配信の悩みと権利関係
先日、ユウとのコラボで重度のRPGマニアだということが判明したセシム。
これが知れ渡ると○○をして欲しいというリスナーの意見が多く寄せられる事になる。
大半は希望を伝えたり、このゲーム面白いですよなどの紹介なので笑って見ていられるのだが、中には何で○○をしないんだ!
などという上から目線の厄介な意見が送られてくる事もあった。
くじよじに採用されるものは、基本的に里中の中身を見抜く力量により、精神がタフな人間が選ばれる。
セシムも例に漏れずにこのような意見は全く気にしていない。
だが、そんな彼女がユウマオハウスに来て、2人に相談しながら云々唸っていた。
その内容というのが……
『オススメされたものはだいたいプレイしてる?』
「そうなんですよ」
ユウとマオが揃って確認した悩みにセシムは頷く。
彼女は大手の大作、名作と呼ばれるRPGを殆どやり尽くしていた。
そして、リスナーが見たいものは名作と呼ばれるRPGを初見でプレイした時の反応である。
そう…….需要と供給が全く噛み合っていないのであった。
もちろん、初見のフリをしてプレイするという考えも頭をよぎった。
だが、そんな嘘はすぐに見破られるであろうし、何よりリスナーを騙すような真似はしたくない。
そこで頼りになる先輩2人で、今のところ唯一自宅を知っている2人の元までやってきたのだ。
「確認なんだけど、大作とかじゃないゲームとかは……」
「基本ネタゲーとかになりそうな気がしますよね。
単発のコンテンツとしてはアリだと思うんですが、なるべくならシリーズでやりたいというか。
それと大手は基本的に配信のガイドラインが定めてあってやりやすいんですけど……」
「ああ……その辺りはしっかり調べておかないと大変な事になるのう」
マオはそう言って以前にあった事件を思い出す。
他社の昔の話であるが、実況配信の文化があまり根付いていなかった頃の配信状況は無法地帯であり、グレーゾーンであった。
それが長く続くと当然ながらメスが入れられる事になる。
今までの殆どのゲーム配信が権利を確保していないことが判明。
結果、所属タレントのアーカイブが一斉に非公開になるという事態に陥ってしまったのだ。
この事件から業界では必ず配信のガイドラインを確認、もしくは権利元に許可を取るという文化が生まれた。
また、企業側もここからここまでは配信してよいというようなガイドラインを作成する事も多くなる。
「そうなんですよ。
それで何とかならないかと相談に来た訳でして……」
そう話すセシムの表情は暗いものであった。




