゆっくりと見ていってほしい旨を伝えた事から、ゆっくり動画とも呼ばれている。
ユウ達が行っているVの配信ジャンルよりも遥かに昔から作られているそれは、未だに新たな動画が多数生まれており、面白いものも多数ある。
「うむ、偶々オススメに出てきたので見ておったのじゃよ」
「へぇ〜これってなんか色々解説してある動画だよね。
何のテーマについて解説してたの?」
「今見ておったのは山での遭難事件を扱ったチャンネルじゃな。
主に日本での遭難事件が主となるのじゃが……これが中々に馬鹿に出来ぬ内容でのう」
言われてユウがモニターに顔を向ける。
そこではフリー素材で有名な簡易的なイラストの男達が、同じように簡易的なイラストのクマに襲われているシーンであった。
「いま見ておったのは福岡のワンダーフォーゲル部が北海道で登山中、ヒグマに襲われた話じゃな。
5人中2人が死亡する痛ましい事件じゃったよ」
「あ〜なんか僕も別のチャンネルで見たことあった気がする。
結構無茶した行為がヒグマに挑発と取られてずっと追いかけられたんだよね」
「最初に襲われた時、置いていった荷物に夢中だったのでそのまま逃げておればよかったのじゃがな。
なまじ取り返そうと行動を起こした事が良くなかったようじゃの」
ヒグマは獲物に執着する性質があるので、取り戻した積み荷を追ってきていたのだと動画の中では説明していた。
「結構昔の話だから対処法もそこまで確立してなかったんだよね。
何にしても悲惨な話だよ」
「他にも多くの遭難事故を見てきたのじゃが、大半の原因はベテラン登山家の油断が多かったのう。
前回これでいけたから。
前は余裕があったから。
こんな理由で軽装であったり、危険地帯へ踏み込んだりと様々な理由で遭難事故を起こしておるのう」
「僕もちょっと興味が出てきたから隣で見ていい?」
「うむ、良いぞ。
ついでにお菓子と飲み物も多めに持ってきてくるのじゃな」
「りょーかい。
じゃ、そのままストップしててね」
遭難事故で調べればすぐに出てくると思いますが、本当に面白くて勉強になって良いです。
古くからゆっくり達はたくさんの知識を私達に授けてくれますね。




