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ユウマオ、アルバイトをする 3

2人が大漁目指しながらバイトを続けて数時間……この馬鹿騒ぎもおわりの時間を迎えていた。


ある者は普通に帰路に着き、またある者は路上の端で寝始める。


中にはこの馬鹿騒ぎで散乱したゴミを拾って片付けようとしている心優しい集団もいるようだ。


「僕たちの仕事もこの辺りで終わりかな?」


「そうじゃな……うむ?」


「どうしたの?

まだ取りこぼしがいた?」


マオがふと路地裏の方に目を向けて疑問の声を出す。


ユウも其方の方を見るが何も感じる事は出来なかった。


「いや、あの辺りで何か小さな火を見たような気がしてのう……少し行ってみぬか?」


「路地裏なら箒で行くのも微妙かな。

降りて行ってみようか」


こうして2人は地面に降りて路地裏へと向かう。


角を曲がった先では、マオの言う通りに小さな火がゆらゆらと揺らめいていた。


2人は警戒しながら火の方へと向かう。


そこにはランタンを手にして、ユウ達と同じようにカボチャの被り物をしている男性が立っていた。


「おや、こんな所に何用でしょうか?

お嬢さん達2人でこんな路地裏は危ないですよ」


カボチャ男はユウ達に特に動揺した様子もなく声をかけてくる。


「う〜ん……普通の人かな?

マオ、どう思う?」


「普通の人間だとは思うのじゃが……少しおかしい気も……」


「ふむ……どうやらお嬢さん方はこの祭りで浮かれている方々とは違うようだ。

あなた方の見立て通り、私は普通の人間と殆ど変わりませんよ。

違いと言えば、あの世に出入り禁止を受けている事ぐらいでしょうか」


「お主……まさか、ウィル・オ・ウィスプか?」


カボチャ男の言葉にマオは驚く。


「おや、そちらの名前で呼ばれたのは随分と久しいですね。

多くの人は私の事をジャック・オ・ランタンと呼びますが……まぁ、意味は大して変わらないので構いませんがね」


「ジャック・オ・ランタンって、あのヒーホーってやつ?」


ユウは何となく聞き覚えのあるゲームの知識で尋ねる。


「まぁ、あのキャラクターはモチーフにしているだけじゃがな。

かつて、死んだ人間があの世とこの世を司る門番を騙して現世に舞い戻ったのは良いものの、再び死んだ時にあの世から出入り禁止を喰らい、永遠に現世を彷徨う存在になったと言われる者じゃな」


「ご説明痛み入ります。

そんな訳で少しでもあの世の心証を良くしようと、このような日に化け物達が暴れないか見張っていましてね。

今日はあなた方のお陰で大きな事件が起きなかったもので……一言お礼を言いたかったのですよ」


「それじゃ、最初から僕達の事を分かってたって事?

あんまり反省してないんじゃない?」


ユウの鋭い指摘にもカボチャ男は狼狽える事はなかった。


「中々に手厳しいですな。

このような格好をしている事ですし、反省を証明するダンスを披露しても良いのですが」


「その格好で踊られると反省を促すダンスにしか見えぬから結構じゃよ。

それで用件はもう済んだのじゃな?」


「ええ、本日はありがとうございました。

機会が有れば、またハロウィンの季節にでもお会いしましょう」


そうしてカボチャ男のランタンの火が消えた途端に、その場に誰もいなくなった。


「瞬間移動?……僕が見失うなんてね」


「恐らくじゃが、あの者はランタンの火を点けている間のみ現世に姿を見せる事が出来るのじゃろう。

あの火が無ければ誰も気付かぬ所で1人彷徨うしかないのであろうな」


「……1人の辛さが分かるからキツいね。

今度会う事があったらもう少し優しくしてあげようかな?」


「自業自得の話ではあるからのう。

ルーナ辺りに話を聞いてみてもいいかもしれぬのう」


こうして最後に不思議な出会いを果たした2人のアルバイトは終わったのであった。


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